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国費流用で総統夫人が起訴、陳水扁総統への辞任要求が再燃

アジアの出来事

台湾

地域研究センター 竹内 孝之
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2006年11月3日、台北地方検察院は、「国務機要費」1480万台湾ドルの流用容疑にて、呉淑珍総統夫人、馬永成元総統府副秘書長、林徳訓総統府秘書らを起訴した。陳水扁総統も呉夫人と共に主犯とされたが、在任中の総統は憲法第25条の規定により起訴できない。施明徳・元民進党主席が9月より陳総統辞任要求運動を始めた(原因となったスキャンダルについては「深刻化する陳水扁総統のレイムダック化」を参照)。ところが、双十国慶節(10月10日建国記念日)式典を妨害したことから、馬英九台北市長は集会を許可しなくなり、同運動は下火になった。だが、今回の起訴により、再び辞任圧力が高まりつつある。

5日、陳総統は記者会見を開き、「機密費が不足し、領収書の偽造を迫られた。だが、私的流用は一切なく、外交上の支出だ」と釈明した(実は、陳総統自ら「国務機要費」の一部を機密扱いから、領収書が必要な項目に改め、自分の首を絞めたようである)。また「検察への説明や捜査協力も怠っておらず、突然の起訴は意外だ。しかし、仮に一審で有罪判決が出れば、控訴を待たずに辞任する」と表明した。

野党陣営は3回目の総統罷免案を立法院(国会)で提出する(24日ごろ採決の予定)。また、台北市長として辞任要求運動と距離を置いた馬国民党主席も、施明徳とは別途、党として罷免実現まで街頭集会を行うことにした。台湾団結聯盟は過去2回の総統罷免案で無効票を投じたが、今回は賛成に回る方針だった。しかし、陳総統の釈明後、世論を見守るために態度を保留した。民進党は党員である呉夫人らを中央評議会での審理にかけることを決定した。だが、同党の一部立法委員は、特権で訴追を免れた陳総統も党内処分を諮るべきだと主張している。また陳総統に休職や辞任を求める若手議員もいる。先行きは不透明だが、今回は罷免案可決の可能性が若干高まっている。

今後は、(1)国民党と親民党の関係、(2)総統(大統領)制に関する議論も焦点になろう。親民党は10月より、宋楚瑜主席の台北市長選出馬(国民党からは郝龍斌が出馬)や、国民党資産追及法案審議への支持により、国民党を揺さぶって野党陣営の主導権(あるいは有利な条件での政党合併)を狙っている。また、民主化以後の台湾では、国民大会の廃止や立法院定数半減など、政治不信が憲法改正を促してきた。今回の事件も総統(大統領)の権限縮小につながる可能性がある。そうなれば、次期総統の有力候補とされる馬国民党主席にも痛手となろう。
2006年11月9日