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論考:革命に抗する支配:エジプト司法権力と権威主義体制の復活

中東レビュー

Volume 5

2018年3月発行

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概要

エジプト政治を扱った本論稿で主に論じるのはホスニ・ムバーラク元大統領の罷免以降の政治過程における司法界の存在である。エジプト司法界はムバーラク体制崩壊後の選挙における不正への介入を通じてエジプト政治の主役に躍り出た。
エジプト司法界はこの間民主化を希求する国内の様々な政治主体やその政治過程に対して絶大な影響を与え続け、他方でムスリム同胞団の統治期には非イスラーム主義的な世俗主義勢力側もまた同胞団の権力行使に対抗するべく司法的な手段に訴えることが度々であった。だがこうした司法の意図的な介入がいかに 2011年以降のエジプトの移行過程を大きく阻害し、やがて軍部が国内の全権力を掌握するに至ったかを分析し明らかにするのが本稿の目的である。
本稿の構成としては、(1)2011年以前のムバーラク体制下におけるエジプト司法界の独立性とそれが体制末期に次第に体制側に取り込まれていく過程を検証し、(2)ムバーラク体制後から同胞団系のムルシー大統領の罷免に至るまでの間に司法界がいかにエジプトの政治プロセスに関与したかを具体的に跡付け、検討を加える。
以上の議論を通じてエジプト司法界が政治的移行過程における各政治勢力間の合意形成をいかに阻害し、選挙の結果に基づいた実効性ある議会制度と政治組織の定着を妨げ、その結果としてエジプトにおける権威主義的支配の復活を助けることになったかが明らかとなるだろう。