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東南アジア移行経済の経済政策と経済構造:ミャンマーとベトナムの比較研究

調査研究報告書

2011年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
久保 公二 編『ミャンマーとベトナムの移行戦略と経済政策』研究双書No.606、2013年3月発行
です。
序章
制度発展の道筋:統制経済の困難と「解決」策 pdf (1.07MB) / 久保 公二・渡辺 愼一・藤田 麻衣
1. はじめに
2. 初期条件の類似点と相違点
3. 改革の方向性の評価
4. 制度進化の経路

経済成長を左右すると考えられる「制度」に関して、ミャンマーとベトナムについてその発展の道筋を対比する。1980 年代に統制経済が行き詰まってヤミ市場が発達する中で経済改革に着手した点は両国で共通している。しかし、統制経済の基本的な枠組みの改革に着手するか否かで、両国は大きく異なった。ミャンマーではこの改革に手がつけられなかったが、ベトナムでは試行錯誤しながらも市場制度への転換が図られた。そして、この違いがその後の両国の制度発展の道筋と経済パフォーマンスを大きく隔てたという見方を、本章では提示する。

第1章
通貨・金融システムと制度 pdf (334KB) / 久保 公二・渡辺 愼一
1. はじめに
2. ミャンマーとベトナムの銀行システムの変遷
3. インセンティブ問題とプルーデンス政策
4. ミャンマーとベトナムの金融行政
5. おわりに

通貨・金融システムの安定、そしてその要にある銀行部門の安定は経済成長には欠かせない。しかし、銀行部門はソフトな予算制約の問題により不安定化する性向を持ち、政府に多大な負担をもたらしかねない。本章では、ミャンマーとベトナムのこの問題への対処を比較した。
ミャンマーでは銀行部門の成長を封じ込める規制で、金融機能の効率性を犠牲にして安定性を維持する道が選ばれ、「安定性の罠」に陥っている。ベトナムでは、プルーデンス規制や中央銀行の独立性といった制度により金融システムの安定性を維持しつつ、金融システムの効率性の向上を図り、制度構築で一進一退が続いている。

第2章
コメ政策:価格政策と公共投資 pdf (582KB) / 久保 公二・塚田 和也
1. はじめに
2. 生産の推移
3. 政策分析のフレームワーク
4. ミャンマーとベトナムの政策
5. 公共投資の決定要因
6. おわりに

本章では、1990年代初頭から20年近くにわたって対照的なパフォーマンスを見せているミャンマーとベトナムのコメ経済について、価格規制だけでなく、技術変化のための公共投資も含むコメ政策と収量の変化との関係を検討した。コメ価格や生産者の交易条件には顕著な悪化や改善のトレンドは見られないことから、両国のコメ収量の分岐は、もっぱら技術変化の違いによると考えるのが本章の暫定的な主張である。
次に、ミャンマーとベトナムの技術変化の違いが生じている背景に関連して、公共投資の量および質と経済制度との関係を考察した。特に、中央=地方政府間での予算配分制度の違いが両国の間で際立っており、この違いが公共投資の経済効果、ひいては両国のコメの生産性に大きな影響を与えているという仮説を提示した。

第3章
輸出構造の変化と経済制度 / 久保 公二・藤田 麻衣
1. はじめに
2. ミャンマーとベトナムの輸出パフォーマンス
3. 経済制度と輸出品目の変化についての仮説
4. 経済制度の進化
5. おわりに

第4章
縫製産業におけるパフォーマンス格差とその要因 pdf (413KB) / 後藤 健太・工藤 年博
1. はじめに
2. ベトナム・ミャンマーの縫製産業の概要
3. 主要輸出先の変遷に伴うパフォーマンス格差
4. 産業政策、経済制度によるパフォーマンス格差
5. 金融危機とその後のベトナム・ミャンマーの縫製産業
5. おわりに

ベトナム及びミャンマーはともに1980年代後半に大きな体制変化を図り、経済発展を模索してきた国々である。両国にとり縫製産業は最大の輸出工業部門であり、また雇用面においても貢献が著しい産業であるが、21世紀に入り両国の縫製部門のパフォーマンスが大きく乖離した。本章ではこうしたパフォーマンスの違いを、(1)グローバルな生産と流通ネットワークへの統合過程と国際的な環境変化の影響(外的要因)、(2)産業政策と経済制度の違い(内的要因)に注目しながら検討した。また、2009年以降、ベトナム及びミャンマーの縫製産業に起きている変化を紹介し、今後の両国の縫製産業のパフォーマンスを考えるための材料を提供することを目指した。