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Oi! do ブラジル—リオデジャネイロから徒然なるままに
2005年3月 久々のブラジル長期滞在

ブラジル現地報告

ブラジル

地域研究センター 近田 亮平
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2005年3月
2005年3月より2年間、ブラジルのリオデジャネイロに研究のため滞在することになりました。ブラジルに長期滞在するのは、実は約10年ぶりとなります(私の勝手に決めた"予定"では、もっと早くブラジルに赴任するはずだったのですが・・・。多少(?)紆余曲折がありまして)。ただし、ある意味ブラジルを"体験する"だけで済んだ学生の時や、短期での現地調査の時と異なり、今回のようにブラジルの住民"morador"として生活するのは初めてです。

こちらでは応用経済研究所(IPEA)に客員研究員として籍を置き、ブラジル地理統計院(IBGE)の付属統計学大学院(ENCE)の修士課程で統計学を勉強しつつ、休暇などを利用してサンパウロでフィールド調査を行う予定でおります(あくまで"予定"です。世の中、特にブラジルは何が起こるかわかりませんので・・・)。

これから私が帰国するまでの間、このアジ研のホームページ上において、ブラジルの政治、経済、社会などの動向をお伝えするとともに(慣れるまでは極簡単なものになりますがご了承ください)、ミクロな視点からのブラジルを知っていただくために、こちらでの生活について徒然なるままに綴って行きたいと思います。

3月

今月のブラジル
(赴任直後ということで超短めですが、悪しからず)
マクロ経済に関しては、IMFからの融資延長中止の発表に象徴されるように、昨年からの好況を維持している。政治に関しては内閣改造が行われたものの、連立与党間の利害調整に成功したとはいえず、野党からの政治的批判も含め、ルーラ政権は今後も国内政治の舵取りに課題を残したとの見方が一般的なようである。


"Saudades do Rio..."
ミクロレベルでは、ブラジルは全くの途上国ではないものの、依然として先進国にはなれない側面を多く残していることを実感。特に「ブラジル・コスト」といわれる諸手続きの煩雑さやいい加減さと遅延、保健医療などの公共社会サービスの遅れなどが、深刻な社会問題として取り上げられている。赴任地のリオに関しては、交通機関や建物などの都市インフラ整備が非常に遅れており、サンパウロとの格差を感じる。初めてリオを訪れた約10年前から大きく変わったことといえば、携帯電話が普及したことと地下鉄がコパカバーナの途中まで延びたことくらい?(イパネマまで"地下鉄"という名の連結"バス"はできましたが・・・)

このようなあまり変わらないリオを感じているのは私だけではないようで、ブラジルの情報誌『Veja』が4月20日号で"Saudades do Rio...(リオの郷愁)"という特集を組んでいる。この特集は、ブラジルのシンボルであるリオは、過去に"cidade maravilhosa(魅力的な都市)"として栄光の時代を謳歌したが、現在は多くの問題を抱え、危機的状況にあると述べている。同特集は、リオの過去と現在を比較し、現在リオが抱える多くの問題の中で、治安、ファヴェーラ、経済停滞、観光促進、市街地再生の5つの問題を取り上げ、それらに対する解決策を提案している。

私にとって非常にタイムリーな特集ではあったが、提示された問題解決策の中に、私が感じた都市インフラ整備の遅れを明確に指摘するものがなかったのは、残念というか不思議である。特に、リオほどの国際都市(特に観光)でありながら、主な市内の交通手段がブラジル人または地元のリオの人carioca(要はポルトガル語ができて、地元の地理に詳しい人)でしか容易に利用できないバスである、という問題については具体的に触れられていない。

もちろん簡単に結論を出すことはできないが、久しぶりに暮らし始めたリオでの私の生活実感からすると、『Veja』の特集の見出しである"A Longa Noite do Rio(リオの長い夜)"の夜明けは、まだまだ先のように思えてしまう。

4月

第1週の週末にフィールド調査とラテンアメリカレポート原稿用調査のためサンパウロへ(ラテンアメリカレポートNo.22 Vol.1に『ブラジルにおける日本の「草の根援助」—NGO-JICA Japan Desk Brazilの設立』というタイトルで掲載予定)。リオに戻ると大学院のレポートと試験、日本からアジ研や外部の原稿修正(アジ研ワールドトレンドに『貧困の社会学:「社会的排除」と貧困問題—ラテンアメリカを中心に』というタイトルで掲載予定)が待ち受けていて、かなりパンク状態に・・・。

IPEAでは、支給されたメルアドは日本語との互換性の問題から、いろいろ試みるも日本との連絡用には使用できず・・・。パソコンは相変わらず次々と問題が発生。しかし、ようやく自分専用のパソコンが支給されることに。

生活面の方は、少~しずつ落ち着いてきた感じ。納税者番号(CPF)が届いたので(ようやく。でも、税務署のストライキで遅れた・・・。このCPFがないとブラジルでは身動きが取れない)、携帯電話を購入。あと、ヘルニアが快方に向かい、治療をとりあえず終了することができた。ただ、銀行口座開設にはホント非常に苦労・・・。最終的には開設できたけど、かなりの時間と労力を費やす。また、現在の自宅の電話が共有回線なので、自分専用の回線にしてネットをブロードバンドにしようと思っていろいろやっているが、やっぱり"こと"は思うように進まず、いまだ回線は敷設できず。巨大な日系社会のあるサンパウロと違ってリオにはJETROの支所もなく(数年前に閉鎖)、こういった生活インフラの整備に関してはホント何かと大変で、ときに魂を吸い取られるような感じ・・・。


今月のブラジル


【経済】
  • ブラジルのマクロ経済は依然として好調を維持している。3月と4月の貿易収支の黒字は2ヶ月連続してU$30億を超え、特に4月はU$38.76億と過去最高の黒字額を記録した。

  • しかし、中央銀行が政策金利であるSelic金利を4ヶ月連続して引き上げていること(3月は0.50%ポイント、4月は0.25%ポイントの引き上げで、現在19.50%)、対ドル為替相場が過去3年間で最もレアル高に推移していることなどから、今後、特に輸出面においてこれらの影響が出てくる可能性が考えられる。



【政治】
  • 4月にルーラ大統領はアフリカ5カ国を歴訪。ルーラ政権にとって今回のアフリカ訪問は4回目であり、改めて途上国重視の外交姿勢を示すものとなった。また、ブラジルの過去の奴隷貿易及び奴隷制に対する謝罪の意を公式に表明(ブラジルは国連常任理事国入りを目指しており、そのための途上国の支持獲得を目的としたものとの見方がある)。

  • 今月半ばに勃発したエクアドルの政変において、ブラジルがGuti?rrez前大統領の政治亡命を受け入れたことは、ブラジルが中南米における政治的仲介者の役割を積極的に果たしていこうとする意思を示したものと言える。その意味で、キューバのCastroや、最近特に反米色を強め、ブラジルを訪問したライス米国務長官から名指しで非難されたChavezベネズエラ大統領との関係を、今後どのように展開していくかがルーラ政権の大きな外交課題の一つといえよう。


【社会】
  • 約500人ものMST(土地なし農民運動)メンバーが大蔵省を6時間以上にわたり一時占拠するなど、農地改革に対する要求と不満は依然として強いものがある。与党PT(労働者党)とMSTは歴史的に長い政治的つながりを持っていることから、ルーラ政権にとって、社会的な支持を必ずしも得ているとは言いがたいものの、遅延している農地問題の表象でもあるMSTとの関係は、今後も慎重な交渉を要するものだといえよう。

  • 今月はじめにリオ州のBaixada Fluminenseで、子供を含む30人もの一般人が殺される事件が発生。犯人の中には警官が含まれており、地元警察とマフィアとの癒着関係、および警官の規律の欠如や質的問題が依然として深刻であることが明らかになった。

  • ローマ法王の死去と新法王の誕生の際し、ブラジルは国民の多くがカトリック教徒であること、新法王候補の一人がブラジル人であったことから非常に関心が高く、新聞やテレビで大きく報道されるとともに、各地で大々的なミサが行われた。


※最近の動向に関する情報は研究者個人の見解であり、あり得る過ちは全て執筆者個人に帰するもので、アジア経済研究所の見解を示したものではありません。また、これらの情報および写真画像の無断転載を一切禁止します