skip to contents.

東南アジア政治制度の比較分析

調査研究報告書

2011年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
中村 正志 編『東南アジアの比較政治学』アジ研選書No.30、2012年9月10日発行
です。
序章
分析と総合の地域研究にむけて pdf (31.1KB) / 中村 正志
はじめに
第1節 ホリスティックな地域研究
第2節 ホリスティックな研究の問題点
第3節 事例研究を通じた理論の統合へ
おわりに

本稿は、研究会の中間報告として、われわれが何をしようとしているのか、というメタ認知を、おもに方法論の側面から深めることを目的としている。ここでは、これまでの東南アジア政治研究で一般的だった一国研究の典型的なアプローチをホリスティックなアプローチと位置づける。このアプローチでは、過度に複雑な因果メカニズムが想定されがちであり、その結果、かえって明示的な因果的推論が回避される傾向があることと、因果メカニズムの仮説が明示される場合でも検証がむずかしいことを指摘する。これに対し、アナリティックなアプローチでは全体像の把握が困難になるが、部分的な統合理論の検証は可能であり、そこに少数事例の比較研究の積極的な意義があることを指摘する。

第1章
はじめに
第1節 政治体制とはなにか
第2節 政治体制の類型
第3節 政治体制の変動と安定
おわりに

東南アジア5カ国(インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール)の政治体制の様態・動態は、政治学の理論でどう記述、説明できるのか。また逆に、これらの国ぐにの経験は、政治学の理論研究にどのような示唆を与えているのか。本稿では、このふたつのトピックにかかわる既存研究の知見の整理を試みた。東南アジアを事例として扱う最新の政治体制研究では、理論研究への貢献が強く意識されている。そのため、これらの文献を十全に理解するには、比較政治学における政治体制論のこれまでの展開に関する知識を必要とする。そこで本稿では、これらの文献の理解に資するような理論研究の整理に重点をおいた。政治体制の崩壊/持続に関する理論研究には、構造的要因に重点をおくものと政治主体の行動に焦点をあてたものがあったが、近年はこのふたつを統合した理論構築が試みられている。最新の東南アジア政治体制研究もまた、この流れに沿って行われていることが理解されるであろう。
本稿は、「東南アジア政治制度の比較分析」研究会の中間報告の一部である。そのため、ここでの作業が暫定的なものであることをあらかじめご了承いただきたい。

第2章
東南アジアの選挙と政党 pdf (137KB) / 川中 豪
はじめに
第1節 東南アジアの選挙制度
第2節 東南アジアの政党
むすび

東南アジアの5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)の選挙制度は、多様ではありながらも、多数決型の傾向を示している点が特徴的である。シンガポール、マレーシアでは、それがヘゲモニー政党の生まれる基礎となっている。ただし、インドネシア、フィリピン、タイといった民主化を果たした国々は、その傾向が見られる原因やその効果については必ずしも共通していない。一方、政党システムについては、比較的政党数の多いインドネシア、中位のフィリピン、少数政党制のタイ、マレーシア、そして、一党が圧倒的優位であるシンガポールと、ばらつきが見られる。これは民主主義体制と権威主義体制の違いとも関連している。また、政党の凝集性については、権威主義的傾向の強いマレーシア、シンガポールにおいて強いものの、フィリピン、タイでは比較的弱く、インドネシアでも従来の凝集性が低下しているという議論が出ている。なお、本稿は,「東南アジア政治制度の比較」研究会の中間報告書である。同研究会では,最終成果として一般書の出版を予定している。

第3章
はじめに
第1節 東南アジア諸国の執政制度
第2節 東南アジア諸国の司法制度
第3節 東南アジア諸国の執政制度・司法制度に関する研究動向
むすび

本章は、東南アジアの5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)における執政制度および司法制度の実態を概観するとともに、東南アジア諸国におけるこれら2つの制度を分析対象としている既存研究をレビューすることを目的とする。比較政治学における制度論の知見を本格的に援用した東南アジア諸国の分析はまだおこなわれていない。今後は、執政制度と政策決定過程の関係や、司法の独立性と違憲審査権が政治過程に与える影響といった点を対象とした比較分析をおこなっていくことが必要であろう。

第4章
はじめに —本章の位置づけ—
第1節 社会運動の定義と対象の限定
第2節 社会運動の既存理論と制度論的接近
第3節 東南アジアの社会運動比較分析に向けて
おわりに

社会運動は制度外の社会変革行為を扱う研究分野である。本稿では、社会運動自体の制度というよりも、政治制度を含む環境条件に注目し、それが社会運動の現れ方をどう規定しているのか、という問題関心から考察をおこなった。まず、国によって社会運動が量的に、あるいは分野、手法によってどう違って現れるかという視点から、NGOを事例に検討してみた。次に、政権打倒、政治体制変革を掲げる社会運動を取り上げ、その担い手や戦術に違いがあることをみた。あくまで準備的検討の段階ではあるが、東南アジア各国の経済的スペース、政治的スペース、政治制度、担い手の存在状況が、社会運動の現れ方に影響を与えているように思われる。

第5章
地域機構としてのASEANの役割 pdf (60.3KB) / 鈴木 早苗
はじめに
第1節 途上国間地域機構の比較軸
第2節 加盟国の政治体制への関与と紛争解決
第3節 経済統合の進展と国内経済制度の統一
第4節 ASEANの特徴を規定する要因
むすび

本稿の目的は、地域機構としてのASEANの特徴を加盟国に与える影響という観点から考察することにある。本稿では、途上国間の地域機構としてのASEANの特徴を2つの軸で説明する。第1の軸は、主体あるいはアリーナとしての地域機構である。第2の軸は、地域機構のルールや合意が加盟国の内政に関与するものであるかどうかである。ASEANは、設立以来、アリーナとして機能し続けている。一方、設立から長く保たれてきた内政不関与的側面は、1990年代から変化しつつある。こうしたASEANの特徴は、加盟国政府が国内秩序に対する自律性を維持してきたことと、さまざまな政治体制をもつ加盟国が存在することとに起因すると考えられる。なお、本稿は、「東南アジア政治制度の比較」研究会の中間報告書の一部である。同研究会では、最終成果として一般書の出版を予定している。