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開発途上国と産業構造変化

調査研究報告書

樹神昌弘・川畑康治 編
2014年3月発行
総論 pdf (119KB) / 樹神 昌弘・川畑 康治
第1章
産業の構造変化はどのようなメカニズムで起きるのか。本稿は産業構造変化の要因に関する既存研究の議論をまとめたものである。最近の理論研究はその要因として消費の所得効果と相対価格効果の重要性を指摘している。一方,実証研究については,近年,この2つの効果の相対的な重要性を計量経済学的に検証する論文が発表されている。本稿は,はじめに経済成長と産業構造変化の基本モデルをつかって,これら2 つの効果と産業構造変化の関係を説明した上で,この分野の計量経済学的な実証研究を紹介し,その成果と今後の課題を整理する。

第2章
開放経済下の産業構造変化 pdf (298KB) / 樹神 昌弘
本稿では開放経済下における産業構造変化について概観する。近年、産業構造変化の研究が注目を浴びつつあるが、それらの研究は閉鎖経済を前提としたものが多い。これに対し、最近年においては開放経済下における産業構造変化を扱う研究が現れてきている。こうした開放経済下の産業構造変化研究の特徴、および意義などについて考察する。

第3章
一般的に、工業化やサービス化の進展により、その国の一人当たり所得は増加すると考えられる。しかし、そうした変化は果たしてその国の、特に発展途上地域の貧困削減につながるのだろうか?もしGDPに占める非農業部門の割合が上昇することで、その国の貧困者数や貧困者比率が減少・低下するなら、経済成長に伴う産業構造の変化から幅広い階層が恩恵を受けることになる。しかし反対に、もしGDPに占める非農業部門の割合が上昇することで、貧困者数や貧困者比率が変化しない、もしくは増加・上昇するなら、貧困層は経済成長の恩恵を受けておらず、経済成長は包摂的ではないということになる。この点を踏まえて、本章では、経済成長とほぼ同義的に扱わる傾向にある産業構造の変化が貧困削減に対してどのような影響を持っているかについて、主要な先行研究のサーベイを行い、今後の研究の参考にする。

第4章
金融発展と経済成長の関係は、前者が後者を促進するものとして様々な研究で立証されている。本稿では、経済成長と不可分の関係にある産業構造変化に焦点を当て、金融発展との関係をアジア、中南米、欧米の各地域を対象に因果性分析を行った。この結果、産業構造変化と金融発展が密接な関係にあることが示された。また金融制度別に間接金融と直接金融に分類し、それぞれの発展が産業構造変化に及ぼす影響を考察した結果、間接金融の発展は産業構造変化に先行し、経済発展に伴い間接金融の発展と構造変化との相対的関連性が増すことが示された。これは経済発展プロセスにおいて、産業構造変化が十分な信用市場の発展を前提として、証券市場の拡大とともに生じることを示唆している。