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資料紹介: 和解過程下の国家と政治 ——アフリカ・中東の事例から——

アフリカレポート

資料紹介

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和解過程下の国家と政治 ——アフリカ・中東の事例から——
■ 資料紹介:佐藤 章 編 『和解過程下の国家と政治 ——アフリカ・中東の事例から——』
佐藤 章
■ 『アフリカレポート』2014年 No.52、p.39
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本書は、アジア経済研究所で2011年度から2年間にわたり実施した共同研究会「紛争と和解 ——アフリカ・中東からの視角——」の最終成果である。紛争後の平和構築において、和解はもっとも重要な課題のひとつである。和解は、武力紛争に伴う敵対心や不正義感を解消・清算して社会に調和をもたらすことを目指し、政治、制度、価値観などのさまざまな面での取り組みを通して、国家の一体性を持続的に維持していくことによって実現されるものである。和解は平和の実現と国家の安定にとって大きな鍵を握っており、和解の進展状況を探ることは政治研究にとって重要な課題となる。本書はこのような認識に立ち、1990年代以降、紛争多発地帯の様相を呈したアフリカと中東からいくつかの紛争経験国を選択し、各国固有の文脈に照らして和解をめぐる問題を考察したものである。

紛争後の和解に関するこれまでの研究では、紛争期の人権侵害に関する真相究明や司法的な裁きといった取り組みがとりわけ注目を集めてきた。和解をめぐるこのような先行研究を踏まえつつ本書では、多くの紛争経験国における和解の取り組みが、真相究明や司法的裁きだけに限らない、さまざまな分野での政策、制度構築、政治的対話や交渉などが関わる、渾然一体たる過程として展開されてきたことに注目した。実際、和解が掲げられている国々においては、和解の目標をどのように設定し、いかなる手段を用いて実現を目指すかということそのものが激しい政治闘争を引き起こすという逆説的な状況がしばしば発生している。和解の名のもとに、また和解そのものをめぐり展開されている動態的な過程がいかなるものか、また、その過程が国家形成のあり方と政治の変化に照らしていかなる意義を持つのか——本書はこの問いに取り組んでいる。

事例研究は7編の論文を収め、ルワンダとブルンジ(武内進一)、南アフリカ(阿部利洋)、イラク(山尾大)、ケニア(津田みわ)、コートジボワール(佐藤章)、ソマリア(遠藤貢)、シリア(青山弘之)の8カ国が取り上げられている。各編とも可能な限り最新の情勢を視野に収め、各国それぞれに力点が異なる和解をめぐる動態を的確に再構成している。詳細な事実に寄り添う地域研究のメリットを最大限に生かしつつ、紛争研究における新しい方向性を探った挑戦の書である。

佐藤 章(さとう・あきら/アジア経済研究所)