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中東企業の国際事業展開

調査研究報告書

2011年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
土屋 一樹 編『中東アラブ企業の海外進出』アジア経済研究所叢書9、2013年2月27日発行
です。
第1章
はじめに
第1節 産業発展前の状況
第2節 初期の工業
第3節 石油産業の発展
第4節 政府の工業化政策
第5節 SABIC社の発展と国際展開
第6節 Savola社の発展と国際展開
第7節 工業化のなかでのSABIC,Savolaの位置
おわりに

本稿では、サウジアラビアを代表する石油化学メーカーであるSABIC(サウジ基礎産業会社)と、食品加工を中心としたSavola社を取り上げて、サウジアラビアにおける製造業の発展と国際展開について検討した。
サウジアラビアの工業には2つの柱がある。1つは石油精製業と石油化学産業などの石油関連産業である。輸出産業で、外貨を稼ぎ、国家の財政歳入の大部分をもたらす最重要産業である。国家の手厚い育成策の下、国有企業が中心になり発展した。本稿で取り扱ったSABICは、事実上の国有企業で、その傘下には外資との合弁による多数の子会社を抱えている。1980年代初めに事業を開始し、急速に発展し、世界で5指に入る石油化学メーカーへと成長した。2000年代に入り、ヨーロッパ、アメリカ、そして中国にも進出し、海外での事業を急速に拡大している。
もう一つの柱は、民間企業が担っている非石油分野の製造業である。サウジアラビアでは失業問題が深刻になりつつあり、雇用機会創出の目的もあり、非石油分野の製造業の育成を進めようとしている。その分野を代表する企業がSavola社である。Savolaは、食用油のメーカーとして出発し、製糖業にも事業を拡大し、スーパーマーケットの経営などにも事業を拡大している、コングロマリットである。食用油のメーカーとしては、エジプト、イランなど中東や中央アジアの各地に子会社を持ち、世界有数の規模の会社である。
また、本稿では、製造業全体的の発展と製造業をとりまく状況を示すことにもページを割き、歴史的な視点も加え、大まかな見取り図を描くことに努めた。

第2章
はじめに
第1節 中東アラブ地域における金融システムとアラブ系多国籍銀行
第2節 アラブ・コンソーシアム系多国籍銀行の展開:ガルフ・インターナショナル・バンク
第3節 アラブ・コンソーシアム系多国籍銀行の展開:アラブ・バンキング・コーポレーション
第4節 アラブ・コンソーシアム系多国籍銀行の役割とその変容
おわりに

中東アラブ地域にある複数の国の政府・企業によって共同で設立された銀行として定義されるアラブ・コンソーシアム系多国籍銀行は、1970年代の中頃から本格的に登場した。とりわけ、本研究で取り上げるガルフ・インターナショナル・バンク(1975年設立)と、アラブ・バンキング・コーポレーション(1980年設立)は、その規模やインパクトからして代表的な存在である。これらの銀行は、設立当初から、積極的に国際展開を行い、国際金融市場に流れ出たオイルマネーを中東アラブ地域へ還流させるのに一定の役割を果たした。他方で、同地域の金融システムにおいては、1980年代から現在にいたるまで長年にわたって相対的に大きなプレゼンスを保ち続けている。しかし、2007年に発生した世界金融危機によって、これらの銀行の地位は大きく低下しようとしている。この事態が、果たして、アラブ・コンソーシアム系多国籍銀行の終焉を意味するのかどうかについては、今後の両行の動向を注意深く見守っていく必要がある。

第3章
DP World社の国際展開 pdf (376KB) / 細井 長
はじめに
第1節 世界の港湾オペレーターを取り巻く環境変化
第2節 DP Worldの略史
おわりに:海外展開の意義と今後の研究課題

UAE・ドバイの港湾運営会社であるDP Worldは1999年から海外展開を始めた。中東企業が国外で事業を行うことは少なくないが、国際的競争力をもつ中東企業は希有な存在である。これまで港湾は公的管理がされていたが、世界的な規制緩和等の影響で港湾オペレーターの海外進出が可能になった。2005~2006年には英P&O買収をめぐり、SPA International との買収合戦や、P&Oが管理していた米国港湾の管理問題をめぐり、米国との政治問題も引き起こしている。DP Worldは世界四強の一角を占めるまでの規模に拡大しているが、他の港湾オペレーターとの違いとして、ドバイで成功したフリー・ゾーンを併設した港湾開発を推進している点にある。ドバイにおける経済開発成功ノウハウの輸出がその特徴となる。

第4章
はじめに
第1節 通信関連企業の国際事業展開の要因
第2節 湾岸諸国の通信関連産業
第3節 湾岸諸国の携帯電話企業間での比較
おわりに

本稿の目的は、湾岸諸国の持続可能な経済発展を支えるための一つの重要な産業部門として、通信産業特に携帯電話事業を調査対象とし、その経営状況と特質、そして域内への進出状況を整理することである。
湾岸諸国の通信関連企業にとって、携帯電話事業は収益性の観点からもっとも魅力的な市場であり、新規参入企業の経営戦略次第では利益を確保することができる。しかし、過度の価格競争は企業の収益構造を圧迫し、利用者に対する安定的な通信サービスの提供が困難になるケースも起こりうる。
経営指標と価格データによる湾岸諸国の携帯電話企業の比較から、各携帯電話企業の成長とともに収益性の縮小傾向が観察されており、熾烈な価格競争が行われていることが伺える。また同時に、域内へ進出する新規参入企業にとっては、依然として進出先の規制が自由な競争の妨げになっている。その結果、低所得者向け低価格サービスや、多様なオプション・サービスを付与するなどにより商品の差別化を行い、携帯電話市場内での棲み分けが生じている。

第5章
はじめに
第1節 エジプトと海外直接投資
第2節 エジプトの上場企業
第3節 エジプト企業の海外進出
おわりに

本稿では、1990年代以降のエジプト民間部門の発展状況について、直接投資の動向と主要現地民間企業の特徴という2つの視点から検討する。エジプトでは1990年代に資本市場の整備、国有企業の民営化、投資制度の改定などによって民間部門への投資環境が改善された。さらに、2000年代の国際原油価格の高騰などに伴う地域経済環境の好転によって、対内直接投資が急増した。対外直接投資も同様で、その規模は異なるものの、2000年代後半以降に急拡大した。
1990年代初めに株式市場が整備された結果、エジプトの上場企業は一時1,000社を超えた。その後上場基準の厳格化によって上場企業数は約300社となったが、株価指数は2000年代半ば以降に急上昇するなど、エジプト企業への投資が活発化している。エジプト最大の民間企業は、1997年設立の携帯電話通信事業会社オラスコム・テレコムである。同社は、開発途上国の典型的な多国籍企業と同様、先進国の多国籍企業の経験と比べ早期に海外進出を開始し、2009年までに10か国で携帯電話事業を展開している。その一方で、オラスコム・テレコムは、現在新たな発展の方向性を模索している。