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資料紹介:中国第二の大陸アフリカ――一〇〇万人の移民が築く新たな帝国――

アフリカレポート

資料紹介

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049293

■ 資料紹介:ハワード・W・フレンチ 著 栗原泉 訳『中国第二の大陸アフリカ――一〇〇万人の移民が築く新たな帝国――』
■ 岸 真由美
■ 『アフリカレポート』2017年 No.55、p.112
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本書は猛烈な勢いでアフリカに進出する中国を「人の移動」という側面から描き出したルポルタージュである。著者は『ニューヨーク・タイムズ』の元記者で、世界各地の支局長も務めたハワード・W・フレンチ氏である。著者はアフリカ10カ国で、多くの中国人移民とアフリカの現地人を取材して本書を書きあげている。

中国政府は1990年代後半から「走出去(中国語で「出ていく」の意)」政策として、中国企業の海外投資戦略を積極的に推奨してきた。本書によれば、中国の対アフリカ投資額は毎年前年比20パーセントの勢いで伸び、2012年には対アフリカ貿易額は欧米各国をはるかにしのぐ推計2000億ドルに達した。ある試算では、中国企業がアフリカで行う事業は、中国の海外収入の3分の1を占めるという。こうした貿易や投資の伸びに比例して、もう一つの現象が進行している。著者曰く、それは中国が大勢の自国民を輸出しているということである。この10年間でアフリカに移住した中国人は少なく見積もっても100万人だという。今やアフリカの至るところに中国人がおり、あらゆるビジネスに浸透し始めている。

登場する中国人は多様である。アフリカ各国の道路やダムの建設など、公共事業を受注した中国企業で管理者・作業員として働く者、ザンビアで銅精製所を経営する者や畜産・養鶏業を営む者、モザンビークで土地を手に入れ農場経営を行う者、セネガルやタンザニアで衣類や雑貨などの小売を行う者、リベリアやシエラレオネでホテル業を営む者。彼らがアフリカに渡る理由は人それぞれだが、共通するのは、祖国の現状に閉塞感を感じ、祖国より自由でチャンス溢れる場所としてアフリカを見ていることだ。

こうしてあらゆる分野に中国人が進出する一方で、アフリカの現地人たちとの間に競争が発生し、軋轢が生まれていることも事実である。評者も2012年の夏にケニアの首都ナイロビで、現地の露天商らが首相府前に詰めかけ、増える中国人露天商に対する抗議デモを行うのをテレビの報道で目にした。彼らは「中国人が道路建設に来るのはいいが、モノを作ってケニアに輸出し、卸業や小売、行商をするのはやめてくれ」と主張していた。

本書は、アフリカと中国との間で、草の根レベルでは今何が起きているのかを知ることのできる良書である。

岸 真由美(きし・まゆみ/アジア経済研究所)