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返還10周年と第3期政府発足

アジアの出来事

香港

地域研究センター 竹内 孝之
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2007年7月1日、香港は中国への返還10年周年を迎えた。同日、3月に再選された曽蔭権が第3期行政長官に就任した。また、政務司司長(香港政府No.2)には財界出身の唐英年・前財政司司長、財政司司長(同No.3)には公務員出身の曽俊華・前行政長官弁公室主任)が就任した。この両名は曽行政長官の後継者として有力視されている。

さらに政府組織の再編も行われ、政策決定局(中国語では「決策局」)が11局から12局に増えた。従来は同一局が労働政策と産業政策のように方向性の異なる分野を管轄するという問題があったが、今回の改編により解消された。局長人事のうち、最も注目されたのは曽徳成・民政事務局長である。曽局長は曽鈺成・前民主建港連盟(以下、民建連)主席・行政会議メンバーの弟で、1967年の反英暴動に参加して2年間服役した経歴を持つ。民建連は中国当局に近い左派政党で、2代の行政長官を支えてきた。しかし、左派が返還前の旧敵である公務員を直接指揮する局長へ抜擢されたのは初めてである。

中国の影響は香港の経済を支える一方で、民主化の足かせにもなっている。6月6日、呉国邦全人代常任委員会委員長は「香港基本法実施10年記念座談会」の席上、「香港の自治は中央が与えたもの」であり、「香港の政治体制は行政主導である」などと発言した。先立つ5月15日には馬力民建連主席が、1989年の天安門事件での弾圧や虐殺はなかったと発言し、民建連幹部を慌てさせた。公式発言と失言の違いはあるが、民主化を否定した中国当局と香港の民建連の指導者の発言に対して、民主派は反発した。

一方、曽蔭権行政長官は任期中に民主化を実現したいと発言しており、近々その具体案を発表する予定である。政府は2005年12月に暫定的な民主化案を出したが、民主派が反対し、立法会(議会)の3分の2の賛成を得られず、廃案となった。かといって完全な民主化では、中国政府や民建連の同意が得られない。曽行政長官には微妙な舵取りが求められる。

なお、拙著『返還後10年の香港政治』(情勢分析レポートNo.7)もご覧いただきたい。
2007年7月