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エネルギー戦略とガスパイプライン

アジアの出来事

パキスタン

地域研究センター 牧野 百恵
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人口1億5500万人を抱え、近年7%前後の経済成長を維持しているパキスタンでは、エネルギー需要が年平均11%増で推移しており、現在の高成長を続けるためにも、エネルギー源の確保が喫緊の課題となっている。現在、パキスタンのエネルギー供給は、天然ガスが50%、石油が29%、水力が11%、石炭が8%、原子力が1%を担っている。第2位の石油はその8割以上を輸入に頼っているが、総輸入のうちでも22%と最大のシェアを占め、近年の国際石油価格上昇を主要因の一つとして、貿易収支赤字が年平均200%近くのペースで悪化していることもあり、石油以外の供給源へのシフトが模索されている。

パキスタン国内には埋蔵量豊かなガス田があり、現在国内で消費されている天然ガスは国内産である。今後、石油依存度を減らすため、すでに最大のエネルギー供給源である天然ガスへの依存が強まると考えられるが、問題はガスの安定供給が確保できるかどうかである。ガス田があるバローチスタン州のスイ地区では、国営のスイ南ガス公社(SSGC)やスイ北ガスパイプライン公社(SNGPL)のパイプライン設備への攻撃が、反連邦政府の部族武装組織によって繰り返されており、現実に都市部へのガスの供給が止まることもしばしばある。

一方で、イランや中央アジアからの供給源確保も模索されている。とりわけ、2006年末までの最終合意を目指して調整が進められているイラン=パキスタン=インド(IPI)天然ガスパイプラインは、2600キロに及び総工費が70億ドルと推定される一大プロジェクトである。IPIパイプライン実現に向けても、通過地域であるバローチスタン州の治安維持、印パ関係の安定、核兵器開発を進めるイランの関与に反発するアメリカの理解をいかに得るか、と課題は山積している。2006年に入り、アメリカとの外交悪化を危惧したインドの参加が危ぶまれるようになったこともあり、4月30日には、イランとパキスタンの間でIP二国間構想が持ち上げられるに至った。この場合、パキスタンは天然ガスの入手は可能だが、年間6億ドルと推定されるインドからの通過料は放棄することになり、財政面への影響が大きい。エネルギーの供給源確保は、持続的な経済成長に不可欠であり、今後の動向が注目される。
2006年10月