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資料紹介: アフリカの老人——老いの制度と力をめぐる民族誌——

アフリカレポート

資料紹介

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アフリカの老人——老いの制度と力をめぐる民族誌——
■ 資料紹介:田川 玄・慶田 勝彦・花渕 馨也 編著 『アフリカの老人——老いの制度と力をめぐる民族誌——』
児玉 由佳
■ 『アフリカレポート』2016年 No.54、p.87
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アフリカは、人口の約4割を0才から14才までの年齢層によって占められており、「若い大陸」と称されることが多い。開発援助の分野では、若者は「成長のエンジン」として注目されているのに対して、年配の人々は若者に対する抵抗勢力として扱われがちである。そのようなステロタイプな語りから一線を画したところに本書はある。本書は、文化人類学者が、「老人」とは社会においてどのような存在なのか、どのような人生を経て「老人」となったのかを、自分たちの調査地での長年のフィールドワークを基盤として真正面から取り扱った論文集である。

本書は序章に続いて8章からなっている。第1章「老いの情景-祝福・呪詛・年齢集団—」、第2章「老いの相貌-ケニア・ギリアマにおける老人の威厳、悲哀そして笑い—」、第3章「マダガスカルにおける老いと力—祝福・呪詛・勘当—」、第4章「老いの祝福—南部エチオピアの牧畜民ボラナ社会の年齢体系—」、第5章「社会の舞台裏を牛耳る—ケニアの牧畜民サンブル社会における年長女性の役割—」、第6章「老いてなお子ども—コモロ諸島・ンガジジャ島における年齢と階梯—」、第7章「一夫多妻社会の老人事情—ルオの男女が老いたとき—」、第8章「<老いの力>の未来を左右する少子高齢化」である。

本の副題や各章のタイトルからもわかるように、分析は、老人のみを切り取ったものではなく、他の年代との関係を視野に入れている。各社会で発展した年齢階梯は複雑ではあるが、丁寧に説明されており、人々がどのような社会的地位を経て「老人」に至ったのか理解することができる。また、隣り合う年齢階梯とは対立関係にあるが、一階梯隔てた年齢階梯の間には、より気安い関係が成立していて連携することが多いという報告は、単純に「若者」対「老人」といった構図でかたづけることのできない社会の複雑さを示している。長い年月をかけて連携と対立をくりかえし、最後に「老人」となり、それまでの力を失う一方で、仲介者として重要な役割を果たし、人々を祝福し呪詛する新たな力を得ることになる。

老人の日々の営みには、年齢階梯のフォーマルな仕組みだけでは説明がつかないさまざまな逸脱が存在している。各章では、文化人類学者たちによって、伝統的な儀礼や年齢階梯の仕組みが詳細に説明されているだけではなく、そこで暮らす人々がどのように老いていくのか、そして今どのように生活しているのかについての具体的な記述も書き込まれている。伝統的儀式の裏にあるもっと人間くさい日常生活が紹介されているのが、本書の醍醐味であろう。

児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)