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資料紹介: 植民地支配と開発 ——モザンビークと南アフリカ金鉱業——

アフリカレポート

資料紹介

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■ 資料紹介:網中 昭世 著 『植民地支配と開発 ——モザンビークと南アフリカ金鉱業——』
網中 昭世
■ 『アフリカレポート』2015年 No.53、p.37
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本書は、19世紀末~1920年代に築かれたモザンビーク・南アフリカ間関係の歴史研究であり、著者が2000年から行ってきた調査をもとに、2012年に津田塾大学大学院国際関係学研究科に提出した博士学位論文を改稿したものである。

南アフリカ金鉱業の開発と労働力の問題は世界経済の縮図であり、南アフリカ研究には膨大な蓄積がある。しかし、従来の研究の分析枠組みは概して一国的であり、必ずしもこの問題を南部アフリカ地域、あるいは旧宗主国を含む国際的な問題として論じてはこなかった。本書は、20世紀を通じて同産業の発展を支えた一大集団モザンビーク人移民労働者の出身社会に注目し、移民労働者の送り出しを組織化したポルトガルによる植民地支配の在り方を詳らかにすることで、世界史的な視点から南部アフリカ地域の経済構造が構築された過程を明らかにする。

本書は序章と終章を含めて7章で構成されている。序章に続き、第1章で南アフリカ金鉱業への労働力供給の前史として、19世紀後半のモザンビークにおける労働者の法的地位の変化を辿る。第2章・第3章では、ポルトガルの産業資本の欠如に起因した、20世紀前半を通じたモザンビークの開発の特徴として北部・中部の外資系特許会社の導入と南部の労働力輸出を挙げ、モザンビーク南部において南アフリカ金鉱業が独占的な労働力の供給を実現した外交過程を示す。第4章では、第一次世界大戦に至る英独の緊張関係が、緩衝地帯としてポルトガル植民地の存続を可能にしたと同時に、英独による植民地再分割の対象でありうるという不確実性が収奪的な開発に繋がったことを指摘する。第5章は、労働力調達が最終的にモザンビーク南部の移民送り出し社会にもたらした変容を明らかにしている。そして終章では、分析の対象とした1920年代までの両国間の経済関係が、繰り返される政府間協定を軸としてどのように展開を遂げ、あるいはモザンビークの独立後に矛盾を抱えながら現在に至っているのかをまとめている。

本書では、植民地支配下で進められた開発の実態について、国際的な環境と地域の論理が絡み合う複雑な関係性を提示することを目指した。過去の植民地支配の開発の在り方について本書を一読した読者は、近年のモザンビークにおける経済開発の在り方、あるいは南アフリカの外国人排斥問題といった地域の現情に対して既視感を覚えるかもしれない。歴史研究者に限らず、現代社会の問題に関心を寄せる読者からの批判、コメントをいただければ幸いである。

網中 昭世(あみなか・あきよ/アジア経済研究所)