skip to contents.

和平プロセス、10月初旬に再開

アジアの出来事

スリランカ

地域研究センター 荒井 悦代
PDFpdf(19KB)

2006年2月以来停滞していたスリランカ和平プロセスが、10月初旬に再開されることとなった。

2002年に締結された停戦合意に基づき6回の対話がもたれたものの、2003年4月に、政府が停戦合意の内容を実現しないことを理由にLTTE(タミル・イーラム解放の虎)が和平プロセスから撤退して以降、「戦争ではないが、平和ではない(no war no peace)」と言われる状態が続いていた。2005年11月に和平消極派と言われるマヒンダ・ラージャパクセ大統領が就任して以降は、各地で衝突や爆発事件が起こり、多くの犠牲者を出した。2006年7月以降の政府軍側の死者は400人(政府軍発表)、国内避難民は22万人(国連発表)、インド南部への難民も2006年に入ってからだけで13,000人、2002年以降、行方不明者数は5,666人に達していた。

7月20日から、灌漑地域に水を供給する水門がLTTEによって閉鎖されたことをきっかけとして、東部を中心に激しい戦闘が始まった。8月11日からは北部にも戦闘が拡大し、政府軍は空爆も実施するなど実質的な戦争状態となっていた。

さらにEU諸国が5月末にLTTEをテロ集団に指定したことから、停戦合意以降スリランカに駐在していた停戦監視団のうちEU諸国メンバーが8月に撤収したことで、停戦合意は事実上崩壊したと見られていた。しかし9月12日、「話し合いを持つことで双方の合意が得られた」と東京会議共同議長国(EU、ノルウェー、アメリカ、日本からなる)による発表があった。

和平プロセス再開の可能性が出てきたが、楽観はできない。スリランカ政府は共同議長国発表の中の「双方は無条件に話し合いに合意した」という部分について否定している。政府は9月初旬に、LTTE支配地域内の重要拠点である東部地域を総攻撃によって奪取している。LTTEは戦略上の撤退だとしているが、この敗北がLTTEに交渉再開を決意させたことは間違いない。しかしLTTEはこれを、それぞれの支配地域を定めた2002年の停戦合意違反であるとして、猛烈に批判しており、LTTEが和平プロセス再開の条件としてこの地域の返還を求めることは必至だ。政府側としても多くの犠牲を伴って奪還した重要拠点を、みすみす手放すはずがない。さらに政府は、話し合い期間中を利用して戦力を強化するのはLTTEの常套手段であると、LTTEを公に批判するなど両者の軋轢は高まっている。
2006年9月