2017 年 55 巻 p. 79-91
本稿はアフリカの一党優位体制についての理解を深めるため、タンザニアの優位政党である革命党(Chama Cha Mapinduzi: CCM)を事例に、1992年の複数政党制移行後の党内の派閥政治の変遷と党幹部によるその統制を分析する。具体的には、CCM内の派閥政治と党内の権力分配のあり方について論じたグレイ(Hazel Gray)の論文を参照しつつ、複数政党制移行後初の選挙が行われた1995年、任期満了に伴って大統領が交代した2005年と2015年の計3回の大統領選挙に焦点をあて、CCMの大統領候補選考における派閥間競争の特徴を明らかにする。そして、この分析を通じ、2015年のCCM大統領候補選考がタンザニアに一党優位体制の継続をもたらしただけでなく、党内の派閥を統制し、党を中央集権化しようとする試みであったと論じる。