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WTOへの加盟を目前に控えて

アジアの出来事

ベトナム

地域研究センター 坂田 正三
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ベトナムの世界貿易機関(WTO)加盟が目前に迫っている。1995年に加盟申請を行って以来11年以上に及ぶ長く複雑な交渉が漸く妥結に至り、11月7日にジュネーブで開催されたWTO一般理事会でベトナムの加盟文書が承認された。国内での批准手続きはすでに終了し、2007年1月11日付で150番目のWTO加盟国となることが決定した。

ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。ベトナムは、1995年のASEAN加盟、1998年のAPEC加盟、2000年の越米通商協定の調印といった段階を踏んで「国際経済への参入」に積極的に取り組んできた。しかし、これらの延長線上と位置づけられてきたWTO加盟は、過去の取り組みに比べ遙かに厳しい交渉を伴うものであった。とりわけ、難航の末に2006年5月に漸く妥結をみたアメリカとの二国間交渉は最大の難関であったといえよう。800ページ以上にも及ぶベトナムの加盟文書は、多数の品目に対する関税率の引き下げ、銀行・金融、流通、通信などを含む広範なサービス分野の段階的な開放を約束するとともに、加盟交渉との密接なリンクの下で、ベトナムがWTOルールに整合的な法制度整備を進めてきたことを如実に示している。

ベトナムがWTO加盟に最も期待するのは外国投資と輸出の拡大、さらにそれらが牽引する高経済成長である。とりわけ外国投資については、2006年の登録資本金額(12月20日までの登録分、新規および拡張投資を含む)が前年比47%増の102億ドルに達するなど、すでにWTO加盟を見込んだ外国投資の波が押し寄せつつあることが特筆される。加盟後も、加盟条件に沿って外資の参入が段階的に自由化されるサービス分野などへの投資が拡大することが期待されている。

他方、懸念されるのは国内経済主体への影響である。一部の輸出企業などが来るべき変化に備えて着々と準備を整えてきたのに対し、大多数の国内企業の間ではWTOに関する関心が最近になって漸く高まってきたという段階にあり、対応の遅れが目立つとされてきた。しかし、制度・実態の両面において昨今のベトナム経済の変化は急速である。国による補助が削減され競争的な市場に移行していくなか、自らの力で生き残りの道を模索しなければならないことに多くの企業は気づき始めている。企業それぞれの競争力のみならず、急速に深まる海外との関係を活かすことができるかどうかが発展の鍵を握る時代に突入しようとしている。
2006年12月