skip to contents.

新興諸国における社会政策と統治性

調査研究報告書

村上 薫 編
2011年3月発行
表紙/目次 pdf (41.9KB)
第1章
I はじめに
II 議論の要約
III 政治社会と教育

本稿では、パルタ・チャタジーの著作(Partha Chatterjee, The Politics of the Governed: Reflections on Popular Politics in Most of the World, 2004)を読みながら、インドの民衆政治を考察した。同著においてチャタジーは、独立後インドで形成された民主主義諸制度(憲法、政党や選挙活動等)が、今日の民衆政治においてはたしている役割を強調し、こうした制度を前提として展開される統治する側と統治される側のポリティクスを「政治社会(political society)として概念化した。現代インドの教育状況を考えるうでのこの概念の有効性について考えることを、今後の課題とした。

第2章
I はじめに
II ネオリベラル化する都市空間と統治性:包摂と排除の諸相
III 今後の課題

本稿は、ネオリベラルな都市統治に関する先行研究を整理し、統治性と主体という概念を用いた分析枠組みの明確化を試みる。ネオリベラルな都市統治は、コミュニティの市場価値と市民の就労可能性を高めつつ、それら非国家的アクターの動員によって展開される。そのような統治のイデオロギーと制度が、地域社会に文脈化される具体的諸相を捉えることが課題となる。

第3章
はじめに
I 21世紀のアルゼンチンにおける社会政策の理念と枠組み
II 貧困をめぐる政治に関する民族誌的研究
III 新自由主義的社会政策批判
おわりに

20世紀末より新自由主義が社会政策の分野においても影響力をもっているアルゼンチンにおいては、社会政策分野における新自由主義的統治性に関した分析がすでに存在している。そのなかのあるものは、人間開発やターゲティングといった社会政策が新自由主義の統治術であると指摘する。他の論者が主張する、自己を貧困者と認知し、プログラム受給にふさわしい行動を認知する自己統治も新自由主義的統治術とみなすことができる。アルゼンチンの社会政策研究から発せられた新自由主義的統治術の内容を再吟味し、さらに新自由主義的福祉プログラムが実践されている現場で統治性が具体的にどのように表現されているのかを描くことが今後の課題である。

第4章
はじめに
I 開発問題の成立と社会発展観の対立:第2次世界大戦後から1960年代まで
II ベーシック・ニーズ・アプローチの登場と教育政策における数量的技法の発展:1970年代頃
III 開発における新自由主義の浸透とA.センのケーパビリティ・アプローチ:1980年代以降
IV メキシコにおける教育、貧困削減政策:1990年代頃以降
おわりに

今日の人間開発を重要視する国際開発政策は、しばしば新自由主義者的な色彩を帯びながら、途上国にも大きな影響を与えている。本稿は、そうした国際的な社会開発政策の形成過程を、社会的背景、研究思潮、研究の政策技術的側面と絡み合わせながら、歴史的、批判的に見ていく作業の中間報告であり、研究の大枠、先行研究、資料を述べる。

第5章
I はじめに
II 統治性研究
III おわりに

トルコの社会福祉を統治の視点から検討するための準備作業として、統治性の概念を用いる先行研究を整理する。先行研究は(1)自律的な市民の形成と民主化をめぐるトルコの主流派社会科学の議論、および(2)ネオリベラリズムは国家の役割を縮小させるという一般化された議論にたいする反論を行ってきた。また統治性の分析枠組みの諸局面のうち、統治の技術を主に検討している。