アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
研究ノート
中国における国際開発研究の受容と展開――脱「欧米中心主義」の可能性の一考察――
汪 牧耘
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2023 年 64 巻 3 号 p. 31-60

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抄録

中国の国際開発事業が拡大するなか,多くの中国人研究者がその研究に積極的に取り組むようになり,「独自」の国際開発研究を打ち出している。しかし,彼らによる国際開発研究の中身は十分に解明されていない。それに対して,本稿は,中国における国際開発研究の受容と展開に着目し,国際開発という名を冠した研究・教育機関の設立経緯とその代表的な中国人研究者の研究活動を分析した。その結果,中国における国際開発研究が,欧米の国際開発研究を吸収することから始まり,それに合流したり抵抗したり,さらに差異化を図りながら拡大してきた過程が明らかになった。そこで中国人研究者は自国の国際開発の価値を,「西洋」との差異化と国際的開発目標への接近に求め,実用主義を用いた理念構築と開発効果の実証研究を通して示そうとしているという今日的特徴が形作られた。国際開発研究の脱「欧米中心主義」の考察をする上で,こうした中国の事例は示唆に富む。

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© 2023 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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