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国有外貨投資会社の設立

アジアの出来事

中国

地域研究センター 今井 健一
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一国の富を外貨準備保有高で測るとするなら、中国は今や世界最大の「金持ち国」である。昨年日本を上回り世界第一位となったのちも、外貨準備保有高の伸びは鈍るどころか一層勢いを増している。今年上半期には昨年通年を上回る2,663億ドル増となり、1兆3,326億ドルに到達した。半年で韓国一国の保有高を超える額の外貨が積み増された計算になる。

史上空前の外貨準備高の膨張の背景には、経常収支黒字と直接投資・証券投資の純流入という実体的な要因と、不正規な資金流入という投機的な要因が交錯しているが、この点については深入りしないでおく。ここで採り上げたいのは、突然「世界一の金持ち国」になってしまった中国が、このお金=外貨を一体どうするのか、という問題である。

この状況で急速に浮上してきたのが、外貨準備の一部を利用して投資活動を行う「国家外貨投資会社[国家外匯投資公司]」の設立である。国有の外貨運用会社設立構想は今年初めから持ち上がっていたが、まだその枠組みが発表されないうちから、米系投資ファンド会社ブラックストーンへの30億ドル出資が決定されるという異例の展開となった。国家外貨投資会社の原資となる特別国債1兆5,500億元(約2,000億ドル)の発行が全人代(国会に相当)常務委員会で承認されたのは、ブラックストーンへの出資発表後1か月が経過した6月末のことである。新会社の設立が政権内部の少数の人々の発案でトップダウン的に決定されたことを如実に物語っている。

本来は特別国債の発行を通じて市中の人民元を吸収し、外貨準備積み上がりによる国内の過剰流動性問題を緩和する役割を担うとされていた新会社の設立意図は、いつのまにか外貨準備の収益向上にすり替えられてしまった。特別国債は市中消化ではなく、中央銀行である中国人民銀行が間接的に購入し、外貨準備を代価に充当する方向で動きつつある。つまり新会社の設立は、通貨当局による元売りドル買いの結果として市中に氾濫する元を吸収するという効果をまったく持たないことになる。むしろ強調されているのは、新会社が国のドル資産の収益性を高めること、つまり金儲けをすることである。

新会社は4%強と目される特別国債の利率を上回る収益を上げなければならないうえ、現在年率4%強の元切り上げペースが続くとして、ドル建てで年率9~10%の利益を稼ぎ出さなければならない。その一方で、これだけのお金があるのだから国家戦略上重要な用途に使われるべきだという議論も政府部内で根強く存在する。中国は過剰流動性の最終的な解決である人民元切り上げの加速という手段を回避し続けるなかで、今回の国有外資投資会社設立は、むしろ事態をさらに複雑化する方向に働きはしないだろうか。「金持ち国」中国の悩みは尽きない。
2007年8月