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再燃する首都圏の不動産バブル(2006年12月)

アジアの出来事

韓国

地域研究センター 渡辺 雄一
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銀行の低金利や家計への住宅担保貸出の緩和で市中へ流入した潤沢な資金が、富裕層や庶民の投機熱も受けて再び首都圏の住宅(主に「アパート」と呼ばれる中大型マンション)価格を押し上げている。事態を深刻に捉えた韓国政府は11月15日、現政権下で実に8度目となる不動産対策を発表した。2005年8月31日に打ち出された不動産対策が、総合不動産税など主に保有課税(日本の固定資産税に相当)の強化によって、投機需要の抑制とそれによる価格安定化を狙っていたのに対し、今回の対策は住宅担保貸出の規制強化のほか、首都圏住宅の供給拡大や分譲価格の引き下げといった供給側面にも焦点を当てている。

今回政府が供給調整策に転じたのは、保有課税を高める代わりに取引課税を低めて、投機目的ではない実需中心の売買取引の円滑化と価格沈静を図ろうとした従来の不動産対策が、期待通りの効力を発揮しなかったためである。保有課税の強化によって今年度の課税対象者や課税額は大幅に上昇したにもかかわらず、住宅を担保に受けた融資を増税分に充てようとする保有者が続出した。また保有課税を高めたとはいえ、取引課税のコストのほうがいまだに高い不動産税制の構造も、資産保有のインセンティブを高めた。保有課税の増税策そのものに対する反発も、純粋な居住目的の保有者を中心に根強く残っている。

ここまで首都圏マンションへの投資や購入に駆り立てる韓国民の「群集心理」とは何か。一つには、韓国では不動産の「不敗神話」がいまだ健在なことがあげられる。首都圏を中心に広く浸透した価格上昇への期待感が転売差益や賃貸での運用益の魅力を形成するため、首都圏の住宅は格好の投機対象となっている。もう一つには、とりわけソウル江南地域などに根深く息づく高い教育熱がある。有名進学校や予備校、英語塾などが数多く密集するこれらの地区には「教育環境が最も大事」と考える韓国の親たちが大挙押し寄せることで実需面からも価格高騰に拍車がかかっている。不動産価格の沈静化には、まずは需要者の過剰な期待心理の緩和と教育熱の鎮静化が課題なのかもしれない。
2006年12月