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ブラジル経済レポート 2004年1月

ブラジル経済レポート

ブラジル

浜口伸明氏 神戸大学経済経営研究所
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2004年1月

経済

近く閣僚の一部交代が噂されている。最近になって与党連合に加わったPMDBにポストを与えるためである。ディルセウ文官長とカリェイロスPMDB党首の非公式協議で、改革の焦点となっている社会保障省と通信省の2つのポストが割り当てられる方向で調整が進んでいる。このほかにも若干の閣僚の交代が予想され、1月23日にルーラ大統領が世界社会フォーラム出席のためインドに出発する直前に全体像が発表される予定である。

国会は本来夏休みの休会中で、カーニバル明けまで動きが止まるところであるが、与党側は臨時国会を召集して次の未処理の法案を優先的に決議することになった。

  1. 社会保障改革の追加修正法案 (PEC 227/04);
  2. 官民パートナーシップの規則を定める法案 (PL 2546/03);
  3. バイオセーフティ法案 (PL 2401/03);
  4. あたらしい電力部門のあり方についての暫定法 (MP 144/03 e 145/03);
  5. 大衆住宅プログラム設置のための暫定法 (MP 133/03);e
  6. 多年度投資計画 2004-2007

財政金融

国際収支

ブラジル政府は償還期間30年の15億ドルのグローバル・ボンドを発行した。マーケットの需要が大きく、額面利率は8.75%と低い調達コストを実現することができた。2003年民間企業は海外資金調達は237億ドルにのぼり、これは2002年と比較すると156%増加しており、為替レート安定に貢献した。1月にもリオドセ(CVRD)社が30年のユーロボンド5億ドル調達したことを初めとして18億ドルが流入した。

ブラジルに対するカントリー・リスク評価は高まっており、格付け機関は最近ではブラジルの代表的ドル建てソブリン債C-bondが額面以上のプレミア付で取引される(1月21日時点で1.25%のプレミア)状況になっている。

最近ドルがレアルに対して弱くなって、1ドル=2.9レアル台から2.8レアル台前半に下落してきた。この背景には2月2日に返済期限が迫っている25.2億ドル分のドル建て国債を償還するために中央銀行はドル安に誘導しようとして、下限を2.80レアルまで引き下げたとも言われている。しかし、行き過ぎたレアル高の貿易収支への影響への懸念も働いて、改めて下限を2.83に上方修正した模様である。財務省の報告によれば、昨年1年間でドルリンクの国債を積極的に償還した結果30%近い690億レアル分の為替レート連動型の国債残高が削減され、国債残高全体に占める比率も33.55%から20.5%へ減少した。ただし、固定金利ものあるいはSELIC金利連動型の国債は増加しており、国債残高全体は6873億から7871億へと増加している。
12月時点の比較で、単位は10億レアル
(出所)Ministerio da Fazenda, Secretaria de Tesouro Nacional, Relatorio da Divida Publica, Dez / 2003

サンパウロ市の消費者物価を調査しているサンパウロ大学経済研究所FIPEによれば、1月の物価上昇率は12月の対前月比0.42%から0.71%に上昇している。この中で物価を押し上げる要因となっているのは、2月の新学期が始まる前にアナウンスされた私立学校の授業料の引き上げと、文房具の需要の拡大であるとされている。

物価指数の上昇を受けて、1月の中央銀行金融政策委員会(COPOM)では、ここ数ヶ月続けてきた大胆な金利引下げ(半年で26.5%から16.5%へと10%ポイント引き下げた)から慎重姿勢に転じ、SELIC金利を先月の水準16.5%に据え置く決定を下した。金融市場の大半は0.5%~0.75%ポイントの引き下げを予想していた。国債をポートフォリオに抱えている銀行は当面の利益が確保できたことを一応歓迎しているが、長期的に見ると、やはり、この水準から先の金融緩和はかなり慎重にならざるをえず、急速な景気回復は難しいという見通しを確認する結果となり、産業界はさっそく批判している。


2003年貿易収支

輸出はおよそ前年を21%上回る730.8億ドル、輸入は2.1%と増加した482.5億ドルとなり、貿易黒字は昨年を117億ドル上回り過去最高の248.3億ドルに達した。基礎産品・半製品・工業製品がそれぞれ増加した中、基礎産品と半製品は国際市況の上昇にも助けられた面があった一方で、工業製品は輸出量の20%増量で貢献した。特に工業製品輸出の14.6%にあたる106億ドルの輸出を記録した輸送機器部門は、対前年比で18.6%輸出を増加させた。市場別にはアルゼンチン向け輸出が23億ドルから45.6億ドルへとほぼ倍増したこと、中国向け輸出は80%増加して45.3億ドルとなったこと、ヨーロッパ(181億ドル)、アメリカ(169億ドル)への輸出も順調に拡大した。微増にとどまった輸入は資本財と消費財の輸入が逆に前年を下回っており、景気回復の遅れを反映した結果となった。原材料・中間財の輸入が増加しているのは、工業製品の輸出に伴うものであった。


ブラジル貿易の動向
輸出
輸出
(出所)SECEX/MDIC, Nota para Imprensa(開発省貿易局報道資料)
2004年1月2日

輸入
輸入
(出所)SECEX/MDIC, Nota para Imprensa(開発省貿易局報道資料)
2004年1月2日

政府は税制改革の一環として投資を奨励する目的で鋼管、ボイラー、発電機、工作機械、検査機器などの資本財に対する工業製品税が5%から3.5%に引き下げられる措置を発表した。対象になっている商品の詳細はhttp://www.mdic.gov.br/に掲載されている。

IBGEの発表によれば、11月の雇用水準は前月に対して0.1%ポイントの増加にとどまった。雇用が拡大している分野は一部の輸出関連産業(食品、金属)である。国内需要中心の産業(アパレル、セメント・窯業など)では雇用の削減が起こっており、景気回復はまだ足取りが弱くまだら模様であることがわかる。



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