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調査研究

研究会一覧 2010年度

2010年度 研究テーマ:3-01
インドにおける民主主義と開発—最貧困州ビハールからの報告

概要

インドは独立以来30年以上にわたって経済的な停滞を経験したが、1980年代に入るとその状況は一転して改善する方向へと向かい始め、近年では最も成長著しい開発途上国の一つとして大きな注目を集めるまでの存在となった。その一方で、経済の自由化や急速な経済成長を背景として、カースト間、経済階層間、都市・農村間などの社会の様々な側面で、「格差」の問題がより一層深刻化しているのではないかという懸念が浮かび上がってきている。例えば、主要な州の経済水準(1人あたり純州内生産)を比較すると、ビハール州、ウッタル・プラデーシュ州、マディヤ・プラデーシュ州など一部の州が経済的に大きく取り残されていることが明らかである。これらの後進州の中でもビハール州は特に貧しく、最も豊かなハリヤーナー州との間の経済水準の格差は約4.6倍にまで達している。

このような大きな州間格差が生まれる要因として、(1)各州が政治的な側面において著しく異なった特徴を有していること、(2)連邦制の下で州政府に政治的裁量が許されていること、という2つの点が重要な役割を果たしていると考えられる。つまり、政治の在り方がそれぞれの州によって大きく異なることから、州政府によって採用・実施される政策や制度にも違いが生じるため、結果として、州の間で経済水準の格差が生み出されているという可能性を指摘することができるのである。

本研究の分析対象であるビハール州は、インドの主要な州の中で最も貧しい州であるとともに、社会的亀裂が州政治の在り方に極めて重大な影響を及ぼしている州としても知られている。しかし、2005年の州議会選挙で「開発」と「統治」への取り組みを前面に押し出して州政権に就いたニティーシュ・クマール州首相の登場によって、ビハール州の政治的・経済的な状況が良い方向へ転じるのではないかという期待が大きく膨らんだ。2010年10~11月に予定されている州議会選挙は、過去5年間の同政権の取り組みが有権者によってどのように評価されるのか、そして、インドの最貧困州の経済開発と貧困削減がどのような方向に進んで行くのかという点で大きな注目を集めている。

どのような政治経済的要因によって、一部の州が経済発展から大きく取り残されているのだろうか。この重要な問いに答えるための足がかりとして、本研究では、2010年後半に予定されているビハール州の州議会選挙を取り上げる。政党組織の戦略と有権者の政治意識という2つの側面から調査を行い、ビハール州における政治の在り方の特徴とその変遷を分析することで、経済的停滞の根本的な原因を探る。具体的には、ビハール州の全38県の中から、人口構成(特に、カーストの分布)や過去の投票パターンなどの点で特徴的な県をいくつか選びだし、それらの県の選挙区を中心にフィールド調査を実施する。例えば、人口構成という点では (a) ムスリム人口の多い地域、(b) 指定カースト人口の多い地域、 (c) 特定の中間カースト(ヤーダヴ、クルミー、コエリー)の多い地域などに分析の焦点を当てることが考えられる。このような特徴を有する地域の選挙区に立候補している有力な候補者およびその関係者に対して聞き取りを行い、各陣営の選挙戦略(どのような政策上の争点を重視しているのか、なぜその争点を強調するのか、他陣営の戦略をどのように認識しているのかなど)、選挙区の人口構成と候補者のカーストの関係、候補者の選出方法、候補者の経歴(現職候補であるのか、他党からの離脱者であるのかなど)について詳細な調査を実施する。また、有権者の政治意識および投票行動については、執筆者自身がフィールド調査を行うとともに、現地の研究機関等に委託して、質問票に基づいてサンプル調査を行う。

期間

2010年7月 - 2011年2月

研究会メンバー

[ 主査 ] 湊 一樹
[ 幹事 ] 湊 一樹
[ 委員 ] 中溝 和弥 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科客員准教授)
[ オブザーバー ] 近藤 則夫
[ オブザーバー ] 辻田 祐子
[ オブザーバー ] 町北 朋洋

研究成果

ミッション区分