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アジアの空港と航空物流

調査研究報告書

池上 寛 編
2015年3月発行
まえがき pdf (170KB) / 池上 寛
第1章
本章では、世界の航空貨物輸送業界で代表的な総合物流事業者であるインテグレーターに焦点を当て、とくに大手3社の国際航空輸送ネットワークと成長をけん引するアジア事業の展開について考察する。まず第1節では、これら三大インテグレーター(DPDHL、FedEx、UPS)の発展過程を紹介し、各社の持つ強みと特徴を述べる。次いで第2節では、世界の航空貨物輸送量・取扱量の推移を航空会社別・空港別の視点から概観し、なかでもインテグレーターの主力である国際エクスプレス事業での圧倒的なプレゼンスについて明らかにする。第3節では、インテグレーターの海外展開にとって不可欠なエアハブの構築とグローバルネットワークの形成をどう具体的に進めてきたか、FedExの「アジアワン」ネットワークを事例に論じる。最後に、全体の簡単なまとめと今後の課題について提示する。

第2章
近年、韓国では、北東アジアにおける国際物流ハブの構築に向けた取り組みが進められており、仁川国際空港は世界第4位の貨物取扱高、大韓航空は世界第5位の貨物輸送量を誇っている。世界各地への航空貨物のネットワークの拡大は、全世界で高いシェアを誇る韓国製のIT製品などのサプライチェーンの効率化に大きく貢献していると考えられる。そこで、韓国における空港と航空会社、航空貨物の現状とともに、仁川国際空港における国際航空貨物の取扱の現状をまとめた。国内航空貨物は、ほかの交通機関との競争から減少傾向が見られ、金浦空港と済州空港が主体であることが分かった。一方、国際航空貨物は、仁川空港が主体であり、その取扱量は漸増傾向が見られ、欧米からの輸出入貨物や中国発、アメリカ向けのトランジット貨物が多く取り扱われているとともに、仁川港と連携したシー・アンド・エアー輸送といった特徴的なサービスが行われていることが分かった。

第3章
ASEANの航空自由化の展開 pdf (484KB) / 梅﨑 創
本章の目的は、2015年末に創設されるASEAN経済共同体(AEC)における航空自由化の位置づけを確認したうえで、その展開を、とくに国際航空物流との関連性が高いと考えられる「航空貨物輸送の完全自由化に関する多国間協定(MAFLAFS)」およびASEANと周辺国との間の多国間航空協定に焦点を当てて整理することである。
ASEAN諸国の多くは、海外直接投資を積極的に受け入れることによって、著しい経済成長を達成してきた。その過程で構築されてきた国際生産ネットワークをさらに高度化、精緻化するためにも、ASEANを中心とした国際航空物流の改善は重要な課題である。ASEANにおける航空自由化は、潜在的な利害対立などによって一部の加盟国において批准の遅延が見られるものの、「ASEAN-X」方式を採用することにより、既批准国間で順次発効しており、具体的な進展を見せている。
しかし、ASEANの航空自由化は、MAFLAFSを含む「航空輸送部門統合に向けたロードマップ(RIATS)」、ASEAN単一航空市場(ASAM)実施枠組み、そして多国間航空協定のいずれにおいても、現時点では第5の自由までに限定されている。このような限定的な航空自由化が、ASEANの航空市場統合、さらに幅広い経済統合にどの程度の影響をもたらしうるのか、今後も注視していく必要がある。

第4章
GMS諸国の航空貨物輸送の概況 pdf (493KB) / 花岡 伸也
大メコン圏の構成国を対象に、国際空港評議会のデータを基礎として各国の航空貨物輸送状況を整理し、その状況を概観した。大メコン圏諸国の中では、タイの国際航空貨物量が圧倒的に多く、なかでもスワンナプーム国際空港が多くを占めている。スワンナプーム国際空港では、2009年から2012年まで増加傾向にあった輸入量が2013年に減少した。その理由の一つとして、政府の自動車購入奨励策 が2012年末に終了したことによる、自動車部品輸入量の減少が考えられる。一方、輸出は2010年をピークとして減少を続けているが、その原因は推察できなかった。タイ空港公社の運営する他の5空港についても、国際・国内航空貨物の近年の増減量は動的で不安定であり、その傾向をデータのみから判断することは難しい。カンボジア、ミャンマー、ベトナムでは、主要空港の国際航空貨物量が順調に増加傾向にあることがわかった。ラオスの航空貨物量は国際空港評議会のデータに含まれておらず、状況把握はできなかった。

第5章
世界の航空貨物輸送において、中国の存在感が大きくなっている。輸送量ですでにアメリカに次ぐ世界第2位であるという現状もさることながら、124カ国にとって最大の貿易相手国となっている現状からして、今後の同輸送発展の中心になることが確実視されるからである。ただし、抱えている問題も少なくない。最大の問題は、輸送を支える行政体制、企業システムの市場化が遅れており、今後の発展を制約していると同時に一層の自由化(規制緩和)に向かう世界的趨勢の障害となっていることであろう。本章では、こうした問題を抱える中国民間航空輸送の発展の現況と課題を把握するために、まず、第1節で、建国以降の航空貨物輸送の歴史を振り返り、その現況について統計データに依拠しつつ概観する。続いて第2節では、航空貨物サービスの現状と課題を分析する。航空貨物キャリア企業の発展ぶりや貨物の内容、貨運代理企業の現状などが分析の対象となる。第3節では、今後、航空貨物業界を大きく変える存在となるとみられる航空宅配の急成長を分析する。成長頭の同分野においても、インフラ整備の立ち遅れとビジネス環境の未整備が問題となっていることを示す。第4節では、輸送インフラとしての空港の配置と今後の整備計画について紹介する。現行整備計画の終了年は2020年である。最後に第5節では、航空貨物行政の現状と課題について同分野の第12次5ヵ年長期計画に沿って検討を加える。最後に、今後分析を深める基礎として、航空貨物に関する基本的な統計、資料について整理しておきたい。

第6章
台湾では1979年に台湾桃園国際空港が開港し、台湾を代表する空港として多くの貨物を取り扱っている。台湾のような海で周りを囲まれている場所では、航空貨物で輸送されるものの多くが国際貨物として輸送されている。台湾の航空貨物の多くは国際貨物であり、取り扱っている空港もわずか3空港のみであり、台湾桃園国際空港を拠点としている。また、台湾桃園国際空港における貨物便路線の半分が中華航空とエバー航空で占められ、両航空会社が台湾桃園国際空港をハブ空港として使用している状況である。輸出入貨物で輸送されている上位にはアジア地域の国・地域が入っており、台湾の国際航空貨物はアジアを中心に展開されている。また、輸送品目で見ると、HSコード84の機械用品とその部品、85の電機・設備とその部品が輸入、輸出の中心貨物である。国際貨物の輸出入におけるキロ当たり輸送費の高額上位10品目と低額上位10品目、国ごとの平均運賃についても高額上位10カ国と低額10カ国・地域も公表されており、台湾の航空貨物に関する統計は比較的公表されているといってもよい。

第7章
日本の航空貨物輸送は、グローバリゼーションの進展とともに堅調に増加してきたが、2000年代中頃を転機に抑制基調に転じたように見える。国内航空貨物輸送も、急速な高齢化や市場の成熟化などが進展し、日本のGDP自体の抑制基調の下で、今後は持続的で高い量的成長は見込めない状況にある。本章では1990年代以降の日本の航空貨物輸送の動向を概観し、国際航空貨物輸送の量的抑制基調の背景要因について、日本企業のグローバル戦略の変化の視点から考察した。また、日本の空港は、近年まで均衡ある国土の形成という政策理念に沿って、国際ハブ空港を担う拠点空港だけでなく、地方主要空港や種々の地方空港などが整備され、その数は97に至った。しかし、新興国市場の国際空港の急速な台頭とともに、日本の主要拠点空港は、相対的な地位を低下させアジアにおける国際ハブの地位から転落しつつあり、多くの地方空港が経営的な危機に直面している。本章では、これらの状況を踏まえて、グローバル時代における日本の航空貨物輸送および空港政策の展開について検討し、政策を貫く基調について考察した。航空貨物輸送・空港政策においても、規制緩和や自由化の諸施策の推進だけでなく、現代の地方と空港の関連性を踏まえた、グローバル時代にふさわしい政策理念の模索が必要となることを論じた。