skip to contents.

アジアにおける海上輸送と主要港湾の現状

調査研究報告書

池上 寛 編
2012年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
池上 寛 編『アジアにおける海上輸送と中韓台の港湾』アジ研選書No.35、2013年11月26日発行
です。
目次 pdf (338KB)
第1章
世界の国内総生産(名目GDP)は、2008年のリーマン・ショックの影響により減少し、2009年は58兆690億米ドルであった。この世界的な不況の影響を受けて2009年の世界のコンテナ荷動き量はコンテナ輸送がはじまって以来、はじめてのマイナス成長となった。
しかし、2010年にはアジアを中心にコンテナ荷動きが回復し、2008年の荷動き量を上回る1億5210万TEUまで増加した。今や世界のコンテナ荷動きはアジアを中心としており、アジア発着及び域内の荷動き量が全体の65%を占めている。
そこでここでは、世界の海上輸送量について概観するとともに、コンテナ輸送を対象にコンテナ荷動き量のほか、コンテナ船の就航隻数や船型、さらには主要港湾への寄港回数について分析した結果を報告する。とくに、アジア域内の海上輸送の特徴として、就航するコンテナ船の船型及び域内・域外輸送における主要港湾の役割の相違を明らかにする。

第2章
シー・アンド・エア輸送と港 pdf (658KB) / 岡田 夕佳
シー・アンド・エア輸送は、1960年代にアメリカ内陸部および東岸地域向けにサービスが行われたのが最初である。その後、日本発米西岸経由欧米向けサービスが主流となっていく。現在では、発地が日本から中国へと変化し、中国発欧米向けのシー・アンド・エア輸送が中心となっている。経由地はドバイおよび韓国の仁川が多い。
そのため、本章では、中国発仁川経由欧米向けのシー・アンド・エア輸送の現状について調べるとともに、シー・アンド・エア輸送が港に与える影響について考察する。シー・アンド・エアの輸送量は一部航空輸送を利用するため、港湾経営に大きな影響を与えるほどの量はない。その一方で、現代のシー・アンド・エア輸送は航空輸送と遜色ない輸送の質、およびリードタイムが要求されており、港湾のターミナルとしての総合的な質を高めることを促す。それゆえ、シー・アンド・エア輸送を行うことが港の物流サービスの質を高めることにつながり、仁川港の大きなセールスポイントとなっている。

第3章
中国は21世紀に入って「全国沿海港湾発展戦略」を提起した後、2006年には具体的に「全国沿海港湾配置計画」を制定した。沿海部にある150あまりの全港湾を5つの港湾群に分け、各地域の発展を図っていこうとするもので、そのうちの1つが環渤海地区港湾群である。
当港湾群のなかで中核となる3港、すなわち天津、青島、大連各港の発展経緯と競合状況について考察することが、本章の主目的である。そのため、まずこれら3大港の歴史的発展過程を整理し、貨物総量及び埠頭バースの現状について概観する。つぎに当該3港のコンテナ取扱実績を基に比較分析し、その増強をもたらした各港の港湾開発、発展戦略に関して考察する。その上で最後に、(1) 投資主体の多元化と外資参入、(2) 基幹航路における寄港ループ数、(3) 「国際航運中心」の建設という3つの要因別に、当該3港に関わる競合比較を試み、今後の課題などを明らかにする。

第4章
中国長江デルタ諸港の現況 pdf (564KB) / 大西 康雄
中国全体の港湾整備計画『全国沿海港口配置計画』(2006年8月)において、華東地域主要港は「長江デルタ港湾群」に区分された。本章では、第1節で、同計画における華東各港の位置付を確認し、いくつかの港湾を選択して論じる。上海港(洋山港、外高橋港)については、上海市の発展戦略(「4つのセンター」戦略)との関連と最大のコンテナ港としての現況・課題を論じる。寧波・舟山港については、「組み合わせ型」で再編され、有力な天然資源輸入港である両港の荷動きの特徴を論じる。蘇州港(張家港港、常熟港、太倉港)も「組み合わせ型」再編の好例であるが、長江沿いの立地でありながら沿海港湾と同様の機能を果たしている実態を論じる。また、早くから海運と鉄道輸送のリンケージを目指して発展してきた連雲港港の近況を紹介する。第2節では、今後の港湾再編を念頭において、各港湾の関係に注目し、その競合と連携について論じる。第3節では、やや視点を変えて、華東地区で活動する代表的地場系海運企業の近況と課題、さらには外資系企業の近況と課題、外資系ターミナル・オペレーターの活動について論じる。なお、行論においては、港湾における他の輸送モード(鉄道・道路)との連携問題についても言及したい。

第5章
香港港のハブ港湾の地位を左右する要因は多様であるが、本稿では香港系グローバルターミナルオペレーター(以下、香港系GTOと略)と呼ばれる港湾企業資本が持つ特有の役割に注目する。香港系GTOは香港だけでなく、珠江デルタを含む中国本土、世界各地港湾にも進出し、巨大な勢力を持つ港湾企業資本である。その戦略的動向は香港港の発展にも大きな影響を与えると考えられる。そのため、本稿の前半は従来の港湾間競争という空間的視点から香港港の現状を把握し、先行研究を踏まえて香港港の問題点を指摘する。つぎに香港系GTO、すなわち、HPH社、COSCO Pacific社、CMHI社、MTL社の近年の戦略的動向を考察し、こうした動きの特徴および香港港の発展に与える影響を検討し、港湾企業資本の動きの視点から香港港のハブ港湾地位維持の可能性について分析する。最後に、香港港の将来について展望する。

第6章
釜山港の現状と展望 pdf (633KB) / 李 貞和
釜山港は、1970年代にシーランドが最初にコンテナ船を釜山港に入港させて以来、輸出入海上貨物の97%以上を扱っている。海上コンテナ貨物取扱量は1416万TEUで世界第5位を占め、東アジア地域のハブ港としての機能を果たしている。
世界貿易構造の変化と東アジアの経済成長はアジア域内の海上貨物輸送量を増大させた。アジア諸国の港湾は、増加している海上コンテナ貨物を獲得するために港湾施設整備事業計画や港湾管理運営政策の見直しを積極的に推進している。
韓国政府では1990年から釜山港を東北アジアの物流中心拠点港とすることを目指し、光陽港、釜山新港の開発や仁川港を中心とする輸送化貨物を保税状態のまま輸送するRFT輸送システムの実施をした。また、港湾施設整備政策、民間企業手法による港湾管理運営制度の導入および港湾ITシステム政策、港湾背後地を利用した大規模な物流団地の開発に関する計画を推進し、港湾利用者のニーズに適格に対応するために国際競争力を強化する戦略を展開している。
本章では、釜山港の東北アジア地域のハブ港としての現状を検討し、課題や展望を提示する。

第7章
台湾は中国との政治的対立から1990年代に入るまで人的交流、経済的交流を極端に制限し、中国と接触、交渉、妥協をしないと「三不政策」を実施してきた。1990年代に入り、台湾政府は中国と対話を実施するための窓口機関を設置し、中国もこれに呼応する形で同じような機関を設置した。しかし、台湾政府は経済的交流につながる直接の通商、通航、通信をしない政策を実施し、この問題は「三通政策」いわれた。この三通政策は中国との経済的交流を制限したものではなく、中国との海上輸送も当然ながら影響を受けることとなった。1990年代に入っても、台湾政府は中国との海上輸送は極めて限定的な形で実施してきた。しかし、2008年5月に馬英九氏が総統すると、12月には中国との海上輸送を解禁し、三通問題は解決を見た。
本章では、台湾政府が実施した中国との海上輸送政策を李登輝、陳水扁、馬英九の総統ごとに概観する。それを踏まえたうえで、台湾側の公表データに基づき中国との海上輸送の変化を考察する。最後に、海上輸送における台湾と中国の問題についてまとめる。