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韓米FTA交渉の妥結と国内展望

アジアの出来事

韓国

地域研究センター 渡辺 雄一
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昨年6月の開始以来、公式会合だけでも9回行われてきた韓米FTA締結交渉が、難産の末4月2日についに妥結に至った。主な合意内容を見ると、懸案だった自動車で米国側が3000cc以下の乗用車および自動車部品の関税の即時撤廃、韓国側も米国産自動車の輸入関税(8%)の即時撤廃と自動車税制の基準変更(排気量→価格)を受け入れた。米国側の敏感品目である繊維では、対米輸出品の61%相当(輸入額基準)の関税が即時撤廃されるほか、対米迂回輸出(中国など)の防止強化を条件に、原糸基準(yarn forward)による原産地認定も一部品目で除外された。最大の争点となっていた農業分野では、米国産牛肉の漸次関税撤廃(15年)が決まり、BSEの発生を受けて停止していた牛肉輸入の再開にも目処が立つ見通しである。その他農産品(オレンジ、林檎、豚・鶏肉など)でも、韓国側は関税撤廃期間の延長や季節関税、セーフガードの適用で譲歩を余儀なくされたが、コメを開放対象から除外したことは大きかった。また、外交イシューにもなっている北朝鮮・開城工団製品の韓国製認定をめぐっては、別途委員会を設けて継続協議していくことが決まり、南北協力の対外是認に向け一歩前進したといえる。その他、医薬品や金融、放送分野でも韓国は部分的な市場開放に合意したが、全般的に韓国側のほうにメリットが大きい妥結内容といえる。

本来、FTAは貿易・投資の促進や産業競争力の強化・改善といった経済的問題であるが、韓米FTAの場合、これまで政府間交渉や国内説得の過程で、労働・市民・農民団体などの過激な反対運動や抗議デモが目立ち、反米感情も手伝ってひどく政治化してきた。今後は発効に向けて国会での批准如何に焦点が移るが、その過程でもさらなる政治問題化と紆余曲折が予想される。それは、韓米FTAが年末に控える大統領選挙の重要争点の一つに浮上しつつあることと大いに関係する。与小野大の逆転現象のなか、賛成・反対派を問わず各党や議員らは聴聞会の開催や被害層への補完策の準備を通じて民心獲得にすでに動き始めている。今回の交渉妥結を受けて、盧大統領のレームダック化は当面減速するであろうが、韓米FTAの賛否をめぐる国論対立が次期大統領選の動向にいかなる影響を及ぼすのか注目される。
2007年4月