ロシアの中東政策——プーチン大統領のシリア政策を通じて

中東レビュー

Volume 3

清水 学 著
2016年3月発行
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概 要

はじめに
本稿の課題は、緊迫する中東情勢、特に「アラブの春」以降の展開においてロシアの政策と関与が重要な役割を有する局面が続く中で、その意味と特徴を探ることである。具体的にはシリア問題に対する関与のありかたに今日のロシアの中東外交が集中的に現れていると見られるところから、シリア問題を中心に考える。ロシアは広大で国境を接する国が多いだけではなく、これらの国々が極めて多様な性格を有することから、必然的に地政学的思考が鍛えられている。ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)崩壊後に「地政学」にはロシアにおいて正式な地位が与えられ、ドゥーマ(国会)には常設の地政学委員会を組織されるに至っている。強力な指導権を有するプーチン大統領(1952~)は「地政学」的国益を自覚した外交を展開しており、異なる地域の問題をリンケージさせて有利な局面を創り出そうとする戦略が得意である。