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インドにおける高額紙幣の切り替えについて(1)

アジアの出来事

地域研究センター 佐藤 創
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2017年3月

はじめに

周知のとおり、2016年11月8日20時にモディ首相は、500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣(以下、旧紙幣)について翌11月9日からそれらは通用力を失い、新しい500ルピー紙幣と2000ルピー紙幣(以下、新紙幣)が順次市中に提供されると発表した1。この紙幣切り替え措置が実施されてより4カ月余りがたち、2017年3月13日にインド準備銀行(Reserve Bank of India: RBI)は新紙幣の引出しに課されていた制限のうち残されていた規制を撤廃し、これにより基本的に経過措置は完了した。そこで、今回の措置の経緯と現時点で把握できる範囲での影響や意義についてまとめておきたい。

事実

インドの紙幣において、1000ルピー紙幣がもっとも高額な紙幣であり、500ルピー紙幣がこれに次ぐ。政府は2016年11月8日に、この二種類の紙幣について法定の強制通用力を失わせ、これにかわって強制通用力をもつ新たなRBI発行の銀行券として、新しい500ルピー紙幣(数週間以内に発行流通)と2000ルピー紙幣(11月10日以降に発行流通)を供給すると発表した。発表から旧紙幣の廃貨までわずか4時間という突然の措置である。その狙いは、汚職・腐敗及び脱税などの疑われるブラックマネー、テロ活動のための高額紙幣使用、偽札、を抑止することにあると政府側は説明した。

経過措置も同時に発表され、2016年12月30日までは旧紙幣を限度額なく銀行口座等へ預け入れることは可能であるが、銀行窓口等で旧紙幣を新紙幣に交換することについては11月24日までのみ可能とし、また交換の限度額も一回の交換につき4000ルピーと低く設定された。さらに、銀行口座等からの引出しについても銀行窓口では11月24日までは1日10000ルピーまで、1週間に20000ルピーまで、ATMでは1日2000ルピーまでとする限度額が設けられた。なお旧紙幣は一般には強制通用力を失うこととされたが、病院、鉄道、飛行機、ガソリンスタンドなど一定の財サービスの購入については旧紙幣の使用を継続して認めるものとした。これらを含め、政府及びRBIが高額紙幣切り替えに関連して取った措置をまず日時順に整理する。

高額紙幣の切り替えに関わる主な法令・告示の概要

2016年11月8日からこの高額紙幣切り替え措置に関連して100を優に超える告示やプレス・リリースが政府(財務省)とRBIから発されており、必ずしも網羅的なものではないが、主だった事項を法令ないし告示ごとにまとめると以下の通りである。

2016年11月8日
  • 政府は500ルピー紙幣、1000ルピー紙幣の強制通用力を11月9日より失効させる2
    • なお旧紙幣による銀行口座等への預入れについては一定の口座を除いて限度額なく2016年12月30日まで認める。
    • 旧紙幣と新紙幣の銀行窓口での交換限度は一回4000ルピーとする(15日後に限度額は見直す)。
    • 銀行窓口での口座からの引出しは11月24日まで一日10000ルピー、一週間に20000ルピーまでとする。
    • ATMでの1カード当たりの引出しの限度額は一日2000ルピー、11月19日以降は4000ルピーとする。
    • 2016年12月30日までに旧紙幣の銀行口座への預入れができない者は、RBIの支店または他の方法によりその後も預入れをする機会を与えられる。
    • 銀行は11月9日は臨時休業。
    • ATM等の機械は11月9日、10日は休止。
    • 銀行は11月10日の営業再開より、毎日RBIに交換された旧紙幣の詳細を報告する。
  • ただし、(1)ガソリン、(2)政府医療機関、(3)鉄道、公営バス、飛行機予約、(4)州政府公認の食料店、(5)葬儀、(6)国際空港での両替及び外国人観光客による両替については(5000ルピーまで)、11月11日まで旧紙幣の使用を認める3
11月9日
  • 政府は旧紙幣の使用が認められる対象について、(1)州および国営の高速道路の使用料金、(2)ガス・シリンダーの購入、(3)地下鉄のチケット、(4)インド考古調査局の管理するモニュメントのチケット、を追加して含める4
  • RBIは12日土曜、13日日曜は通常営業するよう銀行に要請5
  • RBIは旧紙幣がATMで引き出されないようガイドラインを発する6
11月10日
  • 政府は旧紙幣の使用が認められる対象について、(1)中央および州、地方政府に対してなされる手数料、税金または罰金の支払い、(2)電気および水を含むユティリティの支払い、を追加して含める7
11月11日
  • 政府は旧紙幣の使用が認められる対象について、その期限を11日から11月14日まで延長する8
  • RBIは銀行に預け入れられた金額等の報告に加えて偽札についても報告を行うよう銀行に求める9
  • RBIは政府機関については書面での要請に基づき支店長の許可があれば、銀行窓口で10000ルピー以上引き出すことを認める10
11月12日
  • RBIはプレス・リリースにて、今回の高額紙幣切り替え措置に関して、支払方法をRupay/Credit/Debitカード、携帯バンキング、インターネットバンキングなどの現金以外の他の方法に切り替え、Jan Dhan Yojanaにより銀行口座を開いた者はそれらを使う絶好の機会であり、そのことにより、現金需要を減らすことができ、デジタル・ワールドの生活経験を高めることができる、とアナウンス11
11月13日
  • 政府は銀行窓口での旧紙幣と新紙幣の交換限度を4000ルピーから4500ルピーへ増額12
    • 新紙幣の銀行窓口での引出しの一日当たり10000ルピーの限度額を撤廃し、一週間当たりの限度額は20000ルピーから24000ルピーに引き上げる。
    • ATMによる引き出しにつき、1カード一日当たり2000ルピーから2500ルピーに限度額を引き上げる。
11月14日
  • 政府は旧紙幣の使用が認められる対象について、その期限を14日から11月24日までに再延長する13
  • RBIは11月10日から12月30日までのATMを用いた取引に関する手数料を無料とするよう銀行に命じる14
  • RBIはATMの調整や再稼働に関してこれを監督する委員会を設置する15
  • RBIは当座預金については一週間当たり50000ルピーまでの引出しを認める16
    • RBIはプランテーション、砂糖組合、乳業などの労働者のために銀行口座を開設するよう銀行に指示。
    • RBIは銀行のない地域に、移動銀行(mobile van)を用いて交換、預入れ、引出しができるように努力するよう銀行に指示。
11月15日
  • RBIは一度窓口にて旧紙幣と新紙幣を交換した者が二度交換できないよう消せないインクを右手人差し指に用いるよう銀行に要請17
  • 旧紙幣の預金についてJan Dhan口座については50000ルピーまでとする18
11月16日
  • RBIは50000ルピー以上を旧紙幣にて銀行に預入れしようとする顧客については、その口座が納税者番号(PAN)に基づき開設されたものでない場合には、納税者番号カードのコピーを同時に提出させるよう銀行に指示19
11月17日
  • RBIは銀行窓口での紙幣交換につき、一人一回のみ、2000ルピーまでとする20
  • 政府は農民(穀物ローンの利用者又は農民クレジットカード保持者)につき一週間あたり25000ルピーの引出しを認める21
    • 結婚式については家族が25万ルピーまで引き出すことを認める。
11月20日
  • 政府は旧500ルピー紙幣を用いて種を購入することを農民に認める22
11月24日
  • 銀行窓口での旧紙幣と新紙幣の交換は終了し、RBIの窓口のみとする23
  • 政府は旧紙幣の使用が認められる対象について、その期限を24日から12月15日までに再々延長する24
    • この対象に公営学校の授業料(一人2000ルピーまで)の支払い、プリペイド式携帯のトップアップ(500ルピーまで)を含める。これらは旧500ルピー紙幣のみ使用可能。
    • 国際空港での外貨両替のための旧紙幣使用および外国人観光客の旧紙幣の交換は終了。
  • RBIは銀行に年金生活者と軍人に対して十分に紙幣が供給されるよう要請25
11月25日
  • RBIはインドを訪れる外国人観光客について外貨によるルピーへの両替に限度額を設定し、12月15日まで週当たり5000ルピーまでとする26
11月26日
  • RBIは9月16日から11月11日の間に銀行に預け入れられた預金について100%の現金準備率(cash reserve ratio)を維持するよう銀行に指示27
11月28日
  • RBIは新紙幣により11月29日以降に預け入れられた預金については、週当たり24000ルピーの引出し限度を撤廃28
11月29日
  • Taxation Laws (Second Amendment) Bill, 2016が下院にて財政法案として可決。同法はPradhan Mantri Garib Kalyan Yojana 2016の根拠法令であり、このスキームは無申告の所得に関する期限後申告について定めるもの。定められた期日までに自ら申告した場合には、申告額の49.9%(総額の30%の課税、税額の33%のcess、総額の10%の罰金)の支払いが課され、25%については利子のつかない銀行口座にて4年間据え置かれねばならない、などを定める29。なお、自己申告ではなく調査の結果無申告の所得が判明した場合には、現行の総額の30%の罰金ではなく、90%の罰金を適用するとの改革を含む。
  • Jan Dhan口座については一月当たり10000ルピーまでの引出しに原則として限定。そのうち非顧客本人確認順守口座(non-Know Your Customer compliant accounts)については原則として5000ルピーに限定30
12月1日
  • RBIは、ソーシャルメディアなどでRBIの指示であると騙る指示には従わないようにとの警告を銀行に対して発する31
12月7日
  • 政府は旧紙幣の使用を認めていた鉄道、バス、飛行機、都市近郊鉄道・地下鉄のチケット購入につき、旧紙幣の使用を12月10日から認めないこととする32
  • RBIは9月16日から11月11日に預け入れられた預金について現金準備率を100%とする要件を撤廃33
12月15日
  • Taxation Laws (Second Amendment) Act, 2016が公布・施行される。
12月16日
  • 政府はPradhan Mantri Garib Kalyan Yojana 2016を公示34
  • 外国人観光客による外貨両替の週当たり5000ルピーの上限を12月31日まで延長する35
12月17日
  • 政府は5000ルピー以上の銀行への旧紙幣による預入れはRBIの定める条件をみたさねばならないとし、また12月30日までに預け入れる回数を一口座あたり一度のみに制限。なおPradhan Mantri Garib Kalyan Yojana, 2016に基づく旧紙幣による預入れについては制限なし36
12月19日
  • RBIは5000ルピー以上の旧紙幣による預入れについて、二名の職員がなぜより早期に預入れを行わなかったのか質問を行い納得できる回答をえた場合に一度のみ顧客本人確認順守口座に預け入れることができると制限、また非顧客本人確認順守口座に預け入れる場合には原則として上限を50000ルピーまでに制限37
12月21日
  • RBIは、12月19日に導入した顧客本人確認遵守口座に関する旧紙幣の預入れ回数の制限、関連する質問要件、を撤回38
12月30日
  • 旧紙幣による銀行等への預入れが認められる期間が終了39
  • 政府はThe Specified Bank Notes (Cessation of Liabilities) Ordinance, 2016を公布、翌日31日施行40。これにより旧紙幣はRBIの負債から除去され、政府による保証の対象ではなくなる。また、旧紙幣の保持は原則として処罰の対象となる。
  • RBIはATMによる一カード一度当たりの引出し上限を2500ルピーから4500ルピーに2017年1月1日から引き上げると発表41
12月31日
  • 施行された大統領令に基づき、猶予期間(Grace Period)をRBIは発表。11月10日から12月30日の間にインドに不在であった国民(住民および非居住インド人)については、顧客本人確認順守口座を保持している者のみ、住民は2017年1月2日から3月31日まで、非居住インド人は6月30日まで、RBI支店にて、旧紙幣の交換が一度のみ可能とする42
2017年1月16日
  • RBIはATMによる新紙幣引出しの一日当たりの上限を4500ルピーから10000ルピーに引き上げ、当座預金(current account)に関する週当たりの引出し制限を50000ルピーから100000ルピーに引き上げる43
1月30日
  • RBIは当座預金からの引出しの制限を撤廃し、ATMからの引出しの制限を翌2月1日より撤廃(銀行独自の制限に戻してよい)44
2月8日
  • RBIは貯蓄預金口座(Savings Bank account)からの引出しについて、2月20日より週当たり24000ルピーの制限を50000ルピーに引き上げ、3月13日に制限を撤廃すると発表45
2月28日
  • The Specified Bank Notes (Cessation of Liabilities) Ordinance, 2016を置き換えるThe Specified Bank Notes (Cessation of Liabilities) Act, 2017が公布される。
3月13日
  • 貯蓄預金口座からの引出し制限が撤廃される。

このように整理してみると、政府とRBIの告示類がかくも多数に上ること自体、準備不足の証左であろうことが伺える。いずれにしても、今回の措置は、全流通貨幣総額の86%を占める紙幣を流通から回収しようとするものであり、また、1000ルピー紙幣を支払いに用いることができず、新2000ルピー紙幣が入手できないとなると、現金決済による商取引がほとんど不可能となるのみならず、日常生活の不便も甚だしい。したがって、これらの紙幣を流通から引き揚げるからには、それに代わる他の既存の紙幣(100ルピー札など)と新紙幣とを遅滞なく供給する必要があった。しかし、日本でも報道されたように、準備不足ゆえか、あるいは意図的にか、紙幣不足はすぐさま深刻となり、銀行には長蛇の列ができて旧紙幣の交換や新紙幣の入手に市民は苦労し、また、現金決済が主流である業種(インフォーマル・セクター、消費財産業、小売業、農業など)の取引が困難となり、労働者への賃金支払いも滞るなど、経済における各種の混乱は小さくなかった。

政府は、繰り返ししばらく忍耐してほしいと国民に訴え続けた。はたして、措置の実施から4カ月余りが経った現在では、新紙幣の流通も徐々に普及し、一時期の混乱は収まっているようにみえる。また、生活上の不便、さらには商取引機会の喪失、失業などによる市民の怒りや不満は小さくなかったと思われるにもかかわらず、政権の支持率はさほど落ちておらず、さらには2017年2月に実施された重要州での選挙に与党は大勝した。もちろんGDPの成長率は、紙幣不足による経済の混乱(需要減、生産減、雇用減)というこの措置のいわばマイナスの影響で一時的には落ちることが予想されている。短期的な経済への悪影響を辞さずに実施された今回の措置は、どのような思惑に基づき、中長期的にはインドの経済社会にどのような影響があるのだろうか。

今回の政府・RBIによる措置の法的根拠と最高裁の対応

まず、そもそも政府には今回の措置を行うような権限が法令により授権されているのだろうか。この点に疑義はないのか確認したい。

基本的には、今回の措置を政府が実施できるその法的根拠は、1934年インド準備銀行法(Reserve Bank of India Act, 1934)の第26条第2項にある。

「(インド準備銀行)中央理事会の勧告にしたがって、中央政府は、インド官報に公示することにより、当該公示に特定された日から、いかなる額面のいかなる銀行券のシリーズについても支払い手段として無効となると宣言することができる。ただし、公示に特定されたオフィスまたはインド準備銀行の代理機関、及び公示に特定された範囲は除く」。

したがって、今回のモディ政権による紙幣の切り替え措置はRBIの勧告に基づく。この点については、勧告の存在は直接には確認できなかったものの、財務省の11月8日付の告示にはRBI中央理事会の勧告に従ってこの措置を実施すると明記されている46

紙幣の切り替えはRBIが1934年に設立されてよりこれが三度目となる。一度目は1946年であり、イギリスからインド・パキスタンが分離独立する前である。第二次世界大戦におもに由来する財政難に直面して、ブラックマーケットでの取引を捕捉し税収入を増やす目的で、RBIが流通させていた高額紙幣(500, 1000, 10000ルピー)の強制通用力を失効させた47。1946年1月11日に発表して1月12日には強制通用力を失わせている。当時のRBI総裁(C.D. Deshmukh)は効果に懐疑的であったという。二度目は1978年である。1971年に、Wanchoo委員会(直接税調査委員会)が紙幣切り替えをブラックマネー対策として当時のインディラ・ガンディー率いる会議派政権に対して提言したが、政権はこの措置を採用せず、後にジャナタ党が1977年に政権につくと、翌1978年1月16日に、高額紙幣(1000、5000、10000ルピー)の通用力を政府は廃止し、一週間の交換期限が設けられた48。当時の高額紙幣は一般市民が手にすることはほとんどなく、流通紙幣に占める割合も10%に満たなかった。このときのRBI総裁(I.G. Patel)もまた政府の措置に懐疑的であったという。いずれもブラックマネー対策として有効であったか、あるいは税収を増やす効果があったかというと議論のあるところで、仮にあったと議論するとしても少なくとも一時的なものであったといわざるをえないだろう。

なお、1978年の措置については、憲法に認められた基本権である取引及び商業を行う権利を損なっていないか、さらに補償なくして財産を強制的に収用する結果となりうるため当時は基本権に含まれていた財産権を侵害してはいないかという観点から訴訟が提起され、18年後の1996年に最高裁の判断がでている49。政府の措置は、その目的をみれば公益にかなっており、原告の権利を損なうものでもないとの判決である。

2016年11月8日に発表された今回の高額紙幣の切り替えに対しても、はやくも11月中には数件の公益訴訟が高裁および最高裁に提起され、最高裁はタクール最高裁長官を裁判長とする三人からなる小法廷で2016年12月16日に本件を大法廷に付するとの決定を下している50。訴えのポイントは、今回の高額紙幣切り替えに伴う経過措置が十分に市民の生活を考慮しておらず、憲法21条に保障された基本権である生命に対する権利を損なうものではないかという主張である。最高裁は、政府に対して一般市民の苦境によく注意して定期的に経過措置を見直すよう要求しつつ、今回の高額紙幣切り替え自体は財政政策に関わる事項であり、原則としては政府の執行(行政)部門に委ねられるもので、この時点での介入は控え、いかなる中間命令を与えることもしないとの判断を示した。同時に、各地の高裁に係属している同種の訴えを一つの訴訟にまとめ、最高裁に5人からなる憲法法廷を設置してその法廷に移し審理することを決め、またこの憲法法廷にて議論されるべき9つの憲法上の論点をまとめている。たとえば、11月8日付けの政府告示はインド準備銀行法第26条第2項による授権の範囲を超えており権限踰越で違法ではないか、銀行口座からの引出しに関する諸制限には法的根拠があるのか、またそれらの措置は憲法第14条(平等)、第19条(各種自由権)、第21条(生命に対する権利)に抵触していないか、財政・経済政策に関する司法審査の範囲はどうあるべきか、などである。インド最高裁は、司法積極主義の長い伝統を誇り、モディ政権下で行われた裁判官任命方法の改革に関わる憲法第99次改正を2015年10月に違憲無効としている51。今回の高額紙幣切り替え措置を最高裁が今さらながら違憲無効とするとは考えにくいが、その合憲性、適法性を最高裁がどう判断するのか(あるいは判断を回避するのかも含めて)、興味深いところである。

続く。

脚注

  1. 以下、本稿では、事実関係については、別に断りのない限り、現地有力英字日刊紙(The Hindu, The Indian Express, The Economic Times)に基づいている。また政府が公示・施行した法令や告示、プレス・リリースなどについての出典はそれぞれ注に示している。
  2. Ministry of Finance, Notification (the 8th November 2016) S.O.3407 (E), The Gazette of India. 官報に公示された文書は、http://egazette.nic.in/(S(pemncukbknanxarawcvwqhut))/Aboutus.aspx、にて取得可能(以下同じ、最終アクセス2017年3月23日)。また、この財務省告示を受けてその詳細を諸銀行に指示したReserve Bank of India, Notification (November 8, 2016) RBI/2016-17/111, Closure of ATM Operation, およびNotification (November 8, 2016) RBI/2016-17/112. RBI Instructions to Banksも参照。RBIのNotificationは、https://www.rbi.org.in/Scripts/NotificationUser.aspx、にて取得可能(以下同じ、最終アクセス2017年3月23日)。
  3. Ministry of Finance, Notification (the 8th November 2016) S.O.3408 (E), The Gazette of India.
  4. Ministry of Finance, Notification (the 9th November 2016) S.O.3416 (E), The Gazette of India.
  5. Reserve Bank of India, Notification (November 9, 2016) RBI/2016-17/114, Banks to remain open for Public on Saturday, November 12 and Sunday, November 13, 2016.
  6. Reserve Bank of India, Notification (November 9, 2016) RBI/2016-17/115, RBI Instruction to Banks for Changes in ATM.
  7. Ministry of Finance, Notification (the 10th November 2016) S.O.3429 (E), The Gazette of India.
  8. Ministry of Finance, Notification (the 11th November 2016) S.O.3445 (E), The Gazette of India.
  9. Reserve Bank of India, Notification (November 11, 2016) RBI/2016-17/125, Reporting and Monitoring.
  10. Reserve Bank of India, Notification (November 11, 2016) RBI/2016-17/124, Relaxation for Government Departments.
  11. RBI Press Release 2016-17/1190 (Nov. 12 2016), Withdrawal of Legal Tender Character of ₹ 500 and ₹ 1,000: RBI Statement.
  12. Ministry of Finance, Notification (the 13th November 2016) S.O.3446 (E), The Gazette of India, 及びReserve Bank of India, Notification (November 13, 2016) RBI/2016-17/129, Revision in Limits for Cash.
  13. Ministry of Finance, Notification (the 14th November 2016) S.O.3448 (E) , The Gazette of India.
  14. Reserve Bank of India, Notification (November 14, 2016) RBI/2016-17/132, Usage of ATMs – Waiver of Customer Charges.
  15. RBI Press Release 2016-2017/1197 (Nov 14, 2016), Constitution of Task Force for enabling dispensation of Mahatma Gandhi (New) Series Banknotes - Recalibration and reactivation of ATMs.
  16. Reserve Bank of India, Notification (November 14, 2016) RBI/2016-17/131, Expanding the Distribution Locations for Deposit and Withdrawal of Cash.
  17. Reserve Bank of India, Notification (November 15, 2016) RBI/2016-17/133, Standard Operating Procedure (SOP) for putting indelible ink on the finger of the customers coming to a bank branch for Specified Bank Notes (SBNs).
  18. Ministry of Finance, Notification (the 15th November 2016) G.S.R. 1068 (E), The Gazette of India.
  19. Reserve Bank of India, Notification (November 16, 2016) RBI/2016-17/135, Compliance with Provisions of 114B of the Income Tax Rules, 1962.
  20. Ministry of Finance, Notification (the 17th November 2016) S.O.3479 (E), The Gazette of India.
  21. Ministry of Finance, Notification (the 17th November 2016) S.O.3480 (E), The Gazette of India.
  22. Ministry of Finance, Notification (the 20th November 2016) S.O.3490 (E), The Gazette of India.
  23. Ministry of Finance, Notification (the 24th November 2016) S.O.3543 (E), The Gazette of India.
  24. Ministry of Finance, Notification (the 24th November 2016) S.O.3544 (E), The Gazette of India.
  25. Reserve Bank of India, Notification (November 24, 2016) RBI/2016-17/154, Withdrawal of Specified Banknotes: Cash requirements of pensioners and Armed Forces Personnel.
  26. Reserve Bank of India, Notification (November 25, 2016) RBI/2016-17/157, Exchange facility to foreign citizens.
  27. Reserve Bank of India, Notification (November 26, 2016) RBI/2016-17/159, Reserve Bank of India Act, 1934 – Section 42(1A) Requirement for maintaining additional CRR.
  28. Reserve Bank of India, Notification (November 28, 2016) RBI/2016-17/163, Withdrawal of cash from bank deposit accounts – Relaxation.
  29. Taxation Laws (Second Amendment) Bill, 2016. インドの制定法や規則は、http://indiacode.nic.in/、あるいはhttp://www.prsindia.org/downloads/recent-acts/、などにて取得可能である(以下同じ、2017年3月23日最終アクセス)
  30. Reserve Bank of India, Notification (November 29, 2016) RBI/2016-17/165, Accounts under PMJDY – Precautions.
  31. Reserve Bank of India, Notification (December 1, 2016) RBI/2016-17/166, Information from Unauthenticated Sources – Advisory to banks.
  32. Ministry of Finance, Notification (the 7th December 2016) S.O.3678 (E), The Gazette of India.
  33. Reserve Bank of India, Notification (November 29, 2016) RBI/2016-17/165, Accounts under PMJDY – Precautions.
  34. Ministry of Finance, Notification (the 16th December 2016) S.O.4058 (E), S.O.4059 (E), S.O.4061(E), The Gazette of India.
  35. Reserve Bank of India, Notification (December 16, 2016) RBI/2016-17/186, Exchange facility to foreign citizens.
  36. Ministry of Finance, Notification (the 17th December 2016) S.O.4086 (E), The Gazette of India.
  37. Reserve Bank of India, Notification (December 19, 2016) RBI/2016-17/189, Withdrawal of Legal Tender Character of existing ₹ 500/- and ₹ 1000/- Bank Notes (Specified Bank Notes) - Deposit of Specified Bank Notes (SBNs) into bank accounts.
  38. Reserve Bank of India, Notification (December 21, 2016) RBI/2016-17/191, Withdrawal of Legal Tender Character of existing ₹ 500/- and ₹ 1000/- Bank Notes (Specified Bank Notes) - Deposit of Specified Bank Notes (SBNs) into bank accounts-Modification.
  39. Reserve Bank of India, Notification (December 30, 2016) RBI/2016-17/201, Closure of the scheme of exchange of Specified Bank Notes (SBNs) at banks on December 30th 2016- Accounting.
  40. 国会が閉会中のために大統領令として同法令はまず施行され、同大統領令を置き換える全く同じ内容をもつ法案(The Specified Bank Notes (Cessation of Liabilities) Bill, 2017が2017年2月3日に下院に上程された。
  41. Reserve Bank of India, Notification (December 30, 2016) RBI/2016-17/204, Cash withdrawal from ATMs – Enhancement of daily limits.
  42. Reserve Bank of India, Notification (December 31, 2016) RBI/2016-17/205, Facility for exchange of Specified Bank Notes (SBNs) during Grace Period – Verification of KYC and Account details.
  43. Reserve Bank of India, Notification (January 16, 2017) RBI/2016-17/213, Enhancement of withdrawal limits from ATMs and Current Accounts.
  44. Reserve Bank of India, Notification (January 30, 2017) RBI/2016-17/217, Limits on Cash withdrawals from Bank accounts and ATMs - Restoration of status quo ante.
  45. Reserve Bank of India, Notification (February 8, 2017) RBI/2016-17/224, Removal of limits on withdrawal of cash from Saving Bank Accounts.
  46. それゆえに、こうした強引な紙幣切り替えに賛成するとは考えにくいラジャン前RBI総裁が2017年9月に任期満了で在任一期のみにて退任したこととの関係が取りざたされてもいる。ラジャンの退任がこの措置をめぐるものであったかどうかは不明であるが、少なくとも準備は彼の在任中にはじまっていたと考えることが妥当であろう。ラジャンは2014年8月11日の20th Lalit Doshi Memorial Lectureにおける質疑応答で、ブラックマネー対策としての紙幣の切り替えの有効性には懐疑的な考えを示している。
    http://www.huffingtonpost.in/2016/11/09/heres-what-raghuram-rajan-thinks-of-currency-demonetisation/(最終アクセス2017年3月23日)。
  47. An Ordinance to Provide for the Demonetisation of Certain High Denomination Bank Notes (Ordinance No.III of 1946, 12th January).
  48. The High Denomination Bank Notes (Demonetisation) Act, 1978.
  49. Jayantilal Ratanchand Shah v. Reserve Bank of India and Others (1996 SCALE (5) 741).
  50. Vivek Narayan Sharma v. Union of India (Writ Petition (Civil) No. 906/2016).
  51. 憲法第99次改正違憲判決の詳細は、佐藤創(2016)「インド:岐路に立つ司法積極主義(1),(2),(3)」。