論考:ウガンダ北部南スーダン難民居住地の生活と学校
――開発志向の難民政策下における教育提供――

アフリカレポート

No.56

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論考:ウガンダ北部南スーダン難民居住地の生活と学校――開発志向の難民政策下における教育提供――

■ 論考:ウガンダ北部南スーダン難民居住地の生活と学校――開発志向の難民政策下における教育提供――
■ 坂上 勝基、清水 彩花、澤村 信英
■ 『アフリカレポート』2018年 No.56、pp.50-62
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要約

長期化難民の恒久的解決策として、開発志向の難民政策に国際的関心が集まり、同政策下の教育提供の重要性が増している。こうしたなか、開発志向の難民政策を長年実施してきたウガンダに、未曾有の規模で南スーダン難民が流入した。本稿は、難民急増に対応して北部に新設された難民居住地内にある初等・中等学校各1校を対象とし、提供されている教育に難民にとってどのような利益や問題点があるかについて、現地に暮らす学校関係者の視点から捉えなおした。調査の結果、南スーダン難民の生徒や教員の教育意欲が引き出されている点が確認された一方、厳しい教育環境や難民教員を活用しきれていないなどの問題点があることも明らかになった。開発志向の難民政策は、負担削減のため庇護国の公教育の中で難民に教育を行うことが原則であるが、難民の潜在的能力を最大限に活用する工夫とのバランスが重要となる。

キーワード : 難民の教育 開発志向の難民政策 南スーダン難民 ウガンダ 初等中等教育

はじめに

難民の恒久的解決策としては、第三国定住の枠が限られるために、難民の自国への帰還の推進に重点が置かれてきた。しかしながら一次庇護国での難民状態が長期化するケースの増加に伴い、2000年代以降、庇護国での現地統合という解決策、さらにはこうした長期化難民の自立を促し、受入国の負担軽減を目指す開発志向の難民支援1への注目が集まっている[杉木 2007, 31-32; 中山 2014a, 109]。このなかで教育は、難民の潜在的能力を引き出し、受入国の経済・社会開発に貢献する「開発のエージェント」とする役割を期待されている。本稿が事例として取り上げるウガンダ共和国(以下、ウガンダ)は、アフリカ諸国のなかでも難民の受け入れに寛容な国として知られ、隣国から難民を受け入れてきた長い歴史を有する。1998年に「自立戦略」(Self-Reliance Strategy: SRS)を打ち出して以降、開発志向の難民政策を一貫して推進し、法制度の整備も進められてきた2。難民問題は国家開発戦略に組み込まれており、2016年からは、これまでの難民受け入れ戦略をさらに強化した「難民とホスト住民のエンパワーメント」(Refugee and Host Population Empowerment: ReHoPE)戦略3が実施されている。

ウガンダの開発志向の難民政策のなかで、難民の各世帯は「難民居住地」と呼ばれる地区に土地を割り当てられ、政府や援助機関から自立に向けた支援を受けている。2006年制定の難民法によって、難民の子どもはウガンダ人と同等の初等教育を受ける権利が認められ、学校教育を通して「開発のエージェント」となることが期待されてきた。またSRSの導入以来、受入国としての負担を抑えるため、難民とホストコミュニティの住民に対する教育サービスは統合されてきた。ウガンダは現在「初等教育普遍化」(Universal Primary Education: UPE)政策によって初等教育は無償化され、ウガンダのカリキュラムによる無償の初等教育を、公教育システムの一部として難民にも行うことが原則とされている。一方ウガンダは中等教育無償化の推進国であるが、2006年難民法はウガンダ人が受けるのと同等の中等教育を難民が受ける権利までは言及していない。したがって難民居住地内での中等教育は、援助機関からの資金による限定的なものに留まっている[World Bank 2016]。

難民受け入れ政策の「優等生」であるウガンダが、先駆的に実施してきた開発志向の難民政策全般に関する先行研究は多い[例えば、金山 2002; 清水 2000; 杉木 2007; 2011; Kaiser 2006]。ウガンダの難民居住地における教育に焦点をあてた先行研究では、西部の難民居住地を事例とするDryden-Peterson and Hovil[2004]が、難民の子どもの現地統合やホストコミュニティの子どもがアクセス可能な教育の質の向上といった政府の取り組みの効果を示している。また一方、Dryden-Peterson[2006]やClark-Kazak[2010]のように、フランス語を公用語とするコンゴ民主共和国からの難民が、現地語または英語を教授言語とするウガンダのカリキュラムのもとでの学習に困難を感じている問題や、現地統合の限界、難民の若者のウガンダにおける政治的関与を促進する教育の影響力を指摘するものもある。

難民教育で生じる「ギャップ」への対応の一つとして、子どもが避難地で受ける教育と帰還地の教育を一致させる取り組みが、難民教育で一般的には推奨されている[小松 2005]。しかし、自国民に対するものと同じサービスを難民に提供することで受入国の負担軽減を図る開発志向の難民政策下での教育は、こうした流れに真っ向から逆らうものでもあり、受入国の経済・社会開発との整合性を中心に論じられることが多い。このため、難民にとってどのような利益や問題点があるかたちで教育が行われているかに関する実証的研究の蓄積が求められている。

こうしたなか2016年7月、南スーダン共和国(以下、南スーダン)の首都ジュバで武力衝突が勃発し、その後ウガンダと国境を接する南部のエクアトリア地方で激しい戦闘が続いた。その結果、南スーダン難民が大量に流入し、ウガンダは最大の南スーダン難民受入国4となるとともに、アフリカ最大の難民受入国となった。この近年の急激な南スーダン難民流入後の文脈で、村橋[2017]がウガンダ北西部西ナイル地方の特殊性を加味した難民の生活実態に関する研究をすでに行っているものの、学校に基点をおいた先行研究はほとんど存在しない。また最近の研究は、援助機関による難民政策全体の評価の一部のなかで教育の問題が扱われているというだけで、表面的な課題の抽出に終始しているものが多い[例えば、Mathys 2016; Ruaudel and Morrison-Métois 2017; World Bank 2016]。

本稿の目的は、主流化が進む開発志向の難民政策下の初等・中等教育が、これまでの難民教育と比較して、難民にとってどのような利益や問題点があるのか、ウガンダ北部の南スーダン難民居住地を事例として現地で暮らす学校関係者の視点から検証することである。まず北部南スーダン難民居住地における難民への初等・中等教育の状況を概観した上で(第1節)、調査方法と対象を示し(第2節)、調査結果とその考察(第3節、第4節)を行う。

1.ウガンダ北部の南スーダン難民居住地における初等・中等教育

ウガンダにおいて難民問題を統括しているのは首相府(Office of the Prime Minister: OPM)であり、各難民居住地にOPMから派遣された難民居住地指揮官らが、国際連合難民高等弁務官事務所(United Nations High Commissioner for Refugees: UNHCR)と、実施・運営パートナーのNGO、さらには難民福祉評議会(Refugee Welfare Council: RWC)5と連携して難民支援を行っている。2017年10月末時点で、ウガンダが受け入れている140万人以上の難民(庇護申請者を含む)のうち、70%近い95万人以上が南スーダン難民で、18歳未満の子どもが南スーダン難民のなかで占める割合は、約65%と他国からの難民に占める子どもの割合に比べて高くなっている[UNHCR RO Uganda 2017]。杉木[2011]が指摘するように、難民居住地以外の場所に非合法的に居住しUNHCRからの支援の対象外にいる統計に表れない難民もおり、その多くは首都カンパラに住む「都市難民」である。

ウガンダ北部西ナイル地方のユンベ県に位置するビディビディ難民居住地は、2016年8月の開設以降、南スーダン難民が押し寄せ、県人口の3分の1にあたる約27万人が居住するウガンダ国内最大の難民居住地となった6。表1に示すとおり、2017年における難民の初等教育の総就学率(Gross Enrollment Rate: GER)は74.5%、中等教育のGERは21.6%と推定されており、前年のユンベ県におけるGERよりも高くなっている。この背景としては、度重なる紛争の影響により、ウガンダ全体のなかでも教育開発を含む経済・社会開発が遅れた西ナイル地方に位置するユンベ県の各教育段階の就学率が極端に低いことが挙げられる。初等教育の純就学率(Net Enrollment Rate: NER)は51%とGERより10%低く、ユンベ県には学齢期を過ぎて初等学校に通う生徒が多いことも示唆される7

表1 ビディビディ難民居住地とユンベ県の教育施設の生徒数、総就学率(GER)、純就学率(NER)

表1 ビディビディ難民居住地とユンベ県の教育施設の生徒数、総就学率(GER)、純就学率(NER)

(出所)UNHCR資料とMoES[2017]をもとに筆者ら作成。
(注)難民居住地に関する統計は2017年、ユンベ県に関する統計は2016年の値。難民居住地内のNERや男女別のGERに関するデータは得られなかった。

ビディビディ難民居住地とそのホストコミュニティには、就学前教育施設が44カ所、初等学校が37校(UNHCR設置の学校[以下、コミュニティ校]25校と、UPE政策下で政府からの補助金[以下、UPE補助金]を受け取っている公立校12校)、中等学校が5校(すべてコミュニティ校)ある。難民居住地は5つの地区に分かれており、このうち3地区にある初等教育段階のコミュニティ校と、全地区の中等学校の運営はウィンドル・トラスト・ウガンダ(Windle Trust Uganda: WTU)が、2地区の初等教育段階のコミュニティ校運営はフィンランド教会援助基金(Finn Church Aid)が、UNHCRから委託を受け担当している。

2.調査方法と対象校概要

現地調査は2017年8月初旬から約3週間実施し、ビディビディ難民居住地の支援を行っている政府や援助機関関係者から聞き取りを行うとともに、同難民居住地内で最も新しく開設された地区にある初等・中等学校各1校において、学校運営の実態に関する調査を行った。両校とも、新学年が始まった2017年2月にUNHCRが設立しWTUによって管理されているコミュニティ校である。各調査対象校で実施したデータ収集の方法は、以下のとおりである。

A初等学校では全教員の3分の2にあたる24人(男16人、女8人、全員ウガンダ人、副校長2人と教務主任1人を含む)、自らも南スーダン難民である補助教員5人(男)全員に対するインタビュー調査と、6年生3学級中の1学級に属する生徒122人(男67人、女54人、性別に関して無回答だった生徒1人)、7年生53人(男32人、女21人)全員に対する質問紙調査、さらに4年生1人(男)と7年生5人(女)、保護者を含む学校周辺に住む南スーダン難民5人(女)に対するインタビュー調査を行った。B中等学校では、全教員の4分の3にあたる12人(男9人、女3人、うちウガンダ人11人、南スーダン難民1人、副校長1人と教務主任1人を含む)に対するインタビュー調査と、2年生67人(男44人、女23人)全員に対する質問紙調査、さらに1年生1人(女)、2年生3人(女)、3年生4人(男2人、女2人)に対するインタビュー調査を行った。

調査対象となったA初等学校およびB中等学校に関する基本情報は、表2に示すとおりである8

表2 調査対象校の概要(2017年)

表2 調査対象校の概要(2017年)

(出所)WTU資料をもとに筆者ら作成。

3.難民居住地における難民、教員の生活と学校教育事例
(1)南スーダン難民の進学意欲とウガンダの教育へのブランドイメージ

両校で質問紙調査の対象となった生徒の95%以上は、南スーダン南部のエクアトリア地方のなかでも、ウガンダと国境を接する地域の出身者であった。民族はさまざまで、国境を挟んでウガンダにも多くが居住するカクワに次いでポジュルが多く、ククの人々も目立った9。インタビューで保護者の1人は、銃撃から逃れるため主要道路を外れた茂みに隠れながら2日間走って逃れてきた経験を淡々と語っていた。ジュバで始まった戦闘は南部に拡大し、そのため南部から避難してきた難民がビディビディ難民居住地では大半を占めている。また、子どもの多くは親と避難してきたわけではなく、おじ・おばなどの親戚やきょうだいと移動してきていた。単独で移動してきたという子どももおり、A初等学校7年生52人のうち一方の親を亡くした生徒は20人、両親をなくした孤児は11人で、両方をあわせた割合は実に半数以上を占めていた10

また、難民の子どもは生計維持のため農作業や配給品の調達、農業以外の経済活動に従事していることが多かった。このように「難民」であることによる困難な状況が子どもの学習に負の影響を与えていることが明らかになる一方、難民の子どもの高い進学意欲を示す結果が得られた。質問紙調査の対象となった、A初等学校の6年生122人のうち73人(60%)、7年生53人のうち50人(94%)、B中等学校の2年生67人のうち51人(76%)が進学したいと回答している。さらに、ウガンダ西ナイル地方の中心都市アルアに加え、西ナイル地方を含む北部地域全体の中心都市グル、さらには首都カンパラの中等学校に進学したいという声(A初等学校7年生女子)、あるいはビディビディ難民居住地内の別の地区のホストコミュニティにある大学進学コースを有する中等学校の後期中等教育課程(Aレベル)に進みたい(B中等学校3年生男子)といった声が聞かれた。B中等学校には、就学継続のため、アルコール飲料を醸造したり菓子を作って販売するなどの自発的な経済活動によって学校近くに居住するための費用を自ら捻出している3年生女子生徒もいた。

ビディビディ難民居住地の難民の子どもがウガンダの教育機関への高い進学意欲を抱いている理由の一つに、南スーダンにおけるウガンダの教育の相対的に高いブランド力が挙げられる。南スーダンでは独立前から、「南部スーダン」と呼ばれていた地域で一部英語での教育が行われていたものの、アラビア語が教授言語であるスーダン共和国(以下、スーダン)政府から支援のない状態が続いていた[中村 2013]。こうした独立前の状況を受け、エクアトリア地方のウガンダ国境に近い地域に住む人々は、すでに移住している親戚などを頼って優秀な子どもを、公立学校でも初等学校高学年から英語での比較的質の高い教育が受けられるウガンダの学校に送っている11。南スーダンは2011年の独立により、公用語と教授言語がアラビア語から英語へ変更された。しかし、国が再び混乱状態となり、国際社会からの支援を受けながら始まった英語を教授言語とする公教育システム確立に向けた取り組みは道半ばである。こうした現状にある国境地域からの南スーダン難民にとって、ビディビディ難民居住地の学校教育は、ウガンダ経済のなかで自立的に生活を営んでいくための手段以上の価値を有しているかもしれない。

(2)出稼ぎウガンダ人教員主体の不完全な初等教育の提供

ウガンダの開発志向の難民政策下では、統合型の教育サービス提供を行っているため、ホストコミュニティの公立校が難民居住地に住む難民の子どもを受け入れている一方、難民居住地にあるコミュニティ校もホストコミュニティのウガンダ人の子どもを受け入れている。難民居住地全体での正確な統計は得られなかったが、WTU資料によれば既存の公立校では大量に流入する難民を受け入れきれていない。調査地区で初等学校に通う難民生徒のうち、既存の公立校で受け入れることができたのは約15%で、約85%がコミュニティ校に通っていた。また、コミュニティ校の生徒の約92%は難民の子どもで、ウガンダ人12の割合は約8%であった。

A初等学校は典型的なコミュニティ校の一つで、UPE補助金は交付されておらず、援助機関からのリソースに頼った運営がなされていた。学校全体の教員1人あたりの生徒数は約130人で、1、2年生の学級当たりの生徒数は200人を超えており、学校給食の提供はなかった。援助機関が建設したビニールシートで覆われた仮設校舎は破損が目立ち、破損箇所から生徒が許可なく教室を出入りするため授業の統制に支障が生じていた。A初等学校の教員は全員、援助資金によって雇用されたウガンダ人教員で、授業はウガンダのカリキュラム13で行われていた。ウガンダのカリキュラムでは、初等教育の1~3年で英語以外の科目の教授言語を現地語とすることが推奨されているが、難民居住地内の学校では取り決めによりすべての科目の授業が英語で行われていた。

インタビューを行ったウガンダ人教員24人全員が初等教育教員となるために最低限必要な資格(グレード3)を有し、給与の手取りは月額39万シリング(約108ドル)14で、政府雇用教員が受け取っている給与15より若干低めに設定されていた。教員経験が5年以内の20歳代の教員が半数以上で、難民居住地へ来る前はユンベ県や北部地域の近隣県の私立学校で、あるいは公立学校でPTAによって雇用され働いていたという教員が多かった。男性教員の1人は、「以前勤務していた私立学校の給与は月15万シリング(約42ドル)にすぎず、支払い時期や金額も安定していなかった。援助機関というしっかりとした組織での就業経験が今後のキャリアアップにつながる期待もあり応募した」と話していた。

難民教育は、無資格や教育経験の浅い教員によって担われる事例が多く、教員の質の担保が一般的には課題となる[Sesnan et al. 2013]。給与への支出をおさえながらもそれぞれの教員にとってのインセンティブを確保しつつ、ウガンダ人の有資格教員をコミュニティ校に配置することに成功している本事例は、受入国のリソースの柔軟な活用が可能な開発志向の難民政策下の教育ならではの工夫の成果である。しかし、ベテラン教員が少ないなか、経済的理由で一時的に働きに来ている経験の浅い教員が助けあって、コミュニティ校での教育活動をかたちにしているのも事実である。

また、こうした学習環境の問題はともかく、南スーダン難民にとって、難民居住地で提供されている教育を通じてウガンダにおける教育課程の修了証を取得できることは大きな意味を持つ。しかしながら、A初等学校では、初等教育修了試験(Primary Leaving Examinations: PLE)が受けられる生徒数が60人に制限された16ため、校内試験で選抜された生徒60人(すべて南スーダン難民)のみが7年生に在籍してPLEに向けた準備を行っていた。校内選抜にもれた生徒は6年生に編入させられたため、6年生の生徒数は登録上1000人を超えていた。

(3)援助機関による中等教育提供の課題と土地所有権問題

ウガンダの難民教育全体において、2006年難民法の後ろ盾がない中等教育提供が課題となるなか、ビディビディ難民居住地では援助機関が不完全ながらも仮設校舎の学校を全5地区の各地区に1校設立し、無償の中等教育を提供している。こうしたコミュニティ校の一つであるB中等学校では、初等教育でのコミュニティ校同様、援助機関によって雇用された教員によるウガンダのカリキュラムでの授業が行われている。インタビューを行った教員12人全員が前期中等教育教員となるのに必要なディプロマ、短大卒相当の資格であるグレード5を有し、大学を卒業している教員も3人いた。

しかし、開校当初の教員不足による想定外の規模縮小があったためか、B中等学校内には使われていない教室も目立ち、1~3年生の学級しかなかった。教員の数が確保されたため2018年度は4年生の学級が再び作られるということであったが、調査時点では、後期中等教育修了資格(Uganda Advanced Certificate of Education: UACE)試験はもちろん、前期中等教育修了資格(Uganda Certificate of Education: UCE)試験の受験生がいる学年は存在しなかった。今後は、ホストコミュニティの中等学校の寄宿舎を拡張し難民を受け入れる方式での支援に切り替えていく計画があるものの、B中等学校がある地区には近隣にホストコミュニティの中等学校は存在しないという話であった17

B中等学校は地区内にある唯一の中等学校であるにもかかわらず、インタビューを行ったほとんどの生徒が通学距離を問題視しており、なかには毎日3時間かけて歩いて通っていると答える生徒もいた。また、A初等学校を卒業する生徒にとって、近くに居住する土地を割り当てられた親戚がいなければB中等学校への通学は困難だとA初等学校の男性難民補助教員は話していた。問題の背後には大部分の土地の所有権が個人地主にあり、計画的に難民居住地用の土地を提供・区画できない地域特有の事情があることも示唆された18。難民のために農業に適した十分な広さの土地を確保することが困難であるということは、農業による自給自足を目指す難民政策の根幹にかかわる問題であると同時に、難民居住地用の土地が分散していることが、教育サービスの提供における効率的なリソースの分配にも影を落としている。

(4)低賃金で雇用される南スーダン難民補助教員と職務継続に対する期待

ビディビディ難民居住地では難民も正規教員として雇用されているが、その数は非常に限られている。A初等学校には1人もいなかった一方、B中等学校では1人の南スーダン難民男性教員が生物学と化学を教えていた。この教員は、南スーダンの初等学校に5年生まで通った後に移住し、6年生からウガンダの初等学校で教育を受け、修了後は奨学金19を得てウガンダの私立中等学校に進学、4年生まで教育を受けていた。その後南スーダンでの2年のブランクがあったものの、新たな奨学金を得てエチオピアに留学し、教員養成大学の3年課程を修了し、生物学と化学のディプロマを取得していた。難民の将来の帰還を考えれば、難民教員の積極的採用が望まれるが、このB中等学校の教員のような学歴を有した難民は非常に稀であり、ウガンダの公教育と同じ教育を実施する上で資格要件にあった人材が不足しているというのが実情である。

またビディビディ難民居住地では、教員資格はないものの一定程度の教育歴や教員経験を有する南スーダン難民が初等学校の補助教員として、主に低学年の授業での通訳を行うために雇用されている20。A初等学校ではWTUによって雇用された5人(男)の南スーダン難民が補助教員として働いており、いずれも教員資格はなかったが、南スーダンあるいはウガンダでの前期中等教育修了以上の最終学歴と教員歴(6~17年)を有していた。紛争中ウガンダで教育を受けた帰還民が、南スーダン独立後、各学校でボランティア教員として雇用され、英語での教授が可能な政府雇用教員の不足分を補っていることは知られている[澤村・山本・内海 2015]。A初等学校で働く補助教員のなかにも、こうしたボランティア教員が再び難民となり難民居住地での教育に従事している例が見受けられた。

難民補助教員が受け取っている給与の手取りは月額19万シリング(約53ドル)で、WTUに雇用されているウガンダ人教員の給与と比べて約半分の金額にすぎない。にもかかわらず、低学年の授業でウガンダ人教員の英語を南スーダンの現地語やアラビア語へ訳す仕事に加え、100人を超える過密状態の教室での授業や学級担任として出欠や成績の管理を任されるなど、難民補助教員は正規教員と同等かそれを上回る役割を担っていた。また一方で、難民補助教員らはこうした差別的待遇に不満を感じながらも、ウガンダでさらに教員の経験を積みながら現職教員研修を受け、南スーダンにおいても有効なグレード3の教員資格を取得したいという期待を抱いて仕事を続けていた。

4.難民の教育熱と開発志向の難民政策ゆえの教育提供における制約

本稿が対象としているウガンダ北部にある南スーダン難民居住地に避難している子どもの多くは、南スーダン南部に飛び火した戦闘の真っ只なかを逃れてきていた。教育機会を求めて難民が逃れてきたともとれるケニア・カクマ難民キャンプの事例[澤村・山本・内海2017]と、ビディビディ難民居住地ではかなり状況が異なる。しかし、今回の調査で実際に難民の声に耳を傾けるなかで浮かび上がってきたのは、すべてを失いつつも「難民」という立場を得た子どもが、英語での教育に祖国でも定評があるウガンダの学校への進学意欲を持って学び続ける姿であった。子どもだけではなく、南スーダンで教員として働いていた大人も、さらなる教員経験を積み、南スーダンでも通用するというウガンダの教員資格を取得する機会がある可能性に期待を抱いて、薄給にもかかわらず職務を継続していた。コンゴ民主共和国からのウガンダへの難民を事例にしたDryden-Peterson[2006]が指摘したように、母国の言語による教育が行われない場合については、問題点が指摘されている。しかし、今回取り上げた事例では、南スーダンとウガンダの主な教授言語が一致していることに加え、人々が両国間の国境を超えて往還してきた西ナイル地方独特の事情によって、難民の教育意欲が引き出されていた点は興味深い。

一方で、地域の特性も手伝って稀にみる規模でなされた今回の難民流入に対応する緊急援助のなかで、ウガンダの方法は必ずしも機能しておらず、子どもの学習意欲に十分に応えられていない実情も明らかになった。コミュニティ校主体の受け入れとなり大量の教員が必要となるなか、政府雇用の枠からもれ民間セクターで働く安い人材21を活用してウガンダの公立校らしい教育環境を援助機関が作り上げている試みは評価できる。しかしUPE補助金もなく、難民居住地内はOPM管轄であるため教育スポーツ省(Ministry of Education and Sports: MoES)による監視も限定的ななか、コミュニティ校の教育環境は、短期の出稼ぎで各地から集まった若いウガンダ人教員の自発的な努力に支えられているといっても過言ではない。また、公教育の一部として提供するゆえの制約に過度に縛られ、難民教員の活用が妨げられていないか、検討する余地があるかもしれない。難民教員は、難民の子どもの教育への熱意があり、現地語での生徒とのコミュニケーションが必要となる初等学校低学年の授業においては、必要不可欠な存在である。

また本研究は、中等教育以降の教育を受けたいという難民の意欲に応える難しさを、あらためて浮き彫りにした。2006年難民法がウガンダ人と同等の中等教育を難民が受ける権利までは明示的に認めていないにもかかわらず、難民が労働市場で評価されるスキルを身に着けるのに必要な就学前・初等・中等教育の包括的提供をReHoPE戦略は掲げている。この流れを受け、援助機関が初等教育提供で使用しているのと同様のスキームで、無償の中等教育を難民・ウガンダ人の双方に提供していることを問題視する理由はない。しかし本研究からは、設置と維持のコストが高い中等学校を援助機関がゼロから設立し、ウガンダの公教育システムのルールに沿った中等教育を提供することが容易ではないことが明らかとなった。すでに援助機関の間で計画が進んでいるように、寮のある既存の公立校が難民を受け入れる道をつけることは現実的打開策の一つではある。しかし、このような公立校の数が限られる状況を考えると、それだけでは初等教育段階同様どこまで難民のニーズに応えられるかは未知数である。難民居住地外の中等学校進学を支援する奨学金の枠は限られているので、技術教育・職業訓練の提供も含め、難民のニーズや地域の事情にあった柔軟な方法で中等教育学齢期の子どもにサービスを提供する道も模索すべきである。

おわりに

本稿では、世界的な注目が集まる一方でまだ本格的な研究が行われていない、南スーダン難民の大規模流入後に形成されたウガンダ北部の難民居住地で行われている初等・中等教育の実態を明らかにした。このなかでは、近年主流化が進む開発志向の難民政策下の教育について、受入国の政策全体の一部として扱うのではなく、難民教育として難民にとってどのような利益や問題点があるかについて、学校関係者の視点に立って検証した。そして、本事例では、英語での教育に重点を置くウガンダのカリキュラムをそのまま用いる教育が、難民の教育意欲を引き出していることが明らかになった。しかし、受入国の負担軽減のため公教育システムの中で難民教育を行う方法には、南スーダンの現地語を話す難民教員を活用しきれず、出稼ぎウガンダ人教員主体の不完全な初等教育が行われている問題もある。さらに、受入国で自国民に対する供給も限られている中等教育を、援助機関がコミュニティ校を設立して提供しようとする取り組みにも限界があることが明らかになった。

研究の制約として、ビディビディ難民居住地内で調査対象校が位置する地区以外の4つの地区や、難民を受け入れているホストコミュニティの公立校の状況を加味した分析を行えていないことが挙げられる。ReHoPE戦略では、受益者の割合を難民70%、ホストコミュニティ住民30%として、双方に同等のサービスを提供することが謳われている。政策を評価する上で、ホストコミュニティのウガンダ人の学校当事者の視点を踏まえることは欠かせないが、本稿はコミュニティ校の主に難民の当事者からの視点に焦点を当てた。経済・社会開発に加え、教育開発が特に遅れているユンベ県全体の公教育へのアクセス向上にも資するかたちで教育提供が行われていく方向性がどのように示されるのか、今後も注意深く見守っていく必要がある。しかしこうした制約があるにせよ、質的なデータに基づく分析を行い、援助機関等から公表される表面的な数字からは読み取れない難民居住地内の学校現場の実情に迫った本研究の貢献は少なくないと考えられる。

難民の本国帰還への道筋が見えず、中長期的な視点に立った援助への移行が課題となるなか、ビディビディ難民居住地においてウガンダの開発志向の難民政策下の教育提供の真価が問われるのは、これからである。リソース不足や土地所有権問題で教育施設用の土地が分散しているといった地域固有の問題を乗り越えるためにも、公教育システムの一部として教育サービスを提供する原則に縛られすぎるのではなく、地域の文脈にあったかたちで、難民の子どもの学び続けたい思いや、教員の教育に携わり続けたい意欲を押しとどめない工夫とのバランスをとった改善が加えられることが必要である。

[謝辞]現地調査実施に際しては特定非営利活動法人のAAR Japan(難民を助ける会)およびピースウィンズ・ジャパンの方々に大変お世話になるとともに、JSPS科研費JP26257112およびJP17J01887を活用させていただいた。内海成治教授(京都女子大学)には、現地調査でご指導を賜り、多くの示唆を得ることができた。ここに深謝の意を表する。
参考文献

〈日本語文献〉

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  • 清水康子 2000. 「ウガンダにおける難民政策とUNHCR――地元定住政策から『自立への戦略』へ――」『アフリカレポート』(31) 15-18.
  • 杉木明子 2007. 「難民開発援助と難民のエンパーワメントに関する予備的考察――ウガンダの事例から――」『神戸学院法学』37(1) 31-77.
  • ―――2011. 「サハラ以南アフリカの難民と定住化――ウガンダの事例から――」小倉充夫・駒井洋編『ブラック・ディアスポラ』(叢書グローバル・ディアスポラ 5) 駒井洋監修 明石書店 131-157.
  • 中村由輝 2013. 「南スーダンにおける社会変容と学校教育の歴史的変遷」『アフリカ教育研究』(4) 35-47.
  • 中山裕美 2014a. 「アフリカの難民収容施設に出口はあるのか」内藤直樹・山北輝裕編『社会的包摂/排除の人類学――開発・難民・福祉――』昭和堂 103-121.
  • ―――2014b. 『難民問題のグローバル・ガバナンス』東信堂.
  • 村橋勲 2017. 「難民とホスト住民との平和的共存に向けた課題――ウガンダにおける南スーダン難民の移送をめぐるコンフリクトの事例から――」『未来共生学』(4) 161-185.

〈外国語文献〉

  • Clark-Kazak, C. 2010. "The Politics of Formal Schooling in Refugee Context: Education, Class, and Decision Making among Congolese in Uganda." Refuge 27(2): 57-64.
  • Dryden-Peterson, S. 2006. "The Present Is Local, the Future Is Global? Reconciling Current and Future Livelihood Strategies in the Education of Congolese Refugees in Uganda." Refugee Survey Quarterly 25(2): 81-92.
  • Dryden-Peterson, S. and L. Hovil 2004. "A Remaining Hope for Durable Solutions: Local Integration of Refugees and Their Hosts in the Case of Uganda." Refuge 22(1): 26-38.
  • Government of Uganda 2017. ReHoPE – Refugee and Host Population Empowerment: Strategic Framework - Uganda. Kampala: Government of Uganda.
  • Kaiser, T. 2006. "Between a Camp and a Hard Place: Rights, Livelihood and Experiences of the Local Settlement System for Long-term Refugees in Uganda." Journal of Modern African Studies 44(4): 597-621.
  • Kisira, S. 2008. "Uganda," in Low-Cost Private Education: Impacts on Achieving Universal Primary Education. ed. B. Phillipson. London: Commonwealth Secretariat 131-172.
  • Mathys, E. 2016. Opportunities to Provide Refugees and Ugandans with Alternative Livelihood Activities in Uganda’s Kamwenge District. Washington, DC: FHI 360/FANTA.
  • MoES (Ministry of Education and Sports) 2017. Education Abstract 2016. Kampala: MoES.
  • Ruaudel, H. and S. Morrison-Métois 2017. Responding to Refugee Crises: Lessons from Evaluations in Ethiopia and Uganda as Countries of Destination. Paris: OECD.
  • Sesnan, B., E. Allemano, H. Ndugga and S. Said 2013. Educators in Exile: The Role and Status of Refugee Teachers. London: Commonwealth Secretariat.
  • UNHCR (United Nations High Commissioner for Refugees) 2017. "South Sudan Situation: 16-31 October 2017." Geneva: UNHCR (http://data.unhcr.org/SouthSudan/download.php?id=3435, 2017年12月30日アクセス)
  • UNHCR (United Nations High Commissioner for Refugees) RO (Regional Office) Uganda 2017. "Statistical Summary as of 31 October 2017: Refugees and Asylum Seekers in Uganda." Kampala: UNHCR RO Uganda (https://ugandarefugees.org/wp-content/uploads/October-2017-Statistics-package.pdf, 2017年12月30日アクセス)
  • World Bank 2016. An Assessment of Uganda’s Progressive Approach to Refugee Management. Washington, DC: World Bank.

(さかうえ・かつき/大阪大学・日本学術振興会)
(しみず・あやか/大阪大学)
(さわむら・のぶひで/大阪大学)

脚注


  1. 1980年代に「難民援助と開発」と呼ばれ概念化されていた開発志向の難民支援戦略は、アフリカにおいて1984年に開催された第2回アフリカ難民援助国際会議で議題として取り上げられたものの、主流化には至らなかった経緯がある[中山 2014b, 175]。
  2. ウガンダは1951年の「難民の地位に関する条約」と1967年の同議定書に加え、アフリカ統一機構難民条約にも加入している[杉木 2011]。こうした国際法で定められた規範の履行に向け2006年に制定された難民法は、「アフリカ大陸で最もリベラルな法律」[杉木 2011, 138]とも言われ、難民の就労や移動の自由も認めている。
  3. ReHoPE戦略は、2016年9月に国連サミットで採択された「難民・移民のためのニューヨーク宣言」に基づく「包括的難民支援枠組み」(Comprehensive Refugee Response Framework: CRRF)をウガンダで適用するための重要な取り組みの一つとして位置付けられた[Government of Uganda 2017]。
  4. UNHCR[2017]によれば、2017年10月末時点で、南スーダン国内に難民と国内避難民が計約216万人いる。また、213万人以上が隣国に避難し、その50%近い約106万人をウガンダが受け入れている。その他の受入国は割合が多い順にスーダン(21%)、エチオピア(20%)、ケニア(5%)、コンゴ民主共和国(4%)、中央アフリカ(0.1%)である。
  5. ウガンダの地方分権体制に呼応するかたちで、難民が意思決定を行うために設置されている機関。
  6. ビディビディ難民居住地は、現在は新たな難民の受け入れを停止している。また、本難民居住地は、ユンベ県に設置された最初の難民居住地ではない。ユンベ県には1994~1998年と2003~2008年に、南スーダン独立前のスーダン難民を対象としたイカフェ難民居住地が設置されていた。イカフェ難民居住地で生じていた難民とホスト住民の対立の背景や現在への影響についての詳細は、村橋[2017]を参照されたい。
  7. NERは、該当する段階の教育を受けるべき年齢の子どものなかで、実際に就学している子どもの割合を示す。これに対しGERは、年齢にかかわらず就学しているすべての子どもの割合を示す。このため、学齢期を過ぎて就学する子どもがいる場合、GERはNERを上回る。
  8. 在籍生徒数はWTU資料に基づく数字を表に掲載しているが、その信憑性は低い。出席生徒数は学用品の配給がある時に増え、食糧や生活用品の配給がある日は、配給の受け取りの手伝いで多数の生徒が欠席するため低くなるという教員らの説明であった。例えばA初等学校の公表されている2年生の在籍生徒数は801人なのに対し、調査時に行われていた2学期期末テストの同学年の受験者数は約半分の411人であった。
  9. A初等学校7年生では有効回答者51人中、23人がカクワ、10人がポジュル、5人がククの人々で、6年生では有効回答者75人中、35人がカクワ、9人がポジュル、4人がククの人々であった。また、B中等学校2年生では、有効回答者58人中、20人がカクワ、13人がポジュル、12人がククの人々であった。
  10. A初等学校で筆者らが現地調査時に入手した7年生に関する資料に基づく。質問紙調査を行った7年生53人の生徒のなかで、本資料から遺児かどうかの情報が得られない生徒が1人いた。また、6年生に関しては同様の資料を入手できなかった。
  11. インタビューを行ったA初等学校周辺に住む南スーダン難民の1人は、南部のイエイにある初等学校に4年生まで通った後、南スーダン独立前の2004年頃にウガンダのアルアでバイクタクシーの運転手として働いていたおじを頼って移住していた。中等学校2年生の途中までウガンダの公立校に通ったというこの難民は、自国よりも十分な英語での教育をウガンダで受けることができてよかったと話していた。
  12. インタビューによれば、無償化政策下の公立校に就学する場合でも必要経費を学校から徴収される場合があり、そのような費用が支払えないウガンダ人世帯の子どもがコミュニティ校に通っている(A初等学校男性難民補助教員)。
  13. ウガンダの教育制度は、初等教育7年・中等教育6年(前期中等教育4年と後期中等教育2年)なのに対し、南スーダンは初等教育8年・中等教育4年で、カリキュラムは当然異なる。
  14. 本稿でのドル換算は、ウガンダの中央銀行(Bank of Uganda)による8月の平均レート1ドル=3606シリングを用いている。
  15. ウガンダ公共省(Ministry of Public Service)が公表している2015/2016会計年度の初等学校教員の初任給は、40万8135シリング(約113ドル)である。
  16. ウガンダでPLEの試験会場となるのは公立校やウガンダ国家試験庁(Uganda National Examinations Board: UNEB)から認証を受けた一部の私立校で、コミュニティ校は該当しない。受験者数の制限が行われた理由としてA初等学校男性教員は、近隣のPLEの試験会場となる公立校の校舎の収容人数や、受験料を賄う援助資金の不足を挙げていた。
  17. 2017年8月11日、著者らがビディビディ難民居住地担当のUNHCR職員、WTU職員に対して行ったインタビューによる。
  18. 2017年8月11日、著者らがビディビディ難民居住地担当のNGO職員に対して行ったインタビューによる。
  19. 移住後はすぐにウガンダ政府軍と「神の抵抗軍」(Lord’s Resistance Army: LRA)の間の内戦に巻き込まれ、この教員がウガンダで通ったのは国内避難民(Internally Displaced Persons: IDP)のための学校であり、本奨学金はIDPキャンプでWTUが行っていた教育援助の一部であった。B中等学校の難民男性教員の話は、難民の中等学校へのアクセスを保障する支援の重要性を示す好例でもある。
  20. 2017年8月11日、著者らがビディビディ難民居住地担当のUNHCR職員、WTU職員に対して行ったインタビューによる。中等学校補助教員の雇用は行われていなかった。
  21. ウガンダではUPE政策が導入(1997年)されてから20年がたち、現在も生徒や新人教員の数の増加に対し公立学校の供給が追い付いていない。このため低学費私立学校が台頭し、こうした学校の多くで公立校の職を得ることができなかった新人教員が政府雇用教員よりも安い給料で働いていることが知られている[Kisira 2008]。