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ポスト軍政のミャンマー—テインセイン政権の中間評価—

調査研究報告書

2014年3月発行
第1章
「ポスト軍政」の幕開け—背景、進捗、展望— / 工藤 年博
第2章
ミャンマーでの2011年3月30日の民政移管とその後の政治経済改革のうち、連邦議会が予想以上に重要な役割を占めていることは特筆に値する。今後のミャンマー政治を考えるうえで議会と立法過程の研究は不可欠のものになるであろう。そこで、本稿では、予備作業として、連邦議会(人民院,民族院)議員のプロフィール上の特徴を検討する。具体的には、まず議会制度の概要を説明したうえで、人民院、民族院、両院の民選議員の性別・年齢・宗教・民族、および学歴・前職の特徴を明らかにする。次いで、国軍司令官指名議員についても、同様に性別・年齢・宗教・民族、および学歴・兼務ポストの特徴を明らかにする。本稿は最終原稿の準備段階であるとともに、2015年に予定されている次の総選挙で選ばれる議員と比較するための参照点を提供することにもなるであろう。

第3章
本稿では、ミャンマーの発展の重要な課題である「法の支配」について、2008年憲法で設置された憲法廷の役割に焦点をあてて論じる。
「法の支配」の確立には、立法機能の強化のみならず、それを法に則ってどう執行するかという行政の機能、そしてかかる機能が法に合致しているか否かを判断する司法の機能がある。現体制になり勢いをます国会の動きは、他の機能と均衡がとれたものでなければならず、それは司法の独立にある。国会による憲法廷メンバーの弾劾が司法の独立にとって何を意味するのか、将来のミャンマーの司法のありかたを問う。

第4章
本稿では、ミャンマーの新政権のもとで進行している経済改革を、それまでの規制を緩和・廃止する改革と、新たに制度・仕組みを作ろうとする改革とに分けて、後者は容易ではないとの議論を展開した。改革が顕著な財政・金融分野にあっても、新たに制度・仕組みを作ろうとする改革は捗っていない。外国為替制度の改革については、具体的な成果を伴っているのは「輸出第一」政策の廃止による民間部門での為替レートの統一だけであり、管理フロート制度導入後もヤミ市場を柱とした外国為替市場の構造にはほとんど変化はない。また、中央銀行の金融政策によるマクロ経済安定化については、中央銀行の独立性の強化はスタート点であり、金融政策を働かせるフォーマルな銀行部門を発達させることが課題だ。

第5章
ミャンマーのコメ産業の新しいビジネス・モデルとして米穀専門会社(Rice Specializing Companies)は2009年に始まった。これは生産から輸出までの包括的なサプライチェーンの構築し、1)農家への信用供与、2)品質向上、3)輸出増を同時に達成しようという野心的な試みであった。本稿ではRSCに対するヒヤリングをもとにその現状を整理し、ミャンマーのコメ産業の現状や課題を検討する。

第6章
本研究は、近年のミャンマー農村にみられる変化の兆しとその背景を明らかにすることで、テインセイン政権の評価を試みようとするものである。中間報告にあたる本稿では、主に農村開発を後押しする国際的な開発援助とその末端で活動する開発系NGOについて、これまでに得た情報を整理して提示した。ミャンマー政府や国際機関から得た二次資料、農村部住民やNGO団体への聞き取り調査によって得た情報などである。これらにより、全国の農村部に浸透しつつある開発援助活動の状況と、サイクロン・ナルギス被災と新政権発足という開発援助活動が活性化した二つの契機を検討した。また、活動を活発化させているローカルNGOの多くが、ミャンマーで国際的な開発援助が活発化する前に設立されており、現在のNGO活動をリードしている人びとは、軍政期から様々なかたちで社会貢献活動に携わってきたことを示した。今後、新政権発足後の農村の変化を多角的に捉えるために、本稿のトピックに関するデータの収集と分析・考察をさらに進める。

第7章
ミャンマーと地域協力 pdf (1.19MB) / 梅﨑 創
ミャンマーの民政移管、経済改革の進展に伴い、ミャンマーを巡る地域協力の在り方は急速に変容している。まず、経済制裁が段階的に解除されたことにより、主要ドナーが対ミャンマー援助を再開することが可能になり、法制度改革やインフラ開発などに必要な技術的、資金的支援を提供する環境が整えられた。その結果、これまで周辺国との接続性を損ねてきた道路インフラの整備が始まり、ミャンマーはタイ、中国、インドを陸路で接続する新しいアジアの結節点へと変貌を遂げようとしている。その効果を高めるためにも、今後は、ミャンマーが参加している地域協力枠組みの動向を注視すると共に、ミャンマーが進めている経済改革が、ASEAN経済共同体ブループリント等、地域協力枠組みにおける合意事項と整合的であるのかどうか、検証していく必要性が高まっている。