中東レビュー
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論稿
ロウハーニー政権下のイラン外交と世界
Arshin Adib-Moghaddam
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2018 年 5 巻 p. 49-56

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抄録

本稿は今年8月に発足したロウハーニー第二期政権のとりわけ外交政策を1979年以来のイラン・イスラーム共和国政権の政治的展開の帰結として位置づけることを目的とするものである。革命後のイランは現在に至るまで西側諸国の新自由主義的な経済政策に対して一定の距離を堅持してきた。またパレスチナ問題に対する明確な対パレスチナ支持の姿勢も今後長期にわたりその基本線が変わることはないだろう。だがそのニュアンスについて可変的であることは、イスラエルを「シオニスト国家」と呼ぶことを慎重に回避し続けるザリーフ外相の発言などからも伺える。

米国における2017年の年初のトランプ政権の発足にも拘らず、イランとP5+1の間のJCPOAがトランプ大統領によって破棄されるという可能性は極めて低い。だが革命以来のイランの非同盟諸国重視の外交姿勢は現在に至るまで続いており、南米のベネズエラ・ボリビア・ブラジル・キューバといった諸国との緊密な関係もロウハーニー政権においても維持されることは明白である。

革命後のイラン外交は決してシーア派重視あるいはイスラーム重視に傾斜することなく、それはあくまでも国益重視の姿勢に貫かれてきた。政策的な選択についても2009年以降は国際社会との協調の方向に大きく転換しているが、ただそれが西側と共通の人権擁護の理念に基づいていないという問題は依然としてある。

いずれにしても5月の選挙の結果、ロウハーニー政権は政策的な合理性・優位性について国民の信託を受けたものと理解すべきである。ある種の市民社会が育ちつつあるイランの国内政治において、いわゆる「保守派対改革派」の単純な図式はますます意味を失いつつある。イランは今後将来的に非イデオロギー的・非革命的な通常の国家として、日本を含む国際社会の一員としての道を歩むことが期待される。

(文責・鈴木均)

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