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EUとのFTA締結に向けて動き出す

アジアの出来事

インド

地域研究センター 井上 武
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2006年10月13日、インドと欧州連合(EU)はヘルシンキで第7回EU-インド首脳会議を開き、貿易と投資の拡大に向けた自由貿易協定(FTA)の交渉を開始することで合意した。インドはなぜEUとのFTA締結に向けて動き出したのか、その背景と今後の動向を検証する。

インドは2000年3月にスリランカと二国間FTAを発効し、2006年9月にはタイとアーリーハーベスト品目の関税引下げが完了した。また2006年7月には他の南アジア6ヶ国と南アジア自由貿易地域(SAFTA)を開始し、さらにシンガポールとは2005年8月に包括的経済協力協定(CECA)を発効させ、2006年12月には日本との間でも経済連携協定(EPA)締結に向けて交渉を開始することで合意している。

このようにインドによるFTAの締結と発効に向けた動きはここ2~3年で顕著になっているが、インドにとって最大の貿易相手であるEUとのFTA締結は特に重要であると考えられる。インドの総貿易額に占めるEUの割合は近年他地域との貿易額の伸びに伴い低下傾向にあるが、依然最も大きなシェアを占めており、商品貿易額は輸出入ともに2002年以降毎年20%近く増加している。またサービス貿易も双方向で拡大を続けている。

インドとEUの緊密な経済関係が両者間のFTA締結に向けた動きを促進したことは間違いないが、ここに来て交渉開始が合意された背景には多国間交渉からFTA重視に転換したEUの通商政策が強く影響している。実際、インドは数年前から経済界を中心にEUとのFTA締結を提言してきたが、EUは世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉を優先する姿勢から二国間貿易協定には消極的であった。しかしドーハ・ラウンド交渉の停滞に伴い両者の思惑が一致した今日、インドとEUのFTA交渉は大きく前進することが予想される。FTAに際しては財・サービス貿易や投資など幅広い項目について交渉が予定されている。とりわけEUは流通小売や通信サービス業等に対する外資参入規制の緩和・撤廃、そしてインドはITや医療分野の専門家によるサービス輸出の拡大を目指していることから、こうした分野の取り扱いが今後のFTA交渉の推移を見る上で注目される。
2006年12月