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TICAD IV

アフリカ情勢

地域研究センター アフリカ研究グループ長 武内 進一
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この記事は2008年5月23日にデイリープラネット(CS放送)「プラネットVIEW」でオンエアされた『TICAD IV』(武内進一研究員出演)の内容です。

TICAD IVとはアフリカ開発をテーマとする政策フォーラムで、1993年に第1回開催以来5年に1回ずつ開催されています。外務省からは「日アフリカサミット」と呼んでほしいとの提案があるように首脳サミットの性格も強く、2003年のTICAD IIIにはアフリカ23カ国から首脳が参加しました。今回も多くの首脳参加が見込まれています。

Question今年は7月の北海道洞爺湖サミットでもアフリカ開発の問題が取り上げられることになってい ますが、日本が主宰する国際会議で、アフリカの問題が主要なテーマとして取り上げられる理由はなぜでしょうか?

Answerアフリカ、特にサハラ以南アフリカ諸国に多くの問題が集中し、この問題の解決が国際社会全体の課題だと捉えられているからです。特に深刻だと考えられているのは、貧困や武力紛争に関わる問題です。こうした問題を放置することは道義的に許されません。特に911事件以降は、先進国の安全保障という観点から見ても放置するのは危険なことだという認識が高まりました。アフリカにアフガニスタンのような国が増えることは、世界全体にとってゆゆしき問題だという認識が高まっています。こうした点で、アフリカの問題が国際社会全体の問題と考えられ、日本にもリーダーシップが求められているのです。

Question会議では、具体的にどのような点について話し合われるの でしょうか?

AnswerTICAD IVの会議の議題として、

  1. 経済成長をいかに促進していくか
  2. 貧困問題の解決(ミレニアム開発目標の達成)に向けてどのような策を講じていくか
  3. 紛争の解決や予防のためにどうすべきか
  4. 環境・気候変動問題にどう対処するか

といったテーマが挙げられています。

TICAD IVのテーマ

Questionアフリカというと、貧困にあえぐイメージがありますが、経済はどのような状況にあるのでしょうか?

Answerアフリカは1990年代半ばから経済成長が続いています。この図から、

アフリカ諸国の平均一人当たりGDP

出所)World Bank [2007] Africa Development Indicators 2006.

  1. 北アフリカとサハラ以南アフリカで国民所得水準にかなり差があること
  2. サハラ以南アフリカでは、1970年代半ばから1990年代半ばにかけてのほぼ20年間にわたり、一人あたり所得が増えなかった

ということが分かりますが、アフリカの経済危機のイメージは、後者によるものです。

ここ10年程度はサブサハラアフリカ諸国も成長傾向にあります。そのエンジンは資源、特に石油の輸出です。資源価格の上昇に呼応して資源開発が進み、その輸出が経済を押し上げているのです。

Questionアフリカは経済成長の軌道に乗ったとみてよいのでしょうか? 

Answer貧困の大陸といったステレオタイプは捨てるべきですが、ことは簡単ではありません。 というのは、以下のような点が考えられるからです。

  1. 資源輸出に牽引された成長だけに、資源価格の変化に左右されやすい。資源価格が暴落すれば簡単に経済危機に陥る。
  2. 資源に代わって経済成長を牽引する産業、特に製造業が成長していない。アフリカでは一定の技術力をもった労働力がなお少なく、賃金水準がアジア諸国に比べて高い。したがって、製造業が国際競争力をもたない。南アフリカを除くと、サブサハラアフリカ諸国では、鉱業(マイニング)以外に有望な産業がなお少ないのが現状。
  3. 農業の基盤が弱い。アジア諸国では、高度成長の前提として「緑の革命」があった。アフリカでは、農業生産性が他の地域に比べて非常に低い。

Questionミレニアム開発目標の達成が危ぶまれているようですね。

Answerミレニアム開発目標とは、2000年に国連ミレニアムサミットの場で、世界の指導者が貧困撲滅のための取り組み強化を公約し、そのために掲げた8つの目標です。ミレニアム開発目標

それぞれの目標に関して具体的なターゲットが設定され、地域ごとに現状と達成見通しが公表されていますが、サハラ以南アフリカ諸国の達成率は世界で最も遅れています。

例えば、目標1では、「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を1990年と比べて半減させる」というターゲットが設定されていますが、サハラ以南アフリカ諸国では、1990年代にはむしろこの比率が増え、人口の半分(1999年段階で約3億2千万人)が1日1ドル未満で暮らしているという統計もあります(国連開発計画『人間開発報告書2003-ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて』2003年、古今書院、p.51.)。

近年の成長は、この点でプラスの効果を持ちますが、資源依存の成長が貧富の格差を広げているとの指摘もあります。確かに石油に依存した成長の場合、アフリカのように国の人口規模が大きいと国民の一部しかその富を享受できず、格差が広がる可能性は高くなります。

QuestionTICAD IVのテーマとして、平和の定着がありますが、アフリカの紛争問題の現状はどうなっているのでしょうか?

Answerアフリカで深刻な武力紛争が頻発したのは1990年代です。最近でもソマリアやスーダン(ダルフール)など紛争が続いている地域はありますが、全体としては平和構築をどう進めるかが大きな課題になっています。

この点で重要なのは、ガバナンスをどのように改善するかという問題です。ガバナンスとは、国の統治のあり方といった意味で、政府が言論や報道の自由を保証し国民に説明責任を果たしているか、税金の徴収や市場規制などに関して効率的な統治が行われているか、法の支配が確立されているか、汚職の統制はどうか、といった点で評価されるものです。こうした観点で見ると、アフリカのガバナンス指標は他地域に比べて低く、1990年代に紛争が頻発したのは、それ以前のガバナンスがきわめて悪かったことが影響していると言えます。

Question環境や気候変動についてアフリカ開発という観点から見た場合、何がポイントになるのでしょうか?

Answerアフリカでも、最高峰キリマンジャロの氷河が溶け出すなど、気候変動の影響は表面化しています。昨年はアフリカ中部の広い地域が大洪水に見舞われました。

気候変動から最もネガティブな影響を受けるのは、それに対応する蓄えや技術がない地域です。アフリカでは、ほとんどの地域で灌漑が存在せず、農業は天水だけに依存しています。したがって、少しの天候の不順が深刻な食糧不足をもたらす危険があるのです。

Question最近は食糧価格が高騰し、政治不安につながっているようですね。

Answerコメ、小麦、トウモロコシなど、アフリカ諸国の主食の国際価格が大幅に上がり、エジプト、セネガル、コートディヴォワール、カメルーンなど、多くの国で暴動や抗議デモが起きています。

食糧価格の高騰は、中国やインドなどの経済発展やバイオ燃料の開発によって、穀物への需要が高まったこと、サブプライムローン問題によって投機資金が株式・債券市場から商品市場へ流れ込んだことなどによって引き起こされています。

一方、アフリカでは労働人口の多くが農業に従事しているにもかかわらず、食糧自給を達成できている国が少なく、特に都市部の食糧を賄うための食料輸入が常態化しています。輸入食糧品の高騰が、都市で暴動を引き起こす原因はここにあるのです。

Questionなぜ食糧自給ができないアフリカ諸国が多いのでしょうか。

Answer高収量品種の導入が遅れているからです。高収量品種は、厳密な水管理や肥料投与をしないと収量が伸びません。アフリカでは、灌漑が発達していないうえに、肥料もほとんどが輸入のため農民にとってはなかなか手がでません。農村部で農民が利用できる金融制度もあまりありません。こうした理由から、高収量品種が農民の間にあまり広まらず、生産量が伸びていないのです。

Question日本が取り組むべき点はどんなことでしょうか?

Answer成長、ガバナンス、農業の3つの点です。

経済成長には正の面、負の面があります。正の面に関していえば、ビジネス・マッチングに向けた努力が必要です。進出する企業がCSRなどの観点から、貧困やエイズといった負の側面に貢献することが望ましいです。また、それに対するサポートも望まれます。

日本が紛争解決に直接関わるのは難しいでしょうが、ポスト紛争国や紛争が起こっていない国を含めて、ガバナンス改善に向けた取り組みは、紛争予防と呼ぶことができます。政治的な説明責任を高めること、効率的な政府を目指すこと、汚職をなくすことなど、いずれも難しいことですが、他のドナーと協調しつつ努力を続けるべきでしょう。

農業支援は喫緊の課題です。日本は経験もあり、やるべきことは多いでしょう。緊急措置としては食糧援助も重要ですが、工夫と中長期的視点をもって取り組むことが望まれます。援助を現物ではなく資金で供与したカナダの事例や生産者へのインセンティヴ、農業インフラの重要性についての検討が必要です。一村一品運動から流通部門の整備まで、いかに市場につないでいくかが重要です。また、ODA増額は当然の前提となるでしょう。

2008年5月