近年ヨーロッパを中心に国家のリスケーリング論が注目を集めている。国家のリスケーリングとは,従来,国家領域を基本としていた政策や計画などのガバナンスの単位をローカル,リージョナル,グローバルに再編成することを意味する。このような視点はとりわけ東南アジアの資本主義的発展をとらえるうえで有効であると思われる。しかしながら,東南アジア諸国の現実をとらえるためには,リスケーリングの視点だけではなく,まずはそこでの資本主義の独特のあり方からとらえる必要がある。そこで,本稿ではやはり近年注目を集めつつある資本主義の多様性論を検討し,分析のための視点を整理する試みを行った。その結果,(1)資本,(2)労働,(3)教育,(4)競争,(5)国際参入,(6)国家という6つの視点が,東南アジア諸国の特色をとらえるうえで有効であることが,明らかとなった。