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資料紹介: アフリカ社会を学ぶ人のために

アフリカレポート

資料紹介

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アフリカ社会を学ぶ人のために
■ 資料紹介:松田 素二 編 『アフリカ社会を学ぶ人のために』
児玉 由佳
■ 『アフリカレポート』2014年 No.52、p.35
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本書は、アフリカ入門を謳っているが、単なる紹介本ではなく、植民地支配などによって歪められたアフリカについての認識を打破し、「アフリカ社会から学ぶ」という視座に基づいて新たなアフリカ像を提示するという、野心的な目的を持っている。そこで提案されているのが、「アフリカの潜在力」である。編者はそれを3つの特性に分類している。1つは異文化を受容し変容していく「包括性と流動性」、次に民族への多重帰属のような「複数性と多重性」、そして生活の必要に応じて社会を積極的に変化させていく「混淆性とブリコラージュ性」である。

本書では、「多様性」、「過去」、「同時代性」、「困難」、「希望」というテーマを挙げ、「アフリカ」を多角的に照射しようとしている。第1部「多様性を学ぶ」では、多様な民族、言語、地理的環境、生業を紹介している。第2部「過去を学ぶ」で人類誕生から奴隷貿易、植民地支配と独立に至るまでの歴史、第3部「同時代性を学ぶ」でポピュラーアートのような文化や結婚や宗教、家族といった日常生活と関連するものを紹介している。第4部「困難を学ぶ」では、政治的動乱や経済問題と開発援助、自然保護そして感染症など、アフリカが直面している問題を取り上げている。第5部では「希望を学ぶ」として、農業、人々の相互扶助、紛争処理そして多文化/多民族共生の在り方を紹介することで、現在のアフリカの持つ「潜在力」と可能性を提示している。

全部で20章あり、各章15ページ足らずの短いものではあるが、長年アフリカの「現場」で調査・研究を行ってきたフィールドワーカーたちのエッセンスが詰まっている。すべての章が「アフリカの潜在力」を明示的に論じているわけではないが、ステレオタイプなアフリカ像を覆す具体的な記述や問題提起は、アフリカのみならず世界を考える上で、読者には大きな刺激をもたらすであろう。関心のあるところから読み進めても構わないと思うが、編者も指摘しているように、現在のアフリカを理解するのに歴史的な知識が不可欠であることを考えると、少なくとも第2部「過去を学ぶ」に目を通してからの方がよいかもしれない。

巻末にあるテーマ別の「アフリカ社会を学ぶ人のための必読文献リスト」や国別データシートも、アフリカを知りたい人にとっては有用な情報である。

アフリカに興味はあるけれどどこから手を付けたらよいのか迷っている人には、出発点としてこの本から始めてみることをお勧めする。

児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)