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ラテンアメリカにおける「排除された者たち」の政治参加

調査研究報告書

2011年3月発行
序章
はじめに
I. 「排除された者たち」とは?
II. さまざまな「排除」の契機
III. 政治的包摂の「場」と方策
IV. もう一つの「制度/直接的な政治参加」の試み

本稿は、当研究会で議論されるべきテーマや基本的概念について、先行研究に基づきつつ、論点を整理したものである。まず、社会学における「社会的排除」の議論を参考に、誰が「排除された者たち」と見なされうるのかについて検討する。次に、こうした社会的排除の議論を手掛かりとしつつ、それとは少し位相の異なる政治的排除の契機を、クライエンテリズム、ポピュリズム、コーポラティズムなどと絡めて論究する。その後、公共性論や政治参加論での知見を踏まえ、こうした人々を政治的に包摂する「場」と「方策」について確認し、最後にこれらの方策の中でも近年特に注目を集めている参加型市政(Participatory Municipal Governance)モデルを概観する。

第1章
はじめに:クライエンテリズムと参加型民主主義
I. 現代メキシコ政治とPRD
II. PRDと都市民衆運動
結語

メキシコの事例を扱った本報告では、都市民衆運動組織を媒介とする左翼政党PRDと都市貧困層の間のクライエンテリズムに焦点をあてた。こうした実践は、関係諸主体に利益をもたらすほか、「下からのリーダー」育成や一部自治体での参加型予算の試みなど参加型民主主義と重なる要素もある。

第2章
はじめに
I. 1998年憲法下における分権化と政治参加
II. コレア「急進左派」政権の成立
III. 急進左派政権下における民主化の退行?
IV. 急進左派政権下における政治参加の鈍化?
今後の展望

本稿は、ラファエル・コレア(Rafael Correa)「急進左派」政権下における民主政治と政治参加の実態に関する試論である。第Ⅰ節では1998年憲法の下での分権化と政治参加を概観し、第Ⅱ節ではコレア急進左派政権の成立とそこで実践される政治の在り方についてのいくつかの見解を紹介する。第Ⅲ節および第Ⅳ節では、ラテンアメリカ世論調査プロジェクト(LAPOP)の2006-2010データを利用して、コレア政権下における民主政治への評価、市民の政治的価値意識の変化、および、市民による政治参加の実際について、基本統計量と初歩的な統計手法による分析を試みる。

第3章
はじめに
I. 多民族国ボリビアにおける先住民自治の制度化
II. 事例研究
まとめと今後の課題

ボリビア左派政権の下、「排除された者たち」の政治参加が、いかにして実現されているのか。これが本稿の問題関心である。
1990年代半ばに、新自由主義体制において導入された住民参加型の基礎自治体制度は、慣習に基づく伝統的自治制度を保持してきた先住民を、国家の政治システムへ包摂することに失敗してきた。多民族国ボリビアを標榜する左派政権においては、これまで排除されてきた先住民をいかにして包摂できるかが大きな課題となっている。
この課題に対し、制憲議会を経て成立したボリビア新憲法では、「先住民自治」という枠組みが提示された。この枠組みを利用して、2009年12月には、先住民自治への移行の是非を問う住民投票が、12の自治体にて実施されている。
本稿ではこれらの12の自治体から、唯一先住民自治への移行が否定された自治体と、賛成多数でスムーズに移行が決定した自治体を、同じアイマラ系カランガ族で示された二つの事例を取り上げ、彼らの選択を左右した要因を明らかにする。結論としては、基礎自治体の中で実質的に彼らの伝統慣習が尊重される、すなわち「共同体」としての包摂が実現されていたかどうかということが、重要であった。

第4章
はじめに
I. ブラジルの参加型行政
II. 審議会
おわりに—サンパウロ市の住宅審議会を事例とした今後の課題

近年のブラジルでは1988年憲法をもとに、社会的に排除されている人々の行政への参加の促進と制度化が試みられている。本稿は、このような参加型行政の一つであり、主に地方自治体レベルで定着しつつある「市審議会」について、その制度概要や現状を把握することを目的とする。また、サンパウロ市の住宅審議会を事例として取り上げ、政治的影響との関連から市審議会へ参加する市民社会の代表性の問題を捉え、今後の課題を提示する。