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韓米FTA交渉が始まる

アジアの出来事

韓国

地域研究センター 渡辺 雄一
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今年2月の交渉開始宣言以降、数回の予備交渉を経て、6月より本格的な韓米FTA(自由貿易協定)交渉がスタートした。農業・繊維・検疫などを除く11分野で協定文を作成した第1回交渉(6月)に続き、第2回交渉(7月)では一般商品(農産物と繊維は除外)の開放時期を5段階に分けた関税撤廃案で両政府は一致、農産物や繊維分野でも市場開放案を一括交換することで合意した。電気・通信・放送など公共性の高いサービス分野では、開放除外リストの交換を行った。市場開放の大枠は固められつつあるが、個別交渉では依然難題が多い。以下は主な交渉の争点である。

・ 農業
韓国:コメ市場開放拡大に対し開放時期の延長、セーフガード、関税割当等を要求。
米国:早期市場開放で譲らず。

・ 繊維
韓国:米国市場での中国製品の急増もあり、早期関税撤廃を要求。
米国:原産地規定やセーフガード等の保護措置適用を要求し、早期開放には慎重姿勢。

・ 医薬品
米国:韓国が今年9月より施行予定の「薬価策定適正化方案」(費用対効果の高い医薬品に限り健康保険の給付対象とする保険財政健全化政策)に対し、自国製新薬が韓国市場から駆逐されるとして反対。

・ 自動車
韓国:関税撤廃による米国産日本車の迂回輸入増大を懸念し、部品等の原産地規定強化を要求。
米国:関税撤廃、及び非関税障壁として自動車税制の賦課基準変更(排気量から価格・燃費へ)を要求。

・ 開城問題
韓国:北朝鮮の開城工業団地に進出する自国企業の製品を「韓国製」と認定するよう要求。
米国:「韓米間の問題でない」として却下。

韓国内の反応は、電子・機械類・自動車などの産業界が肯定的に評価している以外は、労組や農民・市民団体などは公聴会を中断させるほど猛烈に反発している。実際、KIEP(対外経済政策研究院)が推計した韓米FTAの経済効果でも、短期的に実質GDPを0.42%押し上げる反面、雇用面では0.51%の減少という結果が出ている。

準備不足や交渉の拙速さが批判されるなか、韓国政府はなぜこの時期に韓米FTAを推進するのか。中国の台頭や日本の景気回復を受け、国内産業の対外競争力強化に急ぐ面もあろう。また、軍事同盟を巡り近年ぎくしゃくとする韓米関係の打開のためにも、盧武鉉政権の「成果」作りの一つとしたい政治的思惑も見え隠れする。北朝鮮ファクターを抱えるなかで、国内世論や利害関係者の説得もいかに行っていくのか、今後も多難な交渉過程が予想される。
2006年8月