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2008年台湾総統選挙と国連加盟および復帰公民投票

アジアの出来事

台湾

地域研究センター 竹内 孝之
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3月22日、台湾総統選挙と国連加盟および復帰に関する公民投票2件の投票が行われた。結果は、馬英九、蕭萬長ペアが圧勝し、8年ぶりに中国国民党(以下、国民党)へ政権が戻ることとなった(表1)。民進党の謝長廷、蘇貞昌ペアは終盤に追い上げを図り、また国民党立法委員による謝陣営選挙本部への侵入や中国チベットでの弾圧事件など馬陣営に不利となる事件も起こったが、逆転勝利には至らなかった。

表1. 2008年総統選挙結果
  得票数 得票率
馬英九、蕭萬長ペア(国民党) 7,658,724 58.45%
謝長廷、蘇貞昌ペア(民進党) 5,445,239 41.55%
(出所)中央選挙委員会

今回の選挙結果の背景には、2000年に国民党からの政権交代を実現させた民進党の陳水扁政権に対する不満や、政党間抗争の泥沼化に対する嫌気がある。陳政権では立法院(議会)の多数を野党の国民党が握り、政策運営に支障をきたした。それでも陳総統は前回2004年の総統選挙では辛うじて再選を果たした。しかし、その後、閣僚や高官の汚職事件が相次いだ(約20件)。陳総統自身も「機要費」(用途に制限はないが、必ずしも機密扱いではない支出枠)流用疑惑の容疑者となり、総統特権により不起訴処分とされたが、総統夫人や総統秘書らが起訴された。また、台湾経済そのものは必ずしも不調ではないが、市民の景気観が芳しくないことも不満の一つだと言われる。

今回の選挙では投票率が76.33%と前回(80.28%)よりも下がった。しかし、離島や東部を除き、馬候補が優勢な県・市では投票率が必ずしも低下せず、前回より高くなった地方すらある。つまり、今回の選挙に対する有権者の関心は低下せず、むしろ高かったのではないか。しかし、民進党支持者の中には、民進党政権の継続を積極的に望むことが出来ず、棄権した有権者が多かったと推測できる。

同時に行われた国連加盟および復帰を問う公民投票は投票率が50%に満たず、2件とも成立しなかった(表2)。台湾名義での国連加盟については民進党が提案し、中華民国などの名義による国連復帰については国民党が民進党支持者を切り崩すために対抗して提案した。1月の立法委員選挙でも(陳政権を標的にした)腐敗追及および(国民党を標的にした)政党不正資産追及の是非を問う2件の公民投票が実施されたが、国民党は前者の提案者でありながら、2件ともボイコットした。今回の公民投票についても国民党は1月と同様にボイコットを検討した。しかし、民進党が「馬候補は台湾人としてよりも、中国人としてのアイデンティティが強い」と批判していたため、仮に2件ともボイコットすれば、馬候補のイメージが損なわれる恐れがあった。そこで、国民党は国連復帰投票への言及を避けつつ国連加盟投票のみ棄権するよう有権者に呼びかけ、また立法院において「国連復帰を希望する」との決議案を提出した。これらの事情から、国民党支持者の多くが公民投票を2件とも棄権した結果,低い投票率に留まったものと思われる。

表2. 公民投票2件の結果
  賛成 反対 投票率
国連加盟投票
(民進党案)
5,529,230
(94.01%)
352,359
(5.99%)
35.82%
国連復帰投票
(国民党案)
4,962,309
(87.27%)
724,060
(12.73%)
35.74%
(出所)中央選挙委員会

なお、今回の選挙および公民投票については、アジ研ワールドトレンド6月号で詳述する予定である。
2008年3月