文字サイズ

標準
国・テーマ インデックス
レポート・出版物

資料紹介:渋谷ギャル店員 ひとりではじめたアフリカボランティア

アフリカレポート

資料紹介

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049294

■ 資料紹介:栗山さやか 著『渋谷ギャル店員 ひとりではじめたアフリカボランティア』
児玉 由佳
■ 『アフリカレポート』2017年 No.55、p.113
(画像をクリックするとPDFをダウンロードします)

本書は、中・高校生を対象に書かれたものであり、率直な表現で著者のアフリカでの経験がつづられている。著者の本としては、『なんにもないけどやってみた:プラ子のアフリカボランティア日記』(岩波ジュニア新書、2011年)が出版されているが、本書はこの前著の内容を前半部分とし、後半部分でその後の話であるモザンビークでの経験が加筆されている。

前半部分では、親友の死をきっかけに日本を旅立つまでの話とアフリカまでの旅の思い出に続き、エチオピアでのHIV/AIDS患者用の医療施設での看取り介護のボランティア経験が語られている。前著とかなり重複した内容ではあるが、著者の心情により重心を置いた形でコンパクトに記述されている。人々に寄り添う著者の姿が心に残ると同時に、「アフリカ人」といった一括りの存在ではなく、様々な人生を背負った人間としての死が丁寧に描かれており、命の尊厳についても考えさせられる。

後半部分は、エチオピアからモザンビークまでの旅の記録と、モザンビークでの活動の話になる。モザンビークについて書かれている二つの章はそれまでの章とは色合いが異なり、殺人やレイプが著者の周辺で頻繁に起きるなど殺伐とした記述が多くなる。それは第一にモザンビークの不安定な政治状況のためであろうが、著者がNPOを始めたことで、単なる訪問者ではなく住民として現地社会に入っていったためとも考えられる。彼女の活動への協力者が現れるのと同時に嫌がらせをする者たちも出現する。そして行政や住民の無理解といった障害に直面することとなる。モザンビークの章の文章には著者の戸惑いや無力感がにじみでている。

本書で少し気になるのは、特にモザンビークの政治・社会状況のなかで彼女の経験をどう解釈すべきかがわからないことである。アフリカを全く知らない人には、単にモザンビークが怖いところだという印象を与えてしまうかもしれない点が残念である。しかし、本書で語られる「個人的な経験」は、それゆえに心に直接響いてくるものがある。また、前半のエチオピアでの看取り介護の経験と後半のモザンビークでのNPO活動による新たな経験との対比が、異国の人々と関わることの意味を考えさせてくれる。主観的すぎるという批判もできるかもしれないが、それ以上に、より具体的にアフリカを感じることのできる貴重な記録といえよう。

児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)