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総選挙でタイの政治は安定するのか?

アジアの出来事

タイ

地域研究部 重冨 真一
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来る12月23日、タイでは下院議員の総選挙が行われ、クーデターで立てられた現政権から、選挙で選ばれた政権への移行がなされる予定である。

民選のタクシン政権を暴力で倒して成立した現政権は、あくまで民主的に選ばれた政権へと繋ぐショートリリーフとして自らを正当化した。同時に後続政権が自らに牙をむくことだけは防がねばならない。そこで権力を握る間に、前政権を支えた体制を徹底的に破壊する必要があった。まずタクシン元首相の不正を追求し、その個人人気を落とす。一方では、裁判を通じて旧与党、タイラックタイ党を解党に追い込んだ。巨大政党が出現しないように、選挙制度も小選挙区制から中選挙区制に変えた。

そしていよいよ総仕上げの下院選挙がはじまる。しかしタイラックタイ党系政治家の一部は人民の力党(People Power Party)に集まって、公然とタクシン路線の継承を訴えている。また一部は「中道」と称して、いくつかの新しい政党—中道主義党(Matchimatipataya Party)、報国党(Puea Pandin Party)、タイ連帯国家開発党(Ruamjaithai Chartpattana Party)、王民党(Pracharaj Party)—を立ち上げた。

今回は中選挙区制で、しかもタイラックタイ党の残党が分裂したために、ひとつの政党が議席の過半数を占めるような結果にはならないであろう。下院の総議席は480(中選挙区400、地方別比例代表80)で、人民の力党とタクシン政権下の最大野党、民主党(Democrat Party)とが150議席前後で競い合うと予想される。あとの議席は、国民党(Chart Thai Party)と上記の新「中道」政党で分け合うことになろう。これらの政党は、はっきりした政治的理念に導かれたものではないから、どこが第1党でもそれに付いていこうとするだろう。

人民の力党が第1党になれば、旧タイラックタイ党系政党による連立政権となり、タクシンを追い落とした勢力(軍人を含む)への「仕返し」が始まるだろう。しかしやられる方もだまってはいないから、この間タイを二分した政治闘争がまだ続くことになる。民主党が第1党の場合でも、「中道」政党との連立は不可避で、それらの「造反」を待っている人民の力党が野党にいる以上、政権は安定しないだろう。選挙を経ても、タイ政治の安定はまだ先の話である。
2007年11月