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スリランカ第15回総選挙の結果と今後の見通し

アジアの出来事

地域研究センター 荒井 悦代

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2015年8月

8月17日にスリランカで第15次総選挙が行われた。前回の総選挙は2010年4月に実施されており、今回は予定の1年前倒しで行われた。早期の選挙は、2015年1月の大統領選挙において勝利したマイトリパーラ・シリセーナ大統領の公約の一つであった。

選挙の争点と結果

今回の選挙の争点は、国民がシリセーナ大統領の政治改革の継続を支持するか、1月選挙で敗北したマヒンダ・ラージャパクセの復活を支持するかであった。選挙期間中、コロンボ市内で統一国民党(UNP)支持者らへの発砲があったものの、選挙キャンペーンは穏便に行われた。

投票率は79.8%と大統領選挙(81.5%)にはおよばないものの関心の高さが示された。結果は、シリセーナとともに大統領選挙後の政治を主導したUNPが225議席中106議席を獲得し勝利した。対立する統一人民自由連合(UPFA)は95議席に留まった。1月の大統領選挙で権威主義的なラージャパクセに「ノー」を突きつけたスリランカ国民は、今回の国会議員選挙でも、グッドガバナンスを標榜するシリセーナ大統領/ラニル・ウィクレマシンハ首相政権を評価したという結果になった。これによりシリセーナ/ウィクレマシンハ政権に次の5年間(19次改正により任期が6年から5年に短縮)の道が開けた。

選挙によって、国会における少数与党という不安定状態は解消された。今後はUNPに協力する政党や党籍替え(クロスオーバー)によって過半数の113議席に迫るであろう。

今後の見通し-国民政府の樹立なるか

では今後は、これまでよりも安定的に、かつ迅速に政治改革や経済政策を推進できるかというと、疑問が残る。新政権が直面する課題は、憲法改革(改正あるいは新憲法の制定)や地方への権限委譲など、一筋縄ではいかないからである。

今後、UNPは野党議員にクロスオーバーを呼びかけるとともに、国民政府の樹立を試み、憲法改正に必要な3分の2(150議席)の議席を確保していくことになるだろう。16議席獲得したタミル国民連合(TNA)や6議席を獲得した人民解放戦線(JVP)は、議案によってはUNPに協力するだろうが、与党連合には加わらない見込みである。そうなると、UPFAの協力が不可欠となる。UPFAは、敗北したとはいえ、95議席を保持しており十分大きな勢力である。得票数で見ても、今回の選挙でのUNPとUPFAとの差は得票率で3.3%と僅差であった。前回の国会議員選挙と比較するならば、わずか6.7%しか減っていない。

UPFAの内部分裂と弱体化

このUPFAの取り込みには、UPFAのリーダーでもある大統領の役割が期待されるところである。しかし、総選挙期間中にUPFAと大統領の関係は悪化の一途をたどった。たとえば、マヒンダの出馬をめぐりUPFA内部で意見の対立があった。マヒンダ復活を望むラージャパクセ支持派とシリセーナ支持派の対立であった。この対立にシリセーナはUPFAの分裂を危惧して,ラージャパクセの出馬を認めた。これにより,ラージャパクセ支持派は勢いづいた。シリセーナ支持派は党内で微妙な立ち位置に置かれることとなり、かえって亀裂を深めてしまった。

ラージャパクセの出馬を認めた直後に、大統領は公開書簡で国民にUNPに投票することを求めた。投票直前にはUPFAとスリランカ自由党(SLFP、UPFAを構成する最大政党)の中央委員会委員長をそれぞれ解任し、選挙後には中央委員会も解散させるなど無謀ともいえる強硬手段をとっている。大統領の判断は、UPFAのマヒンダ支持派を弱体化させることだったに違いないが、同時にUPFAそのものの分裂と弱体化を招いた。選挙直後から、UPFA大物議員のクロスオーバーも取りざたされている。

新政権の発足間もない9月には国連人権総会が待ち構えている。内戦末期の人権侵害などについて、これまでの取り組みが再び問われる。スリランカはまずは、これを乗り切らなければならない。

近年の大統領選挙、国会議員選挙の得票数

近年の大統領選挙、国会議員選挙の得票数

(出所)筆者作成