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Oi! do ブラジル—リオデジャネイロから徒然なるままに
2005年12月 "os Brasis"を探して

ブラジル現地報告

ブラジル

海外派遣員 近田 亮平
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2005年12月

今月のひとり言—RioとSão Paulo

リオとサンパウロはブラジルを代表する2大都市として、いろいろな意味で比較されることが多い。今までの私のこの現地報告でも、両都市及びそこに住む人々の違いやそれぞれの特徴について、時折、私なりに感じたことを書いてきた。今回は、今月私が引越しをした際と、ブラジルに現地調査で来た職場の同僚をアテンドしてリオとサンパウロを回った際に、2つの都市の典型的かつ顕著な違いを非常に痛感したので、ブラジル通の間では言い古された話ではあるが、今月のひとり言として徒然なるままに書いてみることにする。

まず、一般的にブラジルで言われているリオとサンパウロの特徴を簡単にまとめると、次のようないくつかの言葉に要約できるといえよう。リオは帝政及び共和制ブラジルの旧首都、ブラジルを代表する国際的観光地、犯罪組織が巣窟する街、サンバをはじめとする"ブラジル文化"の中心(ブラジルの他の地域では自らの地域固有の文化を—例えば"バイーア文化"として—誇示する傾向にあるが、リオだけが自らの地域文化を"ブラジル文化"と自負するケースが多い)、等々。一方のサンパウロは近代工業化の中心、経済機能の集中、南米最大の人口(サンパウロの人口は1960年代にリオを上回り、2005年現在、サンパウロ首都圏としては19,130万人)、多くの外国移民を受け入れた街であり人種の坩堝、等々。

更に、先月にも触れたが、リオ出身者cariocaの特徴としては、陽気で人懐っこくてお洒落好きだが少し(?)狡賢くていい加減、上辺だけのところがあるといった感じ。一方、サンパウロ出身者paulistaの特徴としては、真面目できちんとしていて仕事熱心だが多少面白みに欠け、あまりフレンドリーではないといった感じ。

もちろん、これら両都市とその出身者の特徴はあくまで"一般論"であり、日本で言えば「東京の人は"ああ"で、大阪の人は"こう"」というイメージに近い。しかし、今回の引越しと現地調査を通して、あまりにもこの典型的な"一般像"を身に染みて感じることとなった。

まずリオに関しては、引越しの際に来ると言っていた電話会社が待てど暮らせど一向に来ない。しかもそれが一度だけではなく、何度も繰り返される始末。最終的には、他の顧客の用事で偶然たまたま私のアパートに来ていた電話会社の担当者を捕まえて、私の作業もしてもらうことになった。調査においては、訪問先の人たちは皆親切で、我々の訪問を歓迎してくれたのはうれしいのであるが、必要以上の話も結構長い。それだけならいいのであるが、実際の交渉で融通が利かず取引を断られたり、担当者がクレジットカードの扱いに不慣れなため資料を購入できなかったり、荷物の重さも量らずに料金を決めようとする宅急便と口論する羽目になったりと、とにかく一日のうちで必ず何かトラブルが発生し、その度にかなりの時間と労力を費やさなければならなかった。

一方のサンパウロはというと、引越しは関係なく調査のみの体験であるが、物事が決められたスキームの中でスムーズに進むといった感じなのである。訪問先の人たちは、リオに比べると概してそれほどフレンドリーではない。しかし、こちらが必要とする情報を的確に提供及び説明してくれ、交渉事も無駄な時間があまりなくすんなりと進んだ。リオで取引を断られた同じ組織に取引を承諾してもらったり、ある訪問先では次の訪問先ですべき用事まで片付いたりと、事前に予定していたことをその日のうちに無事に終わらせることができた。もちろん、全てが何の問題もなく進んだわけではない。例えば、郵便局では、購入した文献を全て梱包した後に重量オーバーを指摘され、追加料金を払おうとするも所持金が足りず。銀行ATMで現金を下ろそうとするも、一日の引出し可能な金額制限のため(ブラジルでは犯罪防止のため、ATMでの1日の引出し上限額がR$1,000となっている)、同僚と手分けして現金集めに奔走するなどのハプニングがあった。しかし、それでもリオの場合とは異なり、その日のうちにやりたかったことをやむを得ず次の日に持ち越す、ということはなかった。

今回の引越しや現地調査で起きたことは、たまたま偶然が重なったという面もあるだろうし、私の先入観も影響しているであろう。したがって、ここで述べたリオとサンパウロの特徴と違いは、誰もが皆同意するものではないかもしれない。また、私はここでリオとの比較の上で、サンパウロを賛美、崇拝しようとしているわけでもない。実際に、コンクリートだらけのサンパウロに比べ、praiaがあって(11月の「今月のひとり言」参照)、自然が豊かで、人懐っこいcariocaの住む街リオは素晴らしいところだと思う。

ただ、リオが良きも悪きもいわゆる"我々(外国人)が思い描くブラジル"を体現している都市であるのに対して、サンパウロは"我々(外国人)が意外に思うブラジル"を体現している都市だといえるかもしれない。そしてまた、リオ在住の私が時折訪れるサンパウロの率直な感想を述べれば、「これならサンパウロが発展するわけだ」ということと、「サンパウロの発展は目覚しいものがあるが、そこは広大なブラジルの特殊な極一断片なのだろう」という具合になるであろうか。

今月で2005年も終わりである。残されたブラジル滞在の時間の中で、多様なブラジル"os Brasis"をできる限り発見していきたいと思う(ブラジル国内の多様性を表すため、ポルトガル語で本来は単数形"o Brasil"として表記する"ブラジル"を複数形の"os Brasis"と言い表すことがある)。

今月のブラジル
経済

貿易収支:12月の貿易収支は、輸出額が2ヶ月連続でUS$100億を上回り、12月としては過去最高となるUS$108.97億(前月比1.0%、前年同月比18.5%増)を記録した。輸入額は前月比で2.2%減少したものの、前年同月比では15.2%の増加で、12月としては過去最高のUS$65.51億となった。この結果、貿易収支の黒字額はUS$43.46億(前月比6.2%、前年同月比23.9%増)となり、US$50.05億を記録した今年の7月に次ぐ史上2番目の数値となった。

また、2005年を通した貿易収支は、輸出額がUS$1,183.09億(前年比22.6%増)、輸入額がUS$735.45(同17.1%増)、同貿易黒字額はUS$447.64(同33.0%増)となり、いずれも過去最高であった昨年を上回り、3年連続で史上最高額を記録した(グラフ1)。

好調だった輸出を分野別にみると、一次産品が全体の29.3%で前年比22.2%増、半製品が同13.5%で19.3%増、工業製品が同55.1%で23.5%増となり、工業製品の割合がより増加した。また、品目別では、輸送機器(全体の16.2%、前年比19.2%増)、金属製品(同10.7%、22.6%増)、石油及び派生製品(同7.7%、58.4%増)、鉄鋼石(同6.8%、53.2%増)、食用肉(同6.8%、29.8%増)等が主なものとなっている。輸出先としては、1位がアメリカ合衆国(U$227億)、2位がアルゼンチン(U$99億)、3位が中国(U$68億)、4位がオランダ(U$53億)、5位がドイツ(U$50億)となっているが、地域別では東ヨーロッパが前年比55.8%増、アフリカが同41.4%増を記録するなど、ルーラ政権の新規市場開拓という外交政策の結果が現れてきたといえる。

一方、輸入の項目別では、資本財が全体の20.9%で前年比27.4%増、原材料・中間財が同51.3%で13.1%増、消費財が同11.5%で24.2%増、石油・燃料が同16.2%で16.2%増となり、資本財の割合がより増加した。輸入先としては、1位がアメリカ合衆国(U$129億)、2位がアルゼンチン(U$62億)、3位がドイツ(U$61億)、4位が中国(U$54億)、5位が日本(U$34億)となっている。地域別には、東ヨーロッパの前年比▲10.6%を除けば全体的に増加したが、アジアの増加率(前年比38.5%)が突出している。その中でも、中国が前年比45.4%増と際立っており、ブラジル市場における中国の影響力の増大を示すかたちとなった。
グラフ1 2005年の貿易収支の推移
(出所)MDIC/Secexを元に筆者作成。

物価:発表された11月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は、10月の数値0.75%から0.2%ポイント下がり0.55%となった。10月に2.21%の上昇を記録し同月のIPCAの主要上昇要因であった燃料及び交通運賃が、11月は0.66%の上昇に留まったことが今回の数値下落の主な要因とされる。10月との比較では、ガソリンが4.17%→0.83%、燃料アルコールが10.48%→2.52%、航空運賃が11.06%→5.04%、市内バス運賃が1.10%→0.64%の上昇に留まった。しかしながら、同様に10月との比較で見ると電気が0.51%→1.30%、主要食料品価格が0.27%→0.88%の上昇を記録したため、全体としての大幅な数値下落とはならなかった。

結果、年初からの累計値は昨年同月時点の6.68%を下回る5.31%となったものの、今年のインフレ目標である5.1%を超えることとなった。しかし、例年、12月には公的価格の大幅な調整は行われないことなどから、今年のIPCAは昨年の7.60%を下回る6%以内に収まるであろうとの予測が一般的であり、インフレ目標を達成できなかったことは市場に対して大きなマイナスのインパクトとはならなかった。

金利:Selic金利(短期金利誘導目標)は4ヶ月連続で引き下げられ、18.50%→18.00%となった。今回は0.75%ポイントの引き下げを支持した中央銀行Copom(Comite de Politica Monetaria:通貨政策委員会)委員も2名いたが、金利の漸次引き下げを主張する中銀総裁の意向通り、引き下げ幅は0.50%ポイントに留まった。なお、現在まで毎月開催されていたCopomは、ブラジル経済が軌道に乗り安定してきたことから、来年2006年からは年8回の開催に変更される予定となっている。

為替市場:先月、再びドル安レアル高に振れた為替相場であるが、今月は中央銀行の積極的な市場への介入から前半はドル高が進み、19日にはUS$1=R$2.3735(売値)までドルが買われる展開となった。その後、カントリーリスクが21日に過去最低となる302まで低下したことも影響し、レアルが値を戻す展開となり、US$1=R$2.3403(中値)で今年の取引を終えた。しかし、2005年は1年を通してドル安レアル高傾向が続き、ドルは年内に対レアルで最大時に約21.5%、昨年と今年の終値の比較では約11.8%の下落を記録することとなった(グラフ2)。
グラフ2 2005年のレアルの対ドル為替レートの推移
(出所)ブラジル中央銀行

株式市場:今月もサンパウロ株式市場のBovespa指数は引き続き堅調に推移し、14日には史上最高値となる33,629 ポイントを記録した。その後も33,000ポイント台を維持した展開となり、33,455 ポイントで今年の取引を終えた。最近の株式市場の好調さは、Selic金利が継続的に引き下げられていることとともに、2006年の更なる金利引き下げとそれに伴ったブラジル経済の安定的成長が期待されていることが主な要因といえよう。

IMF借入金返済:ブラジル政府は、当初の予定よりも2年前倒しでIMFからの借入金US$ 155億の返済を行った。大蔵省は今回のIMF借入金前倒し返済により、支払予定利息分US9億を節約できると説明している。ブラジル政府は今年3月にIMFとの契約更新を行わない決定を下し、借入金の一部に当たるU$51億を既に返済していた。そして、今回の返済により、念願であったIMFからの借入金全額を完済したことになった。

これにより、12月末の外貨準備高は11月末に比べ大きく減少することとなった。しかし、ルーラ政権発足以来、IMFからの借入額を含んでいた過去の年末外貨準備高に比べても、返済終了後の2005年末はU$538億となり、より多くの外貨準備高を確保できることとなった(グラフ3)。
グラフ3 2003年以降(ルーラ政権)の外貨準備高の推移
(出所)ブラジル中央銀行

政治

議員権剥奪審議:PT(労働者党)による議員買収事件に関与していたとされる、Romeu Queiroz下院議員(PTB:ブラジル労働党)の議員権剥奪の可否を決める投票が下院本会議で行われた。しかし、結果は議員権剥奪に必要な下院議員総数の過半数には至らず、既に議員権を剥奪されたJefferson元PTB党首とDirceu元文民官(PT)のケースとは異なり、同議員は今後も下院議員として政治活動を行えることとなった。Queiroz下院議員は、今回のPT汚職疑惑の不正資金配布人とされるValérioの広告代理店を通して、PTBからPTへ不正な資金譲渡を行っていたとされる。しかし、今回の投票では、Queiroz議員個人としては何の利益も得ていなかったことなどの主張が認められ、議員権剥奪には至らなかったとされる。

しかし、今回のQueiroz下院議員の議員権剥奪免除に関しては、政党間で政治的な駆け引きがあったともいわれている。したがって、個々のケースは個別に審議されるといわれているものの、今後予定されている残りの汚職疑惑議員11名の議員権剥奪可否に対して、今回の結果が微妙な影響を与える可能性があるといえよう。

Alencar汚職疑惑:Alencar副大統領兼防衛大臣(PMR:地方革新党。今年の9月にPL(自由党)から移籍)に関しては、以前より同氏及びその親族が、今回のPTの議員買収及び不正選挙資金疑惑事件に関与していた可能性が取りざたされていた。しかし、この疑惑に加え、Alencar副大統領の所有する紡績会社(Coteminas)が、政府系金融機関から総額R$4億2100万(約U$1億2700万)もの融資を受ける際に、通常は30%以上となる市場金利に比べ、8.75%~14%という大幅に有利な金利で融資を受けていた疑惑が浮上した。しかも、Alencar副大統領が、常に政府及び中央銀行の高金利政策を批判することで知られているため、表の発言と裏の行動が大きくかけ離れているとしてマスコミを中心に非難を受けることとなった。

しかし、Alencar副大統領に関する疑惑はこれだけに収まらず、PTとの間で新たな汚職疑惑が発覚した。それは、前述のAlencar副大統領の会社がPTから2004年の全国市長選挙キャンペーン用のTシャツ作成を受注した際、通常の取引値が1枚R$2のTシャツに上乗せした価格R$3.28で、270万枚ものTシャツ作成契約を結んでいたというものである。しかも、現在のところ、実施されたPTの支払いが同党の正式な予算からではなく、"Caixa Dois"と呼ばれる裏金口座からでもないため、資金の出所について"Caixa Tres"(第3の口座)とも呼ばれている。

PTを取り巻く一連の汚職疑惑によるルーラ政権の政治危機は、事件のスキームの全体像が概ね明らかとなり、基本的には収束方向に向かいつつあるといえる。しかし、本件のAlencar副大統領の汚職疑惑など、単発的な政治スキャンダルではあるかもしれないが、大統領選挙を2006年に控えたルーラ政権にとって、マイナス要因となることは否定できないであろう。

ルーラ政権支持率:今月、ルーラ政権及び大統領に対する支持率の世論調査が行われ、結果は、今年発覚したPTを取り巻く汚職疑惑による政治危機の影響が如実に出たものとなった(グラフ4及び5)。汚職発覚後の6月に支持率の低下と不支持率の上昇が起こり、その後、大統領の事件への関与疑惑だけでなく、事件自体を認識していなかったことを強調する声明などが主なマイナス要因となり、政治危機がある程度収まったといえる12月に入っても支持率は回復しないままとなっている。また、最近の2006年の大統領選挙に関する世論調査では、ルーラ大統領は野党PSDB(ブラジル民主社会党)の大統領候補者といわれているSerraサンパウロ市長やAlckminサンパウロ州知事に対してリードを奪われるケースもあり、2006年はブラジル政治のこれからを占う上で重要な1年になるといえよう。

グラフ4 ルーラ政権に対する評価
(出所)IBOPE

グラフ5 ルーラ大統領に対する評価
(出所)IBOPE

社会

Réveillon:ブラジルでは新年前夜をRéveillonと呼ぶ。この言葉自体はポルトガル語ではなくフランス語であるが、フランス移民も多く受け入れ、現在でも同国の文化的、社会的な影響の強いブラジルでは、新年前夜または新年を迎えることをRéveillonと呼び、様々なfesta(お祭り)やイベントがブラジル各地で行われる。それらの中でも最も有名なものが、ブラジルのシンボルともいえる国際的観光都市リオのRéveillonである。リオで最も有名なコパカバーナ・ビーチは約200万人もの人出で賑わったとされ、同ビーチをはじめとするリオの各ビーチなどでは、2006年へと年が変わる瞬間に合わせ、約20分にわたり次々と花火が打ち上げられ、各地でコンサートなどの様々なイベントが夜通し催された。リオ市観光局によると、今年のRéveillonには昨年よりも7%多い58万人の観光客が同市を訪れ、国内及び外国人観光客の同市訪問による経済効果は、実にU$4億2,000万にも上るとされる。一方、今回のRéveillonのイベント等の費用は全体でR$490万(約U$210万)、コパカバーナのみでR$320万(約U$130万)かかり、その約80%を民間企業のSiemensが出資したとされる。



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