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憲法裁判所、4月の下院選を無効とし再選挙の実施を裁定

アジアの出来事

タイ

地域研究センター 東 茂樹
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憲法裁判所は5月8日、国会オンブズマンから申立のあった4月2日の総選挙について、(1)下院解散から投票日までの期間が37日と短い、(2)投票用紙記入台の向きが前回と逆で投票の秘密が守られなかった、との理由で違憲判決を下した(判事8:6の多数意見)。またやり直し選挙を勅令公布後60日以内に実施するよう裁定している。

4月の総選挙は、約7割の選挙区で与党タイラックタイ党の立候補者のみで、白票が相当数にのぼったこと、与党候補の得票数が規定に達しない選挙区で再選挙が繰り返されたため、国王が裁判官の認証式において選挙の有効性に疑問を呈していた。これを受けて、憲法裁判所、行政裁判所、最高裁判所の3長官は会合を開き、選挙関連の事案を迅速に審理すること、3裁判所が整合性のとれた判決を下すことで合意し、憲法裁の選挙無効判決へとつながった。政治家が収拾できない政局の混乱に、国王の発言を受けて司法が大きな役割を果たすことになったのである。

政局のつぎの焦点は、選挙管理委員会委員の去就と再選挙の日程に当てられている。野党や市民運動団体から与党寄りとの批判を受けている選挙管理委員会は、次回総選挙の信頼性が保てないとして司法当局からも辞任を勧告されている。しかし選挙委員4人(定数5名、欠員1名)のうち、1人が辞任したにすぎない。委員すべてが辞任すれば、憲法の規定に従い最高裁が新たな候補者を推薦し、上院が投票で選出する。選挙日程の決定に際しては、立候補者の90日前の政党所属という憲法の規定が議論となっている。同規定が適用されると、政党の鞍替えや新党の結成による出馬ができないため、できるだけ選挙日程を先送りするか、同規定を適用しない方法を探る動きも出ている。

2月下旬の下院解散から暫定政権が続いているが、政治空白の根本原因が現行憲法の規定にあるため、政治状況の正常化には早急な政治改革の実施が求められている。
2006年5月