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インドネシア・ユドヨノ政権の内閣改造(下)—副大臣登用の背景

アジアの出来事

地域研究センター 川村 晃一
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インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は、第2期政権発足から2年後の2011年10月19日に、大幅な内閣改造を実施した。ユドヨノ大統領は、2009年7月の大統領選挙で圧勝し再選を果たしたが、閣僚や与党関係者の汚職疑惑が大きく報道されるなど、その人気に陰りが見え始めた。今回の内閣改造は、支持率の低迷を挽回したいという大統領の意図が背景にあったと言われているが、大統領の目指しているものは何か、今後の政策遂行にどのような影響があるのかを、2回に分けて考えてみる。2回目の今回は、内閣改造にあわせて多数任命された副大臣登用の背景を考察する。

まず、閣僚の出身組織を見てみる。全38ポストのうち、政党政治家が18人(民主主義者党5人、福祉正義党3人、国民信託党3人、ゴルカル党3人、開発統一党2人、民族覚醒党2人)、官僚出身者が6人、学者が6人、民間出身者が4人、国軍出身者が3人である(商業相に異動したギタ・ウィルヤワンの後任が決まっていない投資調整庁長官を除く)。第2期政権発足時には政党政治家が20人を占めていたが、今回の内閣改造で2人減り、かわって民間出身者が登用された。2004年に発足した第1期ユドヨノ政権の任期中に実施された2度の内閣改造では、政党政治家が(37ポスト中)12人から19人へと増えたことと比較すれば、「連立相手への配慮が優先された」という国内での批判は当たらないことが分かる。

閣僚ポストを減らされたのは、与党・民主主義者党と福祉正義党である。福祉正義党は、連立政権のなかで与党に次いで多い4つの大臣ポストを配分されながら、国会では政府の政策に反対したり政権批判を続けたりしていた。その福祉正義党のポストをユドヨノ大統領は1つ減らし、同時に自党の大臣ポストも1つ削って、バランスを取った。

一方、ゴルカル党は、内閣改造前から1ポスト増を要求し、アブリザル・バクリ党首に近い実業家のチチップ・スタルジョの入閣を画策していた。しかし、その要求は受け入れられず、チチップの入閣が実現したかわりに、ファデル・ムハンマド海洋・漁業相が解任された。

政党政治家の閣僚ポストは2つ減らされたとはいえ、まだ内閣全体のほぼ半数を占めている。より専門家を増やして政策実行力を向上させるべきという声がメディアなどに寄せられているが、ユドヨノ大統領にとってこれ以上政党政治家を減らすことは難しい。なぜなら、ユドヨノの与党・民主主義者党は国会議席のわずか4分の1をおさえているにすぎず、国会で法案を通すためには他党の協力が欠かせないからである。国会での法案審議など、政局運営において他党の協力を得るためには、政権に参加している連立相手に対して政治的な配慮をすることは不可欠である。

だが、政党政治家は、必ずしも各担当分野に精通しているわけではない。そこで、政策実行力を上げるために今回の内閣改造で多数任命されたのが副大臣である。副大臣は、2009年11月と2010年1月に、担当分野に明るくない大臣を補佐するため、主要8省に実務官僚が任命されていたが、今回新たに13人もの副大臣が任命され、総勢19人の体制となった(下記名簿を参照)。

これまで副大臣には上級官僚のみを任命できるとされていたが、ユドヨノ大統領は、今回の人事にあわせて学者などの専門家の任命も可能にするよう大統領令を改正した。その結果、19人の副大臣のうち10人が官僚、8人が学者となった(さらに、国軍出身者が1人)。最年少のデニー・インドラヤナ法務・人権副大臣(38歳)やマヘンドラ・シレガル大蔵副大臣(41歳)など、若手の学者や優秀な中堅官僚らが大胆に登用されている。

この副大臣の増員に対しては、「焼け太りだ」、「大臣との調整がうまくいかないのではないか」、「実質的な権限はないのではないか」など、否定的な見方が多い。だが、ユドヨノ大統領としては、連立政党に配慮せざるをえない閣僚人事において、有能な中堅官僚や学者を副大臣として任命し、政策遂行の実働部隊とする意図があったのではないかと思われる。

2014年の任期切れまで残り3年となった第2期ユドヨノ政権にとって、彼ら副大臣の働きが政権の実績づくりの鍵となるかもしれない。

【副大臣名簿】
外務副大臣
(新任)
Wardana (57歳、中ジャワ州出身)
外務省政策研究開発庁長官、駐シンガポール大使、官僚
国防副大臣
(2010年1月6日就任)
Sjafrie Sjamsoeddin (58歳、南スラウェシ州出身)
ジャヤ軍管区司令官、退役軍人(陸軍)
法務・人権副大臣
(新任)
Denny Indrayana (38歳、東カリマンタン州出身)
大統領特別補佐官、司法マフィア撲滅特別チーム事務局長、学者
大蔵副大臣
(2010年5月20日就任)
Anny Ratnawati (49歳、ジョグジャカルタ州出身、女性)
大蔵省財政教育訓練庁長官、大蔵省予算総局長、学者
大蔵副大臣
(転任)
Mahendra Siregar (41歳、ジャカルタ州出身)
商業省副大臣、経済担当調整大臣府審議官、インドネシア輸出入銀行頭取、官僚
エネルギー・鉱物資源副大臣
(新任)
Widjajono Partowidagdo (60歳、中ジャワ州出身)
バンドゥン工科大学工学部教授、国家エネルギー会議(DEN)委員、学者
工業副大臣
(2009年11月11日就任)
Alex Retraubun (51歳、マルク州出身)
海洋・漁業省海洋・海浜・小島総局長、官僚
商業副大臣
(転任)
Bayu Krisnamurthi
農業省副大臣、経済担当調整大臣府審議官、官僚
農業副大臣
(新任)
Rusman Heriawan (59歳、西ジャワ州出身)
中央統計庁(BPS)長官、官僚
運輸副大臣
(2009年11月11日就任)
Bambang Susantono 
経済担当調整大臣府審議官、インドネシア運輸協会(MTI)理事長、官僚
公共事業副大臣
(2009年11月11日就任)
Hermanto Dardag (54歳、東ジャワ州出身)
公共事業省道路整備総局長、官僚
保健副大臣
(新任)
Ali Ghufron Mukti (49歳、東ジャワ州出身)
ガジャマダ大学医学部学部長、学者
教育・文化副大臣(教育担当)
(新任)
Musliar Kasim (53歳、西スマトラ州出身)
国家教育省監察総監、アンダラス大学学長、学者
教育・文化副大臣(文化担当)
(新任)
Wiendu Nuryanti (52歳、ジョグジャカルタ州出身、女性)
ガジャマダ大学工学部教授、学者
宗教副大臣
(新任)
Nasruddin Umar
宗教省イスラーム社会育成総局長、シャリフ・ヒダヤトゥラー国立イスラーム大学教授、学者
観光・創造経済副大臣
(新任)
Sapta Nirwanda (57歳、ランプン州出身)
観光・文化省マーケティング総局長、官僚
行政効率化・官僚改革担当副大臣
(新任)
Eko Prasodjo (41歳、リアウ群島州出身)
インドネシア大学社会政治学部教授、内務省地方自治監督評議会(DPOD)委員、学者
国家開発企画担当副大臣
(2010年1月6日就任)
Lukita Dinarsyah Tuwa (50歳、西ジャワ州出身)
国家開発企画庁審議官、官僚
国営企業担当副大臣
(新任)
Mahmudin Yasin (57歳、ジャカルタ州出身)
国営企業担当国務大臣府次官、国家銀行再建庁(BPPN)副長官、官僚