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Oi! do ブラジル—リオデジャネイロから徒然なるままに
2005年6月 う~ん、自分のやりたいことは?

ブラジル現地報告

ブラジル

海外派遣員 近田 亮平
PDFpdf(118KB)
2005年6月
大学院の第2学期(3カ月制)がスタート。第1学期は約30名もの生徒が、まるで学部の授業のように同じコースを履修していたのだが、今学期からは3つの専門コース(人口統計、社会統計、人口・社会・領土)に分かれ、少人数によるゼミ形式の授業となる。個人的には社会統計コースを履修したかったが、私のカウンターパート&指導教官との関係で人口統計コースを選択。今学期は人口統計学の科目2つ、全コース共通必須の社会調査方法論1つを履修することに。

人口統計学の授業では、ブラジルの人口構成の変化をグラフで分析したり、人口統計学の理論や世界的な変化について議論したり。Brasilianista(ブラジル研究者)を目指す私としては、まぁ結構面白い。が、私の個人的な研究とはほとんど関連性がなかったりする。そして、もう一つの社会調査方法論の授業はというと・・・。今までの授業では、Senhoraな先生が雲をつかむような内容の文献をもとに、ただひたすら「科学とは、常識とは、文化とは!」と延々語り続けていて(ブラジルの人はホント話すのが好き…)、私としては「う~ん・・・」とうなってしまう感じ。

前回に引き続き(少し?)愚痴っぽくなってしまうが、ブラジルに関するデータ収集&分析のスキルを学びに来た私としては、モチベーションを持ち続けるのがかなり辛い授業内容である。しかも、私の研究のフィールドはサンパウロなのに、今いるのはリオ。サンパウロまでは飛行機を使えば遠くはないが、リオでの勉強や仕事をメインとする生活の中では、時間を作って「サクっと調査」というわけにはなかなかいかない。この先、少し対処方法を考えねば、と思ったりしている今日この頃。

あと、私の受入機関(IPEA)のカウンターパートの人が、突然、IPEAを辞めてしまった・・・。IPEAの所長さんもカウンターパートになってくれているので、私の滞在自体には特に問題はない。ただ、今後の研究に関しては、多少なりとも影響ありか?といった感じ。元カウンターパートの人は私が通う大学院(ENCE/IBGE)で指導教官になってくれているので、彼とのコンタクトがなくなるわけではないが、大学院の講義内容に疑問を感じていて、IPEAでは他に頼れる研究者もいなかったりする現状からすると(知り合いである所長さんがいるのはリオではなくてブラジリア・・・)、正直、ちょっとビックリ、というか「え~~っ!」という感じがしないでもないような…。

今月のブラジル
経済

6月の貿易収支はU$40.31億の黒字となり過去最高額を記録した。貿易黒字がU$40億ドルを超えたのは史上初めてで、前年同月比16.8%、前月比6.1%の伸びとなった。就業日が22日と多かったこともあり、輸出額は史上初めてU$100億ドルを超え、貿易黒字額同様、過去最高のU$102.7億を記録した。前年同月比9.4%、前月比4.0%の伸びとなった。また、輸入はU$61.76億ドルとなり、史上最高額を記録した先月の数値には及ばなかったものの、史上2番目の輸入額となった(グラフ参照)。

為替相場は6月の前半に一旦ドル高に振れたものの、その後はドル安レアル高の傾向に再び戻り、6月30日にはドルの買い値が2002年の4月23日以来の1ドル2.34レアル代に突入した。また、発表された5月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.48%となり、前月の0.87%から大幅に低い数値となった。今年に入り継続して上昇していたIPCAは、中銀の高金利政策が功を奏し、ひとまず収束するかたちとなった。先月の最低賃金改定の影響が今後出てくると思われるが、長期的なレアル高による輸入価格抑制効果などもあり、物価はしばらく安定的に推移するものと思われる。なお、Selic金利(短期金利誘導目標)は19.75%のまま据え置かれた。 このようにドル安レアル高や金利高の傾向が続いているにも関わらず、貿易収支は着実に伸びていることは、ブラジルの実体経済の改善を示しているといえよう。
グラフ ブラジルの貿易収支の推移(2004年1月~2005年6月)
(出所)(出所)MDIC/Secexを元に筆者作成。

政治

6月はまさに政治汚職疑惑一色の月となった。先月発覚した郵便局汚職疑惑が発端となり、次々と新たな疑惑が発覚し、ついに政権党であるPT(労働者党)中枢にまで拡大した。汚職疑惑解明のためのCPI(議会調査委員会)設置可否をめぐる攻防は、汚職疑惑の拡大がPT自身にも及んだことから、PTの必死の抵抗もむなしく設置が決定された。そして、6月下旬から、連日のように激しい汚職疑惑解明の攻防が繰り広げられることとなった。今回の一連の汚職疑惑は、連立与党のPTB(ブラジル労働党)に端を発したものの、PTが中心となっていた汚職疑惑が明るみに出るにつれ、ブラジルの政党政治のあり方自体が問われる事態にまで至ったといえる。一連の汚職疑惑の実態は現在CPIにおいて調査中で明らかになっていないが、おおよその概要は次のようにまとめられるであろう。

まず、Marinho郵便局職員が“Jefferson PTB党首からの要請で”と言って、賄賂を受け取るところがビデオテープに撮影され、雑誌『Veja』が暴露。さらに、PTBが要職を占める政府の保険会社IRB(Instituto de Resseguros do Brasil:ブラジル最保険院)のDuarte元理事長が、毎月のPTBへの更なる闇献金(R$40万)を拒否したことから辞職に追い込まれた。これらの汚職疑惑によりJefferson がPTB党首を辞職するものの、“私と同様、Dirceu文民官はじめとするPT要職も汚職疑惑を追及されることになるだろう”との爆弾発言を行う。このJeffersonの爆弾発言がきっかけで、PTの組織的な議員買収疑惑が発覚。政府との関係緊密化により急成長を遂げた広告代理店のValerio氏を介して、PTが政治的支持の獲得を目的に複数の議員個人に対し毎月金銭賄賂(mensalao:R$30万)を贈っていた疑惑が表面化。Dirceu文民官はこの汚職の全容を把握し、中心となって指揮していたとの疑いが持たれ、文民官を辞職。Dirceuの辞職は、汚職疑惑がルーラ大統領本人にまで及ぶことを避けるためだったとの見方もある。また、これら一連の汚職疑惑のほかにも、昨年の選挙の際のGenoino PT党首によるPTBへの贈賄疑惑、マットグロッソ州の森林違法伐採黙認疑惑、Marta元SP市長時の議員買収疑惑など、PTを取り巻く疑惑が立て続けに明るみに出た。

つまり、今回の汚職疑惑の核心は、連立を余儀なくされているルーラPT政権が、連立維持や議会での法案成立のための支持獲得を目的に、議員を買収していた疑いがあるというものである。政党政治において、連立政権の他の政党に大臣などの要職を分配し政治的支持を取り付けるという手法はよく行われ、正当な政権運営手法であるといえる。しかし、今回の場合は同様の目的を達成するために、議員個人を買収するという手法がとられた可能性が問題とされている。

この政治危機に直面し、ルーラ大統領はDirceu文民官の辞職を受け入れ、鉱業エネルギー大臣だったDilma Rousseffを文民官のポストに任命するとともに、更なる内閣改造を行うとしている。その際に、昨年末に連立政権を離れたPMDB(ブラジル民主運動党)に対し連立与党への参加を呼びかけ、PMDBも内閣改造の際に重要なポストを得ることを条件にこれを受諾している。

社会

近年、ビール業界でそのシェアを急激に伸ばしてきたシンカリオル(Shincariol)社が、4年間にわたりR$10億もの組織的な不正利益隠匿や資産ごまかし等を行っていた疑いで、経営者5名をはじめ70名もの逮捕者を出した。現在のブラジル国内市場において、トップのAmBev社(68.2%)に次いで、シンカリオル社は第2位のシェア(12.5%)を占めている(『Veja』6月22日。原出所Sindicerv。なお、ブラジルのビール・メーカーの動向については『ラテンアメリカ・レポート』Vol.22 No.1の浜口伸明氏の論稿に詳しい)。この15年あまりでシェアを15倍以上に伸ばしたシンカリオル社に関しては、様々な不正疑惑が以前から取りざたされており、これらとの明確な関連性はないとされるが、2003年には当時の社長が自宅前で射殺される事件も起きている。ブラジルのビール業界は世界で5番目のビール生産量を誇り、世界でも有数の消費市場を支えている。ネオリベラリズムの影響でブラジルでも企業運営の透明性が重視されるようになったが、ビール業界のような巨大な産業には依然として様々な不正疑惑が渦巻いているようである。

今月の独り言—政治と経済は別?

現在、ルーラPT政権は誕生後最大ともいえる政治危機に直面しているといえる。しかしその一方で、現在、ブラジルは引き続き安定した経済成長を遂げている。今月のブラジルのカントリー・リスクも一時446まで上昇したが、その後は420をはさんで安定的に推移した。この経済安定の要因として『Veja』(7月6日)は、財政責任法・自己破産法・PPP(官民共同事業)法の成立、海外債務・公的債務の対GDP比の減少、貿易黒字・輸出の伸び、経済の開放度の増加を挙げている。

しかし、今までのルーラPT政権は一部の中枢的人物に権力を集中することによって、良好な経済成長や政治的安定を実現してきており、特に、今回の汚職疑惑で文民官辞任に追い込まれたDirceuの影響力は絶大だったといえる。したがって、今回の汚職疑惑により政権党であるPT自体が崩壊?分裂?、果てはルーラ大統領自身が関与してたなんてことになれば、来年の大統領選挙を前に、ルーラ政権だけでなくPT自体の存続が危ぶまれることになる。

ルーラ大統領はゴールデンタイムなどにテレビに頻繁に登場し、今回の続発している汚職疑惑の徹底的究明を直接国民に訴えている。このルーラ大統領のテレビを通じた約束はPTとしてのものでもあることが強調されているが、国民のPTおよびルーラ政権への不信感は増幅したことは否めない。6月5日に行われた政権支持率世論調査(IBOPE)でも、支持率低下の結果が出ている(6月下旬にやったら、もっと低下してたかも?)。

今回のPTを取り巻く汚職疑惑。今のところ経済の方には影響が出ていないものの、全てが明らかになったとき、この経済成長の実現を引き続き担うべく人物が誰もいなくなってしまった、みたいなことにならなければいいのだが…。

*蛇足だが、こうしてブラジルの動向を追っかけて自分なりに捉えるのはやっぱり面白い。大学院の授業とは違って・・・(汗)



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