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論考:アメリカの中東関与の変化とロシアの進出、湾岸への影響

中東レビュー

Volume 5

2018年3月発行

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概要

はじめに

アメリカのオバマ政権は 2011 年から 2012 年にかけて政権首脳や大統領が発表した論文や演 説の中で、リバランスないしはピボットと呼ばれるアジア太平洋地域を重視する政策を打ち出した。リバランス政策によって中東地域からもアジア太平洋地域へのアメリカ軍の再配置が進められることになった。

リバランス政策が発表されてから6年が経過しているが、その間に中東地域ではアメリカ軍のプレゼンスの縮小が進められた。アメリカ軍のプレゼンスの変化は中東地域、とりわけ、アメリカ軍のプ レゼンスが安全保障の大きな部分を占めてきたサウジアラビアをはじめとした GCC 諸国の安全保障に大きな影響を及ぼすものである。本稿では、まずリバランス政策の下での湾岸地域におけるアメ リカ軍縮小の実態とその影響について明らかにし、つづいて2017年に発足したトランプ政権の下でのプレゼンスの変化についても検討する。

リバランス政策が進められた時期にはロシアの中東への関与も強まっている。「アラブの春」の激動に揺さぶられていた中東諸国では域内・域外から軍事支援や干渉を受けることが多かったが、とりわけ目立ったのがロシアの動きである。反政府勢力との間で激しい内戦が続きイスラーム過激派IS(「イスラーム国」)が勢力を拡大したシリアでは、ロシアがアサド政権側に立って軍事介入した。中東地域ではロシアの存在感と影響力が強まっているが、その湾岸地域への影響についても検討したい。

イラクとシリアでは ISの2大拠点であったモスルとラッカが陥落するなど最悪の混乱の時代は過ぎようとしているが、シリアやイラクを含めた中東地域が安定するまでには長い年月がかかるものと思われる。中東地域はまだ変化の渦中にあり安全保障をめぐる環境も今後大きく変化する可能性はあるものの、現段階でのアメリカやロシアなどの中東の安全保障への関与を検討し、今後の湾岸地域の安全保障体制について考える手がかりとしたい。