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国際リユースと発展途上国

調査研究報告書

2013年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
小島 道一 編『国際リユースと発展途上国 ——越境する中古品取引——』研究双書No.613、2014年12月発行
です。
第1章
自動車、家電、建設機械、農業機械、衣料品など、さまざまな中古品が先進国から途上国へと送られている。先進国で使用済みとなり、途上国に送られ、使用されるまでには、回収、貿易、販売、修理、再製造などの過程で、多くの人の手を経ている。その一方で、中古品に関する貿易規制を行っている国も少なくない。本稿では、リユースをめぐる用語を定義するとともに、国際リユースをめぐる論点について整理する。

第2章
主に先進国から途上国に輸出される古着は、今世紀に入って飛躍的に増加している。輸入古着は、途上国が比較優位を有する縫製産業の発展を阻害する可能性があるが、この点についての先行研究は少なく、また議論もまとまっていない。本稿では、古着貿易の経済的な影響を検討する準備として、論点を整理するとともに、古着貿易の基礎データを俯瞰した。結果を要約すると、古着輸入は開発途上国から先進国への衣料品の輸出には影響しないことから、産業発展への影響は限定的であると考えられるが、国内市場向けの縫製産業の衰退を通じて非熟練労働の雇用を減らしている可能性がある。貿易データから、古着貿易は衣料品(新品)と比較しても無視できない規模であること、輸入量は所得水準と相関があること、サブサハラ・アフリカ地域の輸入量が突出していること、密輸入が行われていることが確認された。

第3章
輸入衣料品に代替する衣類を生産しうる衣類産業が育っていないタンザニアでは、消費者の日常的な衣料品消費を支えるのは、先進諸国から輸入される「中古衣料品」とアジア諸国から輸入される「非正規品を多数ふくむ新品衣料品」である。中古衣料品とアジア製衣料品がどのようにタンザニアの市場に浸透するかはグローバル経済の構造的な変化だけでなく、二つの商品の供給システムの違いに基づくタンザニアの消費者のミクロな購買行動にも影響されている。本論文では、タンザニアの都市部の消費者による中古衣料品とアジア製衣料品の選択について、それぞれの衣料品の供給・流通システムの違いに着目しながら、明らかにする。それを通じて中古衣料品とアジア製衣料品がタンザニアの消費者の衣料品消費において果たしている補完的な役割について考察する。

第4章
本研究では、中進国となったタイから「玉突き状態」で、周辺後進国であるカンボジアやミャンマーへ輸出されている国際リユースの現状を中進国と後進国の複合的な視野で整理する。タイにおいては中進国として中古家電輸入規制や中古乗用車輸入規制を導入しながら、必要に応じて先進国からの中古品を輸入し、また周辺国への中古品を輸出していること整理する。次にタイを含めて最終需要地として中古品を輸入しているカンボジアやミャンマーの国際リユースの現状と課題を整理し、最後に廃棄物・リサイクル対策の観点から中進国と後進国での国際リユースの課題について論じる。

第5章
本稿では日本からの中古車輸出の動向について貿易統計をもとに分析した。その結果、近年は従来の「御三家」+チリが上位に来る構図が崩れつつあることがわかった。流通量の変化には様々な要因が考えられるが、各国の輸入規制が頻繁に変更されていることがあげられ、その事例を紹介した。また日本から多くの中古部品が輸出されているが、それらが世界中の中古部品市場で取引されている。本稿ではバンコクの市場の様子と流通の現状について述べた。

第6章
国際社会学の観点から見ると、中古品のリユースやリサイクルという産業は、エスニック・マイノリティが積極的に参入してきた業種(エスニック・ビジネス)として、非常に興味深い分野であるが、欧米の先行研究において中古品ビジネスはあまり注目されてこなかった。逆に日本のエスニック・ビジネスにおいては中古品のリユースやリサイクルが重要な位置を占めている。この現象は日本特有のものなのか。本稿では、中古車貿易業と中古部品貿易業を事例として取り上げ、どのようなアクターが中古品のリユースやリサイクルという産業に携わっているのかを検討する。