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発展途上国の産業、企業、市場:新しい産業発展論の構築をめざして

調査研究報告書

渡邉 真理子 編
2011年3月発行
序章
1. はじめに
2. 本研究会の概要
3. 研究会の概要と各章の構成

本報告書の下敷きとなった、発展途上国の企業、産業、市場研究会の発足趣旨を整理し、1年間の活動の内容とその成果の一部を紹介する。

第1章
1. はじめに
2. 人口・資源大国の復活
3. 何が成長主導産業か
4. 考察

インドネシアは、民主主義が確立した2004年以降、政治体制の安定を得て成長軌道に復帰した。世界第4位の人口と豊かな資源に支えられたインドネシアの成長力が見直されている。だが、成長を主導する産業が雇用と付加価値を創出できてこそ、持てる人口と資源はプラスに活かされる。現在のインドネシアにおける成長主導産業は何なのか。本稿は、スハルト体制期と現行の民主主義体制期を多角的に比較し、工業が高成長を主導したスハルト体制期とは違って、現在は成長のエンジンが農業、鉱業、製造業、サービス業に分散しているとの見方を示す。これらの産業それぞれにおいて雇用と付加価値の創出に向けた方策が必要になる。

第2章
1. Introduction
2. Empirical Framework
3. Data Issues
4. Empirical Results
5. Concluding Remarks

本論文では、日系多国籍企業による、東アジアにおける立地選択を分析する。分析は県レベルで行われ、入れ子型ロジットモデルが用いられる。分析の結果、以下のことが明らかとなった。まず、立地国を決める際に、WTOに加盟しているか否かが決定的に重要な要素となる。次に、ASEAN先行国(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)は、立地先として中国と代替関係にある。これらの結果、中国がWTOに加盟したのち、日本の多国籍企業の多くは、ASEAN先行国ではなく、中国に立地するようになった。最後に、CLMV諸国は立地先として中国と代替関係にない。したがって、中国がWTO加盟した後も、ベトナムを中心に、依然として日本からの投資を集めている。

第3章
1. はじめに
2. 「二番手企業」からイノベーションの主体へ?:台湾IT機器産業の新局面
3. エレクトロニクス産業における企業間境界
4. 企業戦略、知識発展のダイナミクスと企業間境界
むすび

本稿では、台湾のエレクトロニクス企業によるイノベーションの活発化を分析するための予備的考察の一環として、同産業における企業間境界の決定のダイナミクスに関する考察を行う。1では本稿の課題を示す。2では、イノベーション概念を再考したうえで、台湾のエレクトロニクス企業によるイノベーションの事例を検討する。3および4では、エレクトロニクス産業における企業間境界の決定を、垂直統合と垂直分業それぞれのメリットの検討、先進国企業による戦略が企業間境界の決定に及ぼす影響、企業の知識発展のダイナミクスに注目して論じる。また、台湾の受託生産企業が担う事業領域の拡大とともに、これらの企業がシステム全体に関する知識である「アーキテクチャ知識」を持つようになり、台湾発のブランド企業がこれを利用しながら製品と市場の結びつきの変革の主体として興隆しつつあるのではないかという仮説的視点を提示する。

第4章
1. Introduction
2. Framework
3. Data
4. Preliminary findings
5. Results
6. Conclusion

インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの製造業企業に対して行った調査に基づき、産業高度化の源泉を内部資源と外部資源の補完性に求めるような実証研究を行った。内部資源と外部資源、そしてそれらの補完性が企業の生産性に与える影響を実証的に検討する研究はこれまでなされてきたものの、具体的な経路を特定し、かつ企業内部で採用されている経営管理手法の情報を用いて生産性上昇効果を見るような実証研究は少ない。本稿では、大きな生産性上昇効果を生み、産業高度化の一指標と考えられる新製品導入と製品ラインアップの絞り込み、入れ替えに注目し、内部・外部資源の補完性が持つ影響を推定する。その際、外部からのエンジニア受入または外部へのエンジニア派遣を外部からの技術・知識移転とみなし、組織内部における部門横断的チームの導入が、こうした外部からの技術移転効果を組織内部で増幅させる役割を果たすかどうかを検証する。他社の「失敗経験」を組織内部で共有する仕組みが新製品導入、絞り込み、入れ替えを促すことを明らかにした。

第5章
1. Introduction
2. What the Existing Literature Says about Capability Formation Trajectories over Time
3. The Event-Based Approach
4. An Illustrative Example: An Analysis of Supplier Learning in the Vietnamese Motorcycle Industry
5. Conclusions

近年、企業にとって、「能力」が重要な資源のひとつであることが広く認識されるようになったにもかかわらず、現実に企業がどのようなプロセスを通じて能力を蓄積していくのかのか、実証的に分析した研究は数少ない。その背景として、これまで、中長期にわたる企業レベルの能力形成のプロセスを分析するための方法が工夫されてこなかったという点があげられる。本稿は、企業レベルの能力形成を分析するアプローチとして、イベント分析を用いた縦断的事例研究という方法を紹介する。筆者のベトナム二輪車産業におけるフィールド調査に基づく研究に基づき、このアプローチを用いることによって、この分野の多くの既存研究にみられるような特定の一時点を対象とした分析と比べ、格段に複雑かつ動態的な能力形成のプロセスを描き出すことが可能になることを論じる。

第6章
1. はじめに
2. 産業の発展はなぜ必要なのか
3. 「需要構造推計による企業行動分析」の応用例
4. 需要関数推定方法のメモ
5. おわりに

産業の発展を考える時、生産者や企業が主役であるのはもちろんであるが、彼らの行動は、需要者・消費者の行動に左右される。産業が発展できるのは、需要者と生産者の双方の利益がプラスになっているとき、初めて自律的に展開し始めるからである。こうした視点から、需要関数を推定することによって、ある市場において、需要者の嗜好、競争の環境、そして企業の競争戦略について、検定することが可能になることを、実際の分析手法と分析例にふれながら、紹介していく。