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2007年3・4月

月間ブラジル・レポート

ブラジル

地域研究センター ラテンアメリカ研究グループ 近田 亮平
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2007年3・4月

経済

新GDP:3月28日、ブラジル政府は新たな計測方法によるGDPを発表した。この新たな計測方法により、従来の方法で2.9%と算出されていた2006年のGDPは3.7%、1996年以降の各年の数値はグラフ1の通りとなった。今回の計測方法の変更は、従来の方法によるGDPには近年の産業構造の変化などが反映されていないため、実体経済のより正確な規模の算出には、新たな計測方法が必要との考えに基づいて行われたものである。新たな計測方法では、従来の方法よりもいくつかの項目の計測ウェイトを増加させたことに加え、算入項目を経済活動で43→56、商品およびサービスで80→110に増加させた。新たに算入された主な項目には、ソフトウェア・コンサルタント、データ処理、娯楽関連AV、携帯電話、金融サービスなどがある。
グラフ1  新旧方式よる年間GDPの比較:1996年~
(出所)IBGE

貿易収支:3月の貿易収支は2月よりも営業日が4日多かったこともあり、輸出額がUS$128.89億(前月比27.2%増、前年同月比13.4%増)で3月としての過去最高額、輸入額がUS$95.32億(同32.0%増、23.3%増)で史上最高額を記録し、この大幅な輸入額の増加により、貿易黒字額は前年同月比マイナスのUS$ 33.57億(同15.5%増、▲7.6%)となった。年初からの累計額も、輸出額がUS$339.19億(前年同期比15.7%増)、輸入額がUS$252.21億(同25.3%増)と輸入額の増加が輸出額のそれを上回ったことから、貿易黒字額は前年同期比で▲5.1%のUS$ 87.83億となった。

また、4月の貿易収支は3月の営業日が2日多かったことから前月比でマイナスとなったものの、昨年4月の営業日が18日と少なかったことから、輸出額がUS$124.49億(前月比▲3.4%、前年同月比26.6%増)、輸入額がUS$82.46億(同▲13.5%、22.5%増)で、輸出入ともに4月としての過去最高額を記録した。さらに、貿易黒字額もUS$ 42.03億(同25.2%増、35.7%増)に達し、4月の過去最高額となった。この結果、年初からの累計額は、輸出額がUS$464.51億(前年同期比18.2%増)、輸入額がUS$334.65億(同24.7%増)で、貿易黒字額が前年同月比でプラスのUS$ 129.86億(同4.3%増)となった。

物価:発表された IPCA(広範囲消費者物価指数)は、2月が0.44%(前月比変わらず、前年同月比0.03%ポイント高)、3月は0.37%(同▲0.07%ポイント、同▲0.06%ポイント)となった。物価が落ち着いて推移している主な要因のひとつとして、為替市場においてドル安レアル高傾向が更に進み、家電製品をはじめとする輸入品の価格が低下していることが挙げられている。また、3月の物価安定に関しては、新学期が始まった2月の教育関連価格が3.48%上昇したのに対し、3月は0.02%の上昇にとどまったことが影響している。しかしその一方で、2月と3月を通して食料品価格が高めに推移したため(2月0.78%、3月0.98%)、全体的な物価低下にはいたらなかった。

金利:Copom(通貨政策委員会)が決定する政策金利のSelic金利(短期金利誘導目標)は、3月7日に13.00%→12.75%、4月18日に12.75%→12.50%へとそれぞれ0.25%ポイントずつ、15回連続で引き下げられ、史上最低値を更新した。特に4月のCopomでは、7名の委員のうち3名が0.50%ポイントの引き下げを主張したことから、次回のSelic金利の更なる引き下げに対する期待感が高まり、株式市場の上昇の一要因となった。
グラフ2 Selic金利の推移:2003年以降
(出所)ブラジル中央銀行

為替市場:3月と4月の為替相場は、2月末の中国株式市場の大幅下落による影響で、新興諸国からの資金引き上げの動きが強まったことから、3月5日に一時US$1=R$2.1388(売値)までレアルは下落した。しかしその後は、後述するサンパウロ株式市場と同様に、ブラジルへの資金流入が活発化したことから、一転してドル売りレアル買い傾向が強まり、4月13日には6年以上ぶりとなるUS$1=R$2.0223(買値)までレアル高が進行した。市場関係者の間にはUS$1=R$2を切るのは時間の問題との見方もあったが、ブラジル中銀による大量のドル買い介入もあり、4月はUS$1=R$2を若干上回る狭いレンジでの取引に終始したまま取引を終えた。
グラフ3 レアル対ドル為替レートの推移:2006年以降
(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:3月と4月のサンパウロ株式市場Bovespa指数は、2月末の中国株式市場に端を発した世界同時株安の影響を受け、3月5日には一時41,179ポイントまで下落した。しかしながら、その後はSelic金利が連続して引き下げられたこと、これと関連してブラジルのカントリー・リスクが史上最低値となる145まで低下したこと(グラフ4)、また、米国株式市場が史上最高値を更新して続伸したことなどから、4月には連日、史上最高値を更新しながら上昇。4月25日には49,676ポイントまで値を上げ、49,000ポイントを若干下回る水準で4月の取引を終えた。

政治

第2期Lula政権組閣:今年1月にスタートしたLula政権2期目の組閣人事は、昨年末から幾度となく延期されてきたが、いくつかの局長などのポストを除き、3月後半にようやく決定する運びとなった。選挙に立候補するためには閣僚ポストを辞任しなければならないことから、Lula政権の閣僚再編は昨年の選挙前にも行われたが、円滑な政権運営を目的とした連立与党間の意見や利害関係の調整のための再編は、PT(労働者党)による一連の汚職事件発覚後の2005年7月以来となった(詳細は下記の表参照)。その2005年7月の閣僚再編時と比べると、大臣ポストに関して、Lula大統領はPTのポストを9から10へと1つ増やしたものの、議会内の最大連立与党であるPMDB(ブラジル民主運動党)のポストを3から5へと2つ増やす決断を行った。その一方で、更なる経済成長が政権2期目の至上命題ともいえるLula大統領は、Rousseff文民官やAmorim外務大臣などの主要閣僚や、Mantega大蔵大臣やMeirelles中央銀行総裁などの経済閣僚を留任させ、安定した政権基盤を基にPAC(成長加速プログラム)を推進していく姿勢を明確にしたといえよう。
表 第2期ルーラ政権の閣僚及び主要ポスト:2007年4月末時点
ポスト 名前 政党等 前任者(政党・任期終了時期等)
法務大臣 Tarso Genro PT Marcio tdomaz Bastos(2007.3)
観光大臣 Marta Suplicy PT Walfrido M. Guia(PTB:2006.3)
社会保障大臣 Luiz Marinho PT Nelson Machado(PT:2007.3)
Romero Juca(PMDB:2005.7)
Amir Lando (PMDB:2005.3)
Ricardo Berzoini (PT:2003.12)
文民官 Dilma Rousseff PT Jose Dirceu(PT:2005.6)
教育大臣 Fernando Haddad PT Tarso Genro(PT:2005.7)
Cristovam Buarque(PT:2003.12)
大蔵大臣 Guido Mantega PT Antonio Palocci(PT:2006.3)
環境大臣 Marina Silva PT 政権誕生時
社会開発飢餓撲滅大臣 Patrus Ananias PT 社会福祉大臣と食料保障飢餓撲滅特別大臣を統合(2004.1)
予算企画大臣 Paulo Bernardo PT Nelson Machado(PT:2005.3)
Guido Mantega (PT:2004.11)
国防大臣 Waldir Pires PT Jose Alencar(PL:2006.3)
Jose Viegas(2004.10)
副大統領(政権誕生時)
労働雇用大臣 Carlos Lupi PDT Luiz Marinho(PT:2007.3)
Ricardo Berzoini(PT:2005.7)
Jacques Wagner (PT:2003.12)
農牧畜大臣 Reinhold Stephanes PMDB Luiz Carlos Guedes(2007.3)
Roberto Rodrigues(2006.6)
国家統合大臣 Geddel Vieira Lima PMDB Pedro Brito Nascimento(2007.3)
Ciro Gomes(PPS:2006.3)
保健大臣 Jose G. Temporao PMDB Agenor Alvares(2007.3)
Saraiva Felipe(PMDB:2006.3)
Humberto Costa(PT:2005.7)
通信大臣 Helio Costa PMDB Eunicio Oliveira(PMDB:2005.7)
Miro Teixeira (PDT:2003.12)
鉱山エネルギー大臣 Silas Rondeau PMDB Dilma Rousseff(PT:2005.7)
交通大臣 Alfredo Nascimento PR Paulo Sergio Passos(2007.3)
Alfredo Nascimento(PL:2006.3)
Anderson Adauto (PL:2004.3)
科学技術大臣 Sergio Rezende PSB Eduardo Campos(PSB:2005.7)
Roberto Amaral (PSB:2003.12)
都市大臣 Marcio Fortes PP Olivio Dutra(PT:2005.7)
文化大臣 Gilberto Gil PV 政権誕生時
商工開発大臣 Miguel Jorge Luiz Fernando Furlan(2007.3)
スポーツ大臣 Orlando S. Junior Agnelo Queiroz(PC do B:2006.3)
外務大臣 Celso Amorim 政権誕生時
農業開発大臣 Guilherme Cassel Miguel Rossetto(PT:2006.3)
大統領事務局長 Luiz Dulci PT 政権誕生時
人種平等局長 Matilde Ribeiro PT 政権誕生時
女性政策局長 Nilcea Freire PT Emilia Fernandes(2003.12)
制度関係局長 Walfrido M. Guia PTB Tarso Genro(PT:2007.3)
Jaques Wagner(PT:2006.3)
長期行動計画局長 Mangabeira Unger PRB 新設局
社会通信局長 Franklin Martins 2005年に廃止された通信局を再設
水産養殖漁業局長 Altemir Gregolin Jose Fritsch(PT:2006.3)
連邦弁護庁 Jose Antonio Toffoli Alvaro Ribeiro Costa(2007.3)
連邦監督庁 Jorge Hage Waldir Pires(PT:2006.3)
社会経済開発銀行 Luciano Coutinho Demian Fiocca(2007.4)
Guido Mantega(PT:2006.3)
Carlos Lessa(2004.11)
中銀総裁 Henrique Meirelles 政権誕生時
ブラジル石油公社 Jose S. Gabrielli Jose Eduardo Dutra(PT:2005.7)
ブラジル銀行 Rossano Maranhao Cassio Casseb(2004.11)
(出所)Estado de Sao Pauloなどを基に筆者作成。

社会

MST:4月、MST(Movimento dos Sem-Terra:土地なし農民運動)による土地占拠活動が国内各地で活発化した。MSTは各地の農場占拠だけでなく、国立開拓・農地改革院(Incra)の建物への侵入や占拠、連邦裁判所をはじめとする公的機関前での野営抗議行動、主要道路の封鎖などを行い、政府に対して更なる農地改革の推進を訴えた。一方、国内各地の都市部では"Sem-Teto(屋根なし)"と総称される複数の住宅関連運動団体が、使用されず廃墟と化している建物の占拠や公的機関への抗議デモなどの活動を大々的に展開した。今回のMSTおよびSem-Tetoによる一連の抗議活動の一部は、政府や警察、農場主との衝突に発展し、多数の負傷者が出たとされる。

このようなMSTやSem-Tetoによる占拠および抗議運動の活発化は"赤い4月(abril vermelho)"と呼ばれ、1996年4月17日にパラー州のEldorado de CarajasでMSTメンバーが虐殺された事件を風化させないという目的もあり、毎年この時期に見られる動きである。しかし、選挙のあった去年と比べ、今年の "赤い4月" の活動はより活発化しており、農場占拠件数は約3倍の81件に上り、全国27州のうち21州において何らかの動員活動が行われた。

リオの治安:4月17日、リオの2カ所のファヴェーラで犯罪組織と警察の間で激しい銃撃戦があり、犯罪組織の19人が射殺される事件が発生した。この銃撃戦により、市の中心街と郊外を結ぶトンネルが一時封鎖されたのをはじめ、銃撃戦の舞台の一つとなった墓地での埋葬式などが中断された。リオの治安問題は依然として深刻であり、今年の2月に就任したCabral新リオ州知事は、以前から連邦政府に対して請願していた軍隊の派遣を正式に要請した。

今年の7月、リオでは北中南米諸国が一同に会する米州スポーツ大会が開催され、選手や関係者だけでなく多くの観光客がリオを訪れることになっている。しかし、同大会の成功裡な実施にとって、リオの治安問題はあまりにも深刻な懸念材料として改善の糸口が見えないまま存続しているといえよう。