skip to contents.

開発途上国における経済発展と所有権

調査研究報告書

2014年3月発行
イランにおける約定担保物権ラフンの社会経済的機能 / 岩﨑 葉子
イラン民法に定められているラフンは、当事者の合意の下に動産あるいは不動産を債権担保とする金融取引の一形態である。ラフンは日本民法に定められた「質権」および「抵当権」を包括する「約定担保物権」と考えられる。
一方で今日のイラン社会におけるラフン(rahn)とは、あたかも日本民法における不動産質のごとき約定を結ぶことによって、実態上は不動産の賃貸借契約の機能を果たすものを指す。通常の不動産市場においてラフネ・カーメルやラフノ・エジャーレと銘打った賃貸契約が広範に普及し、不動産賃貸借の一形態として不動産質が利用されているという側面が強い。イランの営業用物件(店舗)の賃貸借契約では、サルゴフリー方式という用益権買い入れ型の賃貸契約が広く行われており、居住用物件ではこのラフン契約が主流であることを考え合わせると、イランではそもそも月ぎめの賃貸料の支払いによる通常の賃貸借はいずれの物件でもあまり好まれないという傾向が指摘できる。
イランの法体系は、もともとイスラーム法という伝統的規範のうえに近代法の枠組みを施したものである。ラフンの事例分析を通じて、イランにおける資産運用の定石が伝統的法制度とどのように関連しているのかを考えることができる。

「私的所有権の出現」について:デムセッツの議論を出発点として / 佐藤 創
私的所有権は現代社会の基礎をなすもっとも重要な制度の一つである。その設定や保護、執行など諸側面を総体としてみて十分な私的所有権制度を発達させえないことが、開発途上国が先進国に経済水準で追い付くことができない根本的な原因だとする見解もある。ただし、近年、二酸化炭素や臓器、知的情報などに対する所有権をどう考えるべきかという問題は、開発途上国のみならず先進国においても重要な懸案となっており、私的所有権がもっとも発展した所有形態と一般にみなしうるか、再検討する機運が高まっている。本稿では、そもそも私的所有権がどう出現したかにかんする経済理論、とくにデムセッツの議論を検討することを通じて、私的所有権の今日的意義や役割を考える際に重要な視点を再考する。