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国際産業連関分析論(中間報告)

調査研究報告書

2012年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
玉村千治・桑森 啓 編『国際産業連関分析論 ——理論と応用—— 』研究双書No.609、2014年3月発行
です。
第1章
本章の目的は、国際産業連関表の理論的基礎を検討することである。この目的のため、まず、国際産業連関表の原型となっている地域間産業連関表の理論モデルについて紹介し、その特徴を検討した。次いで、アジア経済研究所で作成している国際産業連関表の構造について理論的に検討するとともに、地域間産業連関モデルとの関係を明らかにすることを試みた。
検討の結果、国際産業連関モデルは、需要者側が需要構造を決定するチェネリー=モーゼス型の地域産業連関モデルをベースとしつつも、輸入表の利用や特別調査の実施により、一部アイサード型としての特徴も併せ持つものであることを示した。一方で、地域間産業連関モデルの交易係数を、国内に比べて変動が大きく、また国ごとの異質性も大きい国際間取引に適用することには問題があることも指摘した。

第2章
アジア国際産業連関表作成の歴史 pdf (876KB) / 玉村 千治・桑森 啓
アジア各国の産業連関表創生期の背景には共通するものが2点ある。一つは各国が開発途上にあった時代であり、効果的な産業政策の策定など政策ツールとしての必要性があったという点、もう一つは国連からの68SNAの勧告があってそれに則った統計整備をしようというタイミングであったことである。また、産業連関表の作成が各種統計の精度向上にも繋がることが理解されてきた時期でもあった。
こうしたアジア各国の産業連関表作成の取り組みの歴史とアジ研のアジア表作成の歴史は非常に関連していた。この点を踏まえながら、アジアと日本を結ぶいわゆる国際産業連関表作成の歴史的背景のあらましを限られた文献等をもとに振り返り、定着したアジア国際産業連関表の作成方法を紹介しながら、東南アジアの産業連関表上の特性を垣間見た。

第3章
本章では、アジア国際産業連関表(1985-1990-1995-2000年)の家計所得と家計消費支出を内生化した家計内生化表を作成した。この内生化には補足情報として、各国の国民経済計算の中の家計所得支出勘定が重要な役割を果たしている。
基本表と家計内生化表とを用いて、次の分析を行っている:(1) 基本表から得られる逆行列と家計内生化表から得られる拡大逆行列の比較、(2) 基本表と家計内生化表の生産誘発のメカニズムの比較、(3) 最終需要による家計所得誘発の時系列分析、(4) 所得連関乗数行列の時系列分析。

第4章
産業連関表(一国表)を用いた価格分析モデルには、数量モデルと金額モデルがある。産業連関分析の創始者レオンティエフ(W. W. Leontief)は数量モデルから価格分析を構築し、それを金額モデルへと展開した。この2つのモデルは産業構造(投入係数行列)と生産物価格を介して関連を持ち、後者の方がより強い仮定がおかれているものの、労働コスト等の変化による生産物価格への影響はどちらのモデルでも同等に計測できる。したがって、金額ベースで作成される国際産業連関表にも金額モデルによる価格分析が一国表と同様の考え方で適用可能である。こうした事実を整理し、国際表への応用例として、2000年アジア国際産業連関表を用いて、特定(複数)国の関税・輸入商品税の除去がどの程度生産コスト低減に波及するかを、中国、日本及びアセアンの組み合わせ(FTA)で検討した。その結果、これまで他の分析においても言われてきた日・中・アセアンFTAが最も効果があるということが価格モデルからも実証された。また、価格モデルの他の応用として、特定財の価格変化による他財価格への影響の計測方法も検討した。